logo
仲間を生かす。相手を乱す。國井啓寿[高鍋]
164センチ、69キロの國井啓寿。攻撃的にプレーする。(撮影/松本かおり)

仲間を生かす。相手を乱す。國井啓寿[高鍋]

田村一博

 花園で新年を迎えよう。
 チームのみんなと目指してきた一つ目のハードルを超えた。
 宮崎県代表の高鍋高校が2026年1月1日、開催中の全国高校大会で3回戦を戦う。相手は京都成章。第1グラウンドで、13時20分のキックオフだ。

 前回大会、高鍋は2回戦でシード校の大分東明と戦い26-26と引き分ける。抽選の結果次戦に進むことはできず、12月30日で聖地を去った。
 その悔しさを胸に、今季は「忘れ物を取りにいこう」と全国大会での2回戦突破、そして、さらにその先へ進もうと、チーム一丸となってきた。

 1回戦で盛岡工に41-7と完勝し、2回戦の松山聖陵戦も19-7。選手たちはチームにとって16年ぶりの大会2勝を実現、悔しい思いをした先輩たちに吉報を届けた。
 初戦前日には昨年の3年生12人中8人が宿舎を訪れ、激励してくれた。その思いに応えるプレーを続けている。

延岡に暮らす國井啓寿。周囲を走らせ、自分も動くスクラムハーフ。(撮影/松本かおり)


 序盤は松山聖陵のパワーあるFWに攻め込まれながらも、堅守とキレのある攻撃で勝ち切った2回戦は、一人ひとりが持ち味を出して戦う好ゲームだった。
 その中でSH國井啓寿(くにい・あきひさ)も個性的な活躍を見せた。

 7-0で迎えた前半26分過ぎだった。敵陣10メートルライン付近のスクラムから右にボールを持ち出した國井は、相手のタックルが届かないセーフティーゾ―ンを走りながら、急加速でタテへ。防御間を抜いて出た。
 独走。そしてゴール前10メートルあたりでWTB渡辺澪にラストパスを放る。リードを12点とする好プレーだった。

 後半7分には自らトライを挙げた。
 FB土橋亮太が左足から好キックを蹴り、敵陣ゴール前に迫る。相手のラインアウトのミスからマイボールスクラム。そこからトライライン近くで10フェーズを重ね、最後、背番号9が防御のスキを突いてインゴールに入った。

 國井は攻撃面だけでなく、相手ボールを巧みに奪い取ったり、体を張ってボールコントロールを失わせてモールを止めたり。要所でチームに貢献するプレーを見せた。
 昨年の大会では30人の登録メンバーには入るも、先輩SH2人の存在もあって試合出場はならず、引き分けた試合は芝の上で見ることしかできなかった。

「1年前は、先輩たちが死ぬ気のタックルをして、いいトライも取ったのに勝てず、悔しかった。自分は見ているだけで、なにやってんだって情けなくて、来年はやるぞ、と思いました」

4強1回、8強2回の伝統を誇る高鍋。15大会連続33回目の出場。いつも熱い戦いで観る者の胸を打つ。(撮影/松本かおり)


 そんな気持ちを忘れることなくこの1年努力を重ねてきて、今大会で2勝。松山聖陵戦後、「前半の入りは良くなくて自陣に攻め込まれることもありましたが、フォワードがよく止めてくれました。それがあったから、自分たちがやりたいことをやれるようになって、攻めることができた」と試合を振り返った。

「自分自身、いいプレーもあったとは思いますが、もっとフォワードを動かし、バックスとの連係も取らないといけない。後半(自分で)行き過ぎたかもしれないので、次は、もっとゲームメイクしながら試合を進めたいと思います」

 前半のトライシーンについては、「やってきたことをやっただけです。ウイングとうまく連係できました。自分が走って外を使うプレーは好きです」と説明した。
 楽しそうに、そして強気で動く。最上級生になって9番のジャージーを得て躍動している。

 得意分野を「いやらしいプレー」とする。
「きょうもありましたが、相手のボールを取ったり、ジャッカルしたり、そういうのが好きです」
 その感覚は練習中から意識し、積み上げてきたものだ。
「練習のアタック&ディフェンスの時、Aチームを怒らせるプレーをしていたんです。いやらしいプレーでボールを取ったりすると、ぴりぴりしてきて、Aチームがうまくいかなくなる。そうなると、いい勝負ができるから楽しくなる」
 レギュラーの座を掴む前、そんな時間を過ごしてきた。

國井は卒業後、関東大学対抗戦を戦いの舞台とする予定。(撮影/松本かおり)


 パスのクォリティーはアーロン・スミス(トヨタヴェルブリッツ/元ニュージーランド代表、125キャップ)を理想とし、動きについては、フランス代表のアントワンヌ・デュポンを参考にしている。発想力豊かなプレーは、世界のトップ選手のイメージが頭にあるからだ。

 延岡少年ラグビースクール、同ジュニアラグビースクールで基礎を学んだ。兄(延岡星雲→駿河台大)も妹(石見智翠館1年)も楕円球を追う環境で育った。
 実家から通学している。午前4時50分に起床し、6時過ぎの電車に乗って、約1時間揺られる。「家のご飯がおいしくて」寮には入っていない。

 2年生まで試合機会が少なかったが、新チームになってすぐの全九州新人大会で好パフォーマンスを見せた。それを評価してくれた関東大学対抗戦のチームから声がかかり、卒業後は地元を離れる。

「正月越えはできましたが、そこが目標ではなく、もっと先に行きたい」と、仲間たちと一緒に過ごす時間を可能な限り長くするつもりでいる。
 元日の芝の上でも、個性全開でいく。




ALL ARTICLES
記事一覧はこちら