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【欧州チャンピオンズカップ 第3節】台頭、怒り、嘆き。トゥールーズは平凡なチームになってしまったのか?
14-20とサラセンズに敗れたトゥールーズのSHアントワンヌ・デュポン。(Getty Images)

【欧州チャンピオンズカップ 第3節】台頭、怒り、嘆き。トゥールーズは平凡なチームになってしまったのか?

福本美由紀

 1月10、11日の週末、欧州チャンピオンズカップの第3節が開催された。

 初日のハイライトは、2022、2023年の決勝戦のリメイクとなったレンスター(アイルランド)×ラ・ロシェルだった。

 試合はレンスターが開始から猛攻を仕掛けた。対するラ・ロシェルはエンジンがすぐにかからず、開始からわずか8分の間に2トライを献上し、瞬く間に12点のリードを許した。

 しかし、レンスターの規律が乱れ、ラ・ロシェルがようやくペナルティを得る。PGで確実に3点を狙える位置だったが、タッチに蹴り出し、ラインアウトからのトライを狙った。しかし、ラインアウトのミスでチャンスを逃す。ラ・ロシェルはその後もミスを繰り返した。

 29分にWTBダヴィト・ニニアシヴィリがコーナーに飛び込みようやく報われた(7-12)。前半終了直前にもトライ目前の場面を作ったが、直前でボールを落としてしまう。結局前半は、レンスターが2枚のイエローカードを受け、10個ものペナルティを犯したにもかかわらず、リードを保ったまま折り返した。

 後半もラ・ロシェルが攻勢を強めるが、自らのミスで得点できない時間が続く。55分、ようやくPGで3点を選択すると、その直後にトライを奪い、17-12と逆転に成功した。しかし、プレッシャーを受け続けていたレンスターがサインプレーを展開。少ないチャンスを確実にトライに結びつけ、67分、71分と立て続けにトライを奪われ逆転された(17-22)。

 ラ・ロシェルも長いフェーズを重ねて左右に揺さぶり、最後はSOイハイア・ウエストが突破。難しい角度のコンバージョンをSHノラン・ルガレックが沈め、試合終了まで残り3分の時点で24-22と再逆転した。だが、この「3分」が致命的となった。自陣22メートル内で痛恨の反則を犯し、SOハリー・バーンに試合終了のホーンとともに逆転PGを叩き込まれ、24-25で敗れた。

1000得点突破のラ・ロシェルSOイハイア・ウエスト。チームの公式Instagramより


 序盤を除けばラ・ロシェルがゲームを支配していたが、自らのミスで勝利を献上する形となった。試合後、20歳のCTBシメリ・ダウニヴクが涙を流していた。彼はエネルギッシュに動き回り、ボールを持つたびにゲインラインを突破し、ディフェンダーをなぎ倒した。ジョナタン・ダンティの後継者としての期待が高い。また、36歳のFLレヴァニ・ボティアも密集戦で敵のボールを奪い、ディフェンスで次々とタックルを決め、ボールを持ってはCTBだった頃を彷彿させるようなラインブレイクも見せ、健在ぶりを示した。

 一方で、100パーセントのキック精度を見せたルガレックは、最後のコンバージョン時にハムストリングを負傷。次戦のハーレクインズ戦だけでなく、2月5日のシックスネーションズ開幕戦の出場も危ぶまれている。ボルドーのマキシム・リュキュも膝を負傷しており、フランス代表のSH陣には暗雲が立ち込めている。

 この日はクレルモンがグラスゴー(スコットランド)に21-33で、バイヨンヌもレスター(イングランド)に14-57で敗れ、フランス勢にとっては「ブラックサタデー」になるところだった。その窮地を救ったのがポーだった。

 ウェールズのスカーレッツを相手に、ポーは30分までに4トライを奪う圧倒的な立ち上がりを見せた(26-10)。しかし、その後2枚のイエローカードを出され、ハーフタイムを挟んだ20分間で4トライを返されて逆転を許す(26-38)。それでも終盤に立て直し、新たに3トライを叩き込んで47-38で今大会初勝利を挙げ、決勝トーナメント進出へ望みを繋いだ。

 負傷から復帰したWTB/FBテオ・アティソベが、自らトライを取るだけでなく、ラインブレイクでトライチャンスを作り周囲の選手を活かす。また持ち前の空中戦での強さも見せ、復調ぶりを見せた。

 プロ2戦目の20歳のWTBトシ・バトリンも躍動した。アティソベのクイックスタートからパスを受けてプロ初トライを挙げると、その5分後にも2本目のトライを記録。77分には独走から3人のディフェンダーをかわす突破を見せ、ハットトリックこそ逃したものの、PRシアテ・トコラヒのトライを演出した。70分には、左サイドでゴールを目指して走るスカーレッツのFBブレア・マレーに対し鮮やかなタックルを見舞い、トライを防いだ。

ポーのトシ・バトリン。写真は2025年12月20日におこなわれたトップ14、モントーバン戦のもの。(Getty Images)


