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クリスマスを目前に控えたフランスで、トップ14第12節の皮切りとなったスタッド・フランセ×ラシン92(12月20日)はパリダービーだった。
会場のスタッド・ジャン=ブーアンのスタンドにはサンタクロースや、スタッド・フランセのチームカラーのピンクのサンタ帽を被ったサポーターがあちこちに見られた。ウォーミングアップでも、スタッド・フランセの選手たちはクリスマスセーターを模した練習着を着用、クリスマスを待ち望む幸せなムードが漂っていた。
しかし試合が始まれば、そこは激しい戦場へと一変した。
雨のせいか、ハンドリングエラーとペナルティが相次ぎプレーがぶつ切りの展開となり、両チームとも本来の形を見失う中で、今季、浦安D-Rocksからラシン92に移籍したNO8ネーサン・ヒューズはあらゆる接点に顔を出した。ボールを持つたびに力強く前進し、スタッド・フランセのプレッシャーを跳ね返して、チームに勢いをもたらそうとしていた。

20-13でリードしていたラシン92が、そのまま敵地で勝利を収めるかと思われた77分だった。トヨタヴェルブリッツから加入したCTBジョセフ・マヌが危険なタックルでイエローカードを受け、ラシンは14人となった。
スタッド・フランセが攻勢に出る。しかし78分、CTBジョシュア・トゥイソヴァによる見事なジャッカルが決まった。その瞬間、誰もが「ラシンは最も困難な局面を乗り越えた」と確信したのだが……。
その後のラインアウトでラシンは同じミスを2度続けた。
79分、1つ目のブロックを狙ったスローイングを再びスティールされる。そこからがカオス。ボールのポゼッションが目まぐるしく入れ替わる中、ラシンは反則で相手をゴールラインへと近づけてしまった。
2度目のラインアウトでは、誰もがラシンがボールを確保したと確信した。しかし、スタッド・フランセのFLセク・マカルーが、空中でもがきながらそのボールを奪った。
85分だった。ゴールライン上で3人のディフェンダーに背負い込まれながらも、PRギオルギ・メリキゼが巨体をツイストさせる。執念でボールをグラウンディングした。最後はSOルイ・カルボネルがコンバージョンを沈めて20-20の劇的な幕切れとなった。
スタッド・フランセが爆発的な歓喜に包まれる一方で、呆然と立ち尽くすラシンの姿もあった。この日、ラシンのゲームキャプテンだったLOロマン・タオフィフェヌアは、首を横に振った。
「最後はただ落ち着いて試合をコントロールして、ボールを外に出すだけでよかったのに…」
彼の隣で、フィクーは奥歯を噛み締めていた。
「この試合は勝たなければならなかった。本当に悔しい。相手には最後まで戦う権利があるし、彼らはそれを見事にやってのけた。自分たちがこの試合のラスト数分をよりコントロールすべきだったんだ」

ラシン92のパトリス・コラゾHCは、「クリスマスの時期だから、ラシンは『寛大さ』を発揮したと言っておこうか。試合の終盤は、至る所で選手たちが(ボールに)飛び込んでいた。もはや丁か半かの勝負だった」と皮肉混じりに振り返った。
今季初めてのジャン=ブーアン陥落まで、あと一歩だった。
しかしピンクのジャージーを纏った男たちは敗北を拒んだ。今年最後のホームでの試合に足を運んだファンは、フルハウスの1万9000人。その熱気の中、劇的なドローで締めくくった。
同日、2週間前のチャレンジカップでようやく今季初勝利を挙げたペルピニャンが、トップ14でも今季初勝利を掴んだ(26-20 対クレルモン)。
スタッド・エメ・ジラルの光景は感動的だった。チームを率いるロラン・ラビットHCは懐かしさに包まれていた。
「(ラシン92、スタッド・フランセを率いて)パリ近郊で15年を過ごしてきた私にとって、この雰囲気は、以前いた場所(カストルなど)で経験したものを思い出させてくれる。スタジアムに到着したときの熱狂的な空気はまるでトップ14の決勝戦に来たのかと思ったほどだ」と試合後に語った。
この試合、ペルピニャンは絶体絶命のピンチに見舞われた。前半20分、相手のWTBバウティスタ・デルグイに対する空中でのタックルにより、WTBジェファーソン=リー・ジョゼフが一発退場となったのだ。ジョゼフはその数分前、鮮やかなカウンターから80メートルを走り切るトライを挙げたばかりだった。
以前のような迷走の中にいるチームだったら、その過酷な運命に立ち向かうことは到底できなかっただろう。
しかし、ペルピニャンは変わりつつある。「この3週間、多くの負傷者が練習に戻ってきたことが嬉しい」と、ラビットHCは安堵の表情を見せる。
「それが練習の質を上げ、選手間のポジティブな競争を生んでいる。今日の試合も、彼らなら必ず勝てると確信していた」
