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キャプテンをやり切った。河村和樹[早稲田実業/主将]
河村和樹主将は175センチ、83キロ。タグラグビーをスタートに、横浜ラグビースクールを経て早実に入った。(撮影/松本かおり)

キャプテンをやり切った。河村和樹[早稲田実業/主将]

田村一博

 2026年1月1日。花園ラグビー場では、第105回全国高校ラグビー大会の3回戦、8試合がおこなわれた。
 12月27日、56校が参加して開幕した大会も、1、2回戦を経て、花園で正月を迎えることができたのは16校だけ。多くのチームが2025年のうちに帰路に就いた。

 東京都第2地区代表の早稲田実業(以下、早実)も、そのうちの一つだ。
 12月27日、1回戦で石見智翠館に39-14と快勝した同校は、12月30日の2回戦で東福岡と対戦。24-38と敗れる。チームが掲げていた正月越えの目標には届かなかった。

 しかし、敗れたとはいえシード校相手に試合内容は立派だった。
 開始3分にトライを許すスタートは悔やまれるも、0-14とされた後、PGとトライ、Gで10-14と迫る。前半26分に挙げたCTB中山大翔のトライは、相手反則で得たPK機に速攻を仕掛けたものだった。

 10-21のスコアで始まった後半、先に得点されて差を広げられるも(10-26)、その後、互いに2つずつトライを取り合った。
 後半の2つのトライは、ともにWTB飯泉敢太が挙げたもので、この日の早実のトライスコアラーとなった2人は2年生だった。

チームは持てる力を出し切った。写真左上は2トライのWTB飯泉敢太。(撮影/松本かおり)


 試合後の河村和樹主将は、「歴史を作ろうと話していたのですが」と声を絞り出した。
「監督からも(花園で)年越ししようと言われていました。本気でここまで準備してきました。何本か通用するところはありましたが、まだ足りないところがあった。こういう相手に勝たないと年越しできないなと実感しました。」

 手応えと足りないもの。その両方を感じた60分だった。
 準備が実った3本のトライは自信になった。
「2年生、1年生の活躍もありました。明日からも、また頑張ってほしい」と、成功体験をさらに伸ばしてほしいと託す。

 ディフェンスについては、「相手のアタックは全国トップレベルというのは百も承知。どうやって相手をリズムに乗せないか、と考え、いつもより自分たちがボールを継続する局面を増やした」という。
 しかし、「ブレイクダウンまわりのミス、ハンドリングエラーで相手にボールを渡してしまった」と悔やむ。

「前に出るディフェンスをやり続けてきました。今日もそうし続けましたが、(ボールを)取り返すところまでいけなかった。もっとこだわらないといけませんでした」

 主将として過ごしたこの1年は充実していた。
 全員で最後の最後まで前進し続けたことが嬉しい。「東京の決勝、(花園での1回戦の石見)智翠館に勝ったあとも、キャプテンの立場から見ていても、チームの成長は著しいと感じました。いい雰囲気のまま(東福岡戦まで)来られたと思います」。
 だから、「自分たちがいまできる最高のパフォーマンスは出せた」とする。

 このチームの強みはバックスとする中で、「フォワードがプライドを持って伸び続けてくれたお陰で、自分たちがやりたいアタック、準備していたものを出せました」。
 1年生の時に花園出場を果たした時は1回戦負け。そこから一歩前進した。「今回の結果が来年の基準になると思うので、次回こそ年越しをしてほしい」。自分たちが届かなかったところへ、後輩たちには行ってほしい。

 なぜ早実でラグビーをしているのか。河村主将は、「人に勇気を与えることも目的にしてやってきました」と話す。
 仲間、観客席から多くの声援を受けながらプレーした感想を、「ベンチ、スタンドからの応援に勇気をもらえました」と言う一方で、「(自分たちは)負けたけど見てくれている人に勇気を与えることはできたかな、と思います」。

河村主将は1年生の春から15番を背負った。(撮影/松本かおり)


 最後は自分自身について、「(全国レベルでは)通用しないところが多く、周りの選手に引っ張ってもらうことばかりだったと思います。ミスもしました。キャプテンとして、チームをプレーで引っ張れなかったのは悔しい経験です。これを糧に成長します。大学でまた、頑張ります」と話した。

 2014年からチームを率いる大谷寛監督は試合を「通用したところはアタックとスクラム」とレビューした。ただ、アンストラクチャーの状況から攻め切れたことは評価も、「セット(プレー)からのアタックでトライを取りたかった」。思い描いていたものとは違う展開だったようだ。

 パスは胸に放る。いいキャッチング。そして、いいボールのもらい方をする。この3点を大事に過ごしてきたことが土台となり、攻撃力は全国大会前にぐっと成長した。
 12月上旬に沖縄への修学旅行があった2年生がチームに戻ってきたタイミングで、15人×15人の練習を積めるようになる。12月21日におこなった慶應志木との合同練習で自信を深めた。

 ただ、花園の緊張もあったかもしれない。東福岡の圧力も。パスの軌道が後方にぶれて精度が落ちたり、後半はラインアウトを修正されて理想通りにいかなくなった。
「うちができる範囲のことでプレッシャーをかけ続けて相手のリズムを崩す。そう考えていました」と大谷監督は言う。

 ただスクラムではプレッシャーをかけることができたが、ハイパントには相手のバックスリーも対応。「前に出るディフェンスは頑張ったけど、ヒガシがそれを上回った」。
 年越しを実現するには全国トップレベル相手にも、自分たちの求める精度でプレーできるようにならないといけないと痛感した。
 スキル。メンタル。そしてプランの遂行力。それらを精度高くやり切るための日常を追求していくしかない。

最後の最後まで成長したチームだった。(撮影/松本かおり)


 そんな答に行き着くことができるのも、今年のチームが持てる力を出し切ったからだ。怪我人が多く出て苦しい時期もあった。しかし、3年生を中心に全員で考える集団は伸びた。監督は、「想定を超えるチームになった」と選手たちの歩んだ道を称えた。

「3年生は8人しかいませんでしたが、彼らを中心に、自分たちで話して伸びたチームでした」
 そして、河村主将の人柄を「大人と自然体で話せるリーダー」とし、「コーチたちと話しても、へりくだることも、生意気さもなく、本当にフラットに、大人の会話ができる。チームメートからはグラウンド上のコーチと言われているんです」。

 本人は前述のように「キャプテンとして、チームをプレーで引っ張れなかったのは悔しい経験」と言うが、2025年の早実は、河村がいたからここまで来られた。
 周囲はみんな知っている。








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