 バトリンは、オーストラリア人の父と日本人の母を持ち、生まれも育ちもオーストラリアだが、「本気で取り組みたいのであれば」とフルでトレーニングできる環境を求めて、2023年にフランスに渡り、ポーのエスポワール(アカデミー)に入団した。

 試合後の記者会見でバトリンについての質問が投げかけられ、セバスチャン・ピケロニHCは答えた。
「トシ(バトリン)は、単にスピードがあるというだけでなく、ラグビープレーヤーとしての資質を備えています。ピッチ上のあらゆるエリアに顔を出し、プレーに関わろうとします。私が注目しているのは、彼がこの2年半もの間、我々と共に練習に励んできたという事実です。今彼が与えられた出場時間の中で手にしている成果は、何よりもその『継続してきた努力』が実を結んだものなのです」

 また一つ、ポーで育った若い才能が芽を出した。

 翌日、トゥーロンはホームにマンスター(アイルランド)を迎えた。トゥーロンは、前週、トップ14、ラ・ロシェル戦に、エスポワールの選手9人(内3人はプロ試合初出場)を含む若手主体のメンバーで臨み、0-66という屈辱的な大敗を喫していた。

 日曜21時のテレビのプライムタイムに組まれた、その週の目玉カードは、実力伯仲の熱戦になるはずだった。しかし、まるで公開処刑のようになってしまった。過酷な経験が、若い選手たちの成長の糧になってくれることを願うばかりだった。

 この若いチームを支えるためにメンバーに入っていたマーア・ノヌーがNO8としてピッチに入った時、スコアはすでに0-49(55分)。オールブラックスのレジェンドの一人も、83分に11個目のトライを奪おうとゴールを目掛けて雪崩れ込もうとしたラ・ロシェルのPRアレクサンドル・クンテリアの腕からボールをもぎ取り、グラウンディングを防ぐことしかできなかった。

 試合後の会見でトゥーロンのピエール・ミニョニHCは、「若手起用の選択をしたのは、怪我人と義務付けられた休暇期間の選手を合わせて、今日だけで19名もの欠場者がいたんだ」と釈明し、「こうする以外に、私に何ができるというんだ! 19人も欠場者がいるんだ」と繰り返した。そして「トップ14が長く、過酷なリーグであることは百も承知だ。我々は地獄のようなスケジュールの中にいる。これはトゥーロンだけの話ではなく、すべてのチームに言えることだ」と続けた。

 さらに「こうしたメンバー構成が気に入らないというなら、チームを3つ作れるだけのサラリーキャップの緩和や、資金的手段を私に与えてくれ。今のところ、我々にはそんな余裕はない。トゥーロンにも、そして他のどのクラブにもだ」と訴えた。切実な現状である。

マンスターに競り勝ったトゥーロン。写真はチームの公式Instagramより


 チャンピオンズカップ初戦でエジンバラに敗れ(20-33)、その次のバース戦には勝利したが(45-34)、少しでも優位に決勝トーナメントに勝ち進むために、もう失敗は許されない。1月11日のマンスター戦には、万全を期して備えなければならなかった。しかもホームのスタッド・マヨールはチケット完売だ。「本当のトゥーロンの顔をみせる」と意気込んで臨んだ。

 前半は苦戦を強いられたが、40分にFBマリウス・ドモンが突破してトライを決め、7-6とリードして折り返す。後半、SHベン・ホワイトのトライでリードを広げるが、マンスターも反撃し一進一退の攻防が続く。

 終盤、逆転を許して緊迫した空気が流れる中、76分にドモンがPGを沈めて27-25と再逆転。ボーナスポイントは逃したものの、トゥーロンは不安定ながらも勝ち切った。この試合のポジティブな要素は、ミニョニHCも述べているように、「数年前なら負けていたであろう試合を勝ち切ったこと」。そして、この日キックを100%成功させ、自らトライも取ったドモン(23歳)や後半に蹴り上げたボールを自らチェイスして個人技でトライを取りに行ったWTBガエル・ドレアン(25歳)といった、このクラブで育った若手がチームを支えたことだ。

 ボルドー×ノーサンプトン(イングランド)は、昨年の決勝戦のリメイクで、今節最も注目されたカードだった。結果は、ホームで戦ったボルドーが50-28と圧倒的な強さを見せつけた。

 ボルドーはこの試合で8トライを奪い、今季、ヴァンヌから入団したWTB/FBサレシ・ラヤシと、ラシン92から帰ってきたFLカメロン・ウォキがハットトリックを達成した。

 ラヤシはこの試合で、ボルドーで初めて背番号15をつけた。昨年7月にフィジー代表で初キャップを得た。昨年11月のテストマッチではフィジーの新エースとして一皮剥け、それ以来、勢いは増すばかり。ボルドーの華麗なBK陣の新たな武器となっている。