PRギオルギ・テトラシヴィリもこう付け加える。
「以前なら、イエローカードを受けて数的不利になっただけで、『あぁ、これから苦しい時間になるぞ』という感覚に襲われていた。でも今日は違った。みんなで目を合わせ、戦う準備はできていると互いに感じることができたんだ」
セットピースで圧倒。ブレイクダウンでも遥かに素早い反応を見せ、ペルピニャンは1人少ない状態で戦っていると感じさせなかった。
「退場者が出てもプランは一切変えなかった。14人でも勝てることは分かっていたから。私自身、かつて決勝戦を14人で制した経験もある(2016年、ラシン92を率いてトゥーロンに勝利)。そういう極限の状況では、経験豊富な選手がピッチにいることが大きな強みになる」
この日のペルピニャンには、象徴的な2人のリーダーがいた。FLジェイミー・リッチーとSOベンハミン・ウルダピジェタだ。
リッチーは、まさに「闘将」だった。
「偉大なチームには、偉大な選手と偉大なリーダーが不可欠」とラビットHCは説く。「ジェイミー(リッチー)は、自身のレベルを証明し、周囲を牽引する偉大なキャプテンだ。今日の彼は空中戦でも地上戦でも、そして判断も、リーダーとしてのチームへのコミュニケーションも非常に素晴らしかった」。
スタンドからも「リッチー! リッチー!」と大歓声が送られた。
ウルダピジェタは本来なら、自国のアルゼンチンで隠居生活を送っているはずだった。しかしSOに負傷者が続出し、急遽メディカルジョーカーとしてトップ14の舞台に舞い戻ってきた。
クレルモンに3点差まで詰め寄られた直後の48分、ハイパントで味方の重要なトライをお膳立てするなど、39歳という年齢にもかかわらず、自ら仕掛けたプレーのほとんどすべてを成功させた。「すべてを出し切る。上手くいくときもあれば、そうでないときもあるさ」と試合を終えて語った。
「39歳なりのリズムというものがある。61分に交代したとき、左のハムストリングが自分の年齢を思い出させてくれたよ。でも、任せてもらえるなら、80分間ずっとピッチに立っていたかったけれどね」

この勝利は安堵を通り越し、大きな歓喜となった。
13位のモントーバン(同日、ポーに17-53と大敗。勝ち点7)とは、わずか勝ち点2差とした。1月24日に予定されている直接対決で勝利すれば、ついに最下位を脱出することができる。
「すべての試合に勝てるとは思っていない」とラビットHCは言う。
「だが、このクレルモン戦の勝利は、ピッチの上で一丸となって戦えば、我々は非常に強くなれるということを証明してくれた」
この日スタンドを埋めた、1万4013人のサポーターの顔にも希望が見えた。
心配なのは敗れたクレルモンだ。11月の中断期間以降、5試合でわずか1勝しか挙げていない。第11節のスタッド・フランセ戦で辛勝したのみだ(36-32)。
それ以外ではリヨンに完敗し(24-43)、チャンピオンズカップではサラセンズに敵地で叩きのめされた(47-10)。ホームでもセールに惨敗(14-35)。屈辱的な大敗を2度も喫している。
クレルモンのクリストフ・ユリオスHCは、「11月に多くの代表選手を出した。我々だけが特別なわけではないが、しばらくこうした主力の大量不在に慣れていなかった。その後、選手たちは休暇に入り、戻ってきたと思えば別の誰かが負傷し、また戻ってきたり。チーム内のコンディションがバラバラになってしまった。これでは『結束』できないし、『チーム』として機能しない。今日の試合は、(11月1日に)モンペリエで勝利した際に見せたような、あの強度や安定感からは程遠い。皆が神経質になり、先を急ごうとするあまり、判断を誤ってしまっている」と説明する。
クレルモンは現在11位(勝ち点27)に沈んでいるものの、決勝トーナメント進出圏内である6位(勝ち点32のモンペリエ)までは、勝ち点5の差しかない。決して絶望的ではないだろう。しかし、春に決勝トーナメントの舞台に返り咲きたいのであれば、早急に立て直さなければならない。
次週はボルドーをホームに迎える。相手は、チャンピオンズカップで南アフリカへの移動の負担を克服してブルズに勝利(46-33)、翌週はスカーレッツに50-21と完勝し、12月21日のトップ14ではトゥーロンを46-7と粉砕。波に乗っている。
「数日間のオフを設ける。そこで心身をリフレッシュさせ、頭を切り替える。そして週末に再集結し、ボルドー戦への準備を始める。その一戦こそが、まさに今シーズンの大きな分岐点になるだろう」
ユリオスHCは、そう言って気を引き締めた。
今節、最も注目されていたのがリヨン×トゥールーズだった。