 ウォキは、ボルドーのロラン・マルティ会長に自らクラブに帰りたいと希望を伝え、「ラシンと同じだけの給料を払うことはできない」ということ、ウォキがいない間にチームは成長してきたから「古参選手のような態度ではなく、新たに加入した選手として努力すること」という条件を承諾し、再入団を認められた。その気持ちはフィールドでも見られ、本来の空中戦の強さ、豊富な運動量を取り戻し、あちこちに現れて積極的にボールに絡んだ。それがハットトリックという結果に繋がった。

欧州チャンピオンズカップ第3節のベストXV。Investec Champions Cupの公式『X』より


 今節のトリを飾ったのがサラセンズ×トゥールーズの一戦である。
試合前、トゥールーズのキャプテン、アントワンヌ・デュポンは、初戦のグラスゴーでの敗北を「自らの足に弾丸を打ち込んだ」と例えていたが、この試合でも、新たにもう1発撃ち込んでしまった。

 開始19分、この日、背中の負傷で欠場していたロマン・ンタマックに代わってSOを任されていたブレア・キングホーンがトライを挙げて先制する(7-0)。しかし、29分にデュポンのキックがチャージされた場面から流れが変わった。

「アントワンヌ(・デュポン)のキックがチャージされた場面から、自陣を脱出できなくなり、前半の残り時間は完全に行き詰まってしまった。前半の残り10分か15分というところでミスを重ねてしまい、自分たちの弱さ、あるいは脆さが露呈し始めた。ボールを十分にキープし続けることができなかったのが致命的だった」とユーゴ・モラHCは分析する。

 その後、36分、40分にもトライを許し、7-17で前半を終えた。

「最初のトライを許した後、エネルギーが落ちてしまった」と、試合後にデュポンは認めた。「ディフェンスが緩慢になり、セットプレーも規律も精度を欠いた。グラスゴー戦もそうだったが、こうした気象条件(雨と強風)の中でのプレーはとても難しい。でも、条件は両チーム同じ。それなのに、毎回対応できないのは僕たちの方。自分たちの強度を引き上げることができていない。今シーズンは同じことが何度も繰り返されている。前シーズンにタイトルを獲得した時と同じメンバーなのだから、なぜできなくなっているのか、腹を割って話し合い、原因を理解する必要がある」

 後半、マチス・ルベルのトライで3点差(14-17)まで詰め寄るが、HOジュリアン・マルシャンの突進がわずかに及ばず、逆にペナルティを取られた(最終スコアは14-20)。

 サラセンズが自信を取り戻し、トゥールーズが再び疑心暗鬼の沼に沈んでいく。そこからの試合終盤は、もはや惨状だった。これでもかと言わんばかりに繰り返される落球、判断ミス、ペナルティキックはタッチラインを割れない、キックオフは直接タッチに出してしまう。そして、グラスゴー戦同様、何の影響力も与えられない交代選手たち。悲劇は繰り返された。

トゥールーズはサラセンズに14-20で敗れる。写真はトゥールーズの公式Instagramより


 そして、2週間前、ラ・ロシェルを完膚なきまでに打ちのめしたスーパーデュポンは降臨しなかった。

 試合後の会見でモラHCは「我々は、少し『平凡な』チームになってしまった。この大会を上位で勝ち抜くには、平凡では通用しない。あまりにも簡単に崩れすぎている。いまの我々のラグビーからは、インスピレーションも感じられなければ、相手を恐れさせるような覇気も感じられない。ここ4週間ほど、まともな練習ができず、時間に追われ、自分たちのラグビーを見失っている。今夜も気迫はあったが、それだけでは勝てない。もっとコントロールし、ボールを支配しなければ。チャンスはあったにもかかわらず、勝負どころの局面でそれらが欠けていた。我々が発揮すべきクオリティからすれば、今の内容は不十分です」と分析した。

 今シーズンここまで、全公式戦の中のアウェー戦9試合のうち6試合(モンペリエ、バイヨンヌ、ポー、グラスゴー、ペルピニャン、そしてサラセンズ戦)に敗れている。これまでの成績とは程遠い数字だ。特にチャンピオンズカップにおいて、予選プールのアウェー戦で敗北を喫するのは、2022年1月(ワスプス戦 22-30)以来のことである。
 結果以上に気になるのは、負け方だ。同じ展開なのだ。
 試合を支配し、すべてを掌握しているかのように見えながら、ふとした不運なプレーから試合の糸が解け始め、その後、短時間のうちに崩壊して相手の猛攻に飲み込まれてしまうのだ。

 かつてはトゥールーズの絶対的強みであり、彼らを王者たらしめていた要素——メンタルの強さ、冷静さ、そしてセルフコントロール。それらにおいて、現在の彼らは脆さを露呈している。自らの強さを微塵も疑わなかったチームが、いまや相手が勢いづくと途端にパニックに陥ってしまうのだ。

 つい最近まで、試合終盤の激しい駆け引きも、すべてねじ伏せて勝利してきた。しかし、いまはそこで負けている。パスは精度を欠き、ボールは手から滑り落ち、リーダーたちはゲームのコントロールを取り戻せず、ベンチから投入されるリザーブの選手も流れを変えられない。

 彼らは本当に「平凡なチーム」になってしまったのだろうか?




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