トゥールーズには12月15日、フランスラグビー懲戒評議会から処分が発表された。2022年にメルヴィン・ジャミネがペルピニャンから移籍した際に不正があったとされる件だ。チームはトップ14の勝ち点から2点減点(+2点執行猶予付き)、罰金3万ユーロ(+1万5000ユーロ執行猶予付き)とされた。
また前週のチャンピオンズカップでは、グラスゴーを相手に前半を21-0とリードしながら、最終的に21-28で逆転負けを喫した。その失望的な敗戦は、今季のチームに見られる「一貫性の欠如」を露呈したものだったから、チームにとってリヨン戦は、再び勢いを取り戻すためにも極めて重要。首位の座をポーに明け渡す不本意な結果を払拭するためにも、過去8年間勝利のない敵地で勝つことが至上命令だった。
対するリヨンは12位に沈み、ホームで勝ち点獲得が絶対条件という「背水の陣」でこの一戦に臨んでいた。
トゥールーズは前半を17-7とリードして折り返したものの、後半開始早々、リヨンの反撃を受ける。46分、48分とトライを許し、逆転された(17-19)。
しかしこの日の「赤と黒の軍団」は動揺しなかった。自分たちのアイデンティティを貫き、FW陣の力強い推進力によって再び主導権を握る。トライを決め、再びリードした(54分、22-19)。
60分にリヨンのキャプテン、SHバティスト・クイユーがHIAでフィールドをあとにしてからは、さらに勢いが出た。トゥールーズはその直後に1本、さらに80分を過ぎてからのラストプレーでもう1本トライを奪って41-19と勝利。貴重なボーナスポイントもゲットし、勝ち点(42)でポーに並んだ。しかし、直接対決で勝利したポーが現時点での首位になる。
試合後のユーゴ・モラHCは、いつものようにピッチ上に選手を集めて語った。
「俺たちの唯一の表現手段は、このクソったれなラグビーだけなんだ。今夜も8分から10分ほど、自分たちで自分たちの首を絞めるような、最悪な空白の時間帯があった。今週俺たちは勝ち点2の制裁を受け、首位の座をポーに譲らざるを得なかった。結果として、今週の俺たちはプラス3ポイントだ(ボーナス込みの勝利点5から、制裁のマイナス2を引いた計算)。今、世間は俺たちの会長を、俺たちのクラブを、あらゆる人間を罵っている。誰もが俺たちに泥を塗りたくっているんだ」
周囲の敵意に満ちた空気を告発するように、モラHCは続けた。
「大事なのはラグビーだけだ。このクソったれな表現手段しかないんだ。それ以外は、何の意味もない。だから余計な口を叩くな。飛行機に乗って、家に帰るぞ。良いクリスマスを過ごして、来週末に備えるんだ」

クリスマス休暇を挟んでトゥールーズは、次節、ラ・ロシェルをホームで迎え撃つ(12月28日)。前節(第12節/12月20日)、ラ・ロシェルはバイヨンヌを49-17で撃破している。
激闘の裏でトップ14には、「クリスマス休暇を選手に与えなければならない」という規定がある。プロリーグ運営団体のLNRと各組合(選手組合、コーチ組合、ラグビー・プロクラブ連合)との合意に基づき、12月24日と25日の2日間は、いかなる練習も禁止されているのだ。
各クラブには複数の休日取得オプションが提示されており、クレルモン、ラシン92、ペルピニャン、トゥールーズは「4日間の休暇」を選択し、26日(金)から練習を再開する。また、モントーバン、バイヨンヌ、モンペリエ、ポーのように、火・水・木の「3日間連続」でチームをオフにするクラブもある。
一方で、トゥーロンやリヨンなどのクラブは、火曜日まで練習を行い、金曜日に再びグラウンドに集まるスケジュールを組んでいる(参照:「actu Rugby」)。
昨年の昇格クラブだったヴァンヌのジャン=ノエル・スピッツァーHCは「試合は組まれているのに、練習することは許されておらず、まともな練習を一度しか行わずに試合に臨むことになる。まさに難題だ」と嘆いていた。
一方、トゥールーズのディフェンスコーチのロラン・テュエリーは「試合の準備にかけられる時間は実質1日半ですが、私たちはこうした状況には慣れています。シーズンの真っ只中に選手をリフレッシュさせるため、平日に2~3日のオフを挟むことは以前からありましたから」と説明する。
規定に基づき、クラブ側はこの休暇期間中、選手に対していかなるトレーニングプログラムを課すことも禁止されており、選手にとっては完全に「オフ」の状態になる。
トゥールーズのPRジョエル・メルクラー(スペイン代表)が、「いつもとは違う準備になりますが、スペインに4日間帰省できるのは嬉しいです。もちろん、クリスマスのご馳走は控えめにしなければなりませんが」と笑顔で語るように、選手たちはこの休暇で英気を養う。
そして、前半戦を締めくくる今年最後の試合(第13節/12月27日、28日)に向けて、再びラグビーの舞台へと集結する。