logo
【インタビュー】挑戦のいま。原田衛[モアナ・パシフィカ]
インタビューをしたのは本拠地ノースハーバースタジアム。自然広がるのどかなグラウンド。原田は1999年4月15日生まれの26歳。175センチ、101キロ。(撮影/大嶽和樹)

【インタビュー】挑戦のいま。原田衛[モアナ・パシフィカ]

大嶽和樹/Kazuki Otake

 スーパーラグビー・パシフィックの舞台に新たな日本人選手が挑んでいる。今シーズンからモアナ・パシフィカに加わったHO原田衛(日本代表キャップ12/前東芝ブレイブルーパス東京)だ。
 2月20日におこなわれたチームにとっての今季2戦目、ハリケーンズとの試合でデビューした。後半10分からの出場だった。

 モアナ・パシフィカは、トンガやサモア系の選手たちが多く所属するチーム。昨季までコベルコ神戸スティーラーズに所属し、元オールブラックスのCTBンガニ・ラウマペ、元オールブラックスで2015年ラグビーワールドカップトライ王に輝いたWTBジュリアン・サヴェアなど日本でも馴染みのある選手も多い。

 パシフィックアイランドにルーツを持つ多様な選手が集まった、特別なカルチャーを持つチームで、原田はいま何を感じ、どう戦っているのか。
 モアナ・パシフィカの本拠地はニュージーランド、オークランド北部のノース・ハーバースタジアム。同地を訪ね、近況やニュージーランドでの生活、そして、グラウンド内外の異文化の中での戦い方について聞いた 。

ノースハーバースタジアムの外観。自然の多いオークランド郊外では目をひく外観。(撮影/大嶽和樹)


◆チーム環境と「第二言語」の壁。


——ニュージーランドでの生活や、モアナ・パシフィカに合流してからの日々について聞かせてください。初めての一人暮らしや、文化の違いで戸惑うことはありますか。

「そうですね、一人暮らしで自炊も。やっぱり全部自分でやらなきゃいけないというのが、最初は結構きつかったですね。いまはもう慣れてきたので、全然大丈夫なんですけど。あとはやっぱり、コミュニケーションの部分がいまは一番きついところですね」

——渡航前の記事の中にチームメートの英語のレベルについて、原田さんとあまり変わらないのではないか、というものがありました。実際はどうですか。

「分かっている人と分かっていない人がいて。(皆)だいたいは喋れるんですけど、本当に伝わっているのか自分ではよく分からないというか。第一言語の人同士なら伝わるんでしょうけど、第二言語同士だと、本当にお互いに意思疎通が図れているかと言われたら、ちょっと難しいところはあります」

練習の様子。ちなみに練習グラウンドは、オークランドに本拠地を構えるサッカーチーム、オークランドFCと共用。サッカー元日本代表の酒井宏樹が在籍している(モアナ・パシフィカ提供)


◆ミーティングの理解度とジョークの壁。


——ミーティングでは、どれくらい聞き取れている感覚ですか。

「ラグビーに関することなので、画像(スライド)付きで説明されますし、そこらへんは問題ないです。ただ、ジョークなどは本当に全く分からないですね。『いま、何が面白かったのかな?』と思いながら、とりあえず周りを見ながら、みんなに合わせて笑っているような感じです」

——アイランダー特有のジョークは、その方の背景や文脈を知らないと理解できないものも多いですよね。

「そうですね、そこはちょっと難しい。理解する(聞く)のはまだいいのですが、やっぱりスピーキングのところが課題です。自分の思っていることを伝えたり、チームメイトに対して要求したりするのは、正直まだ難しいなと。ラグビーはその連続じゃないですか。そこができないと、すごく苦しいと感じます」

——海外の環境に身を置いてみて、日本にいる間にもっとやっておけば良かったと感じることはありますか?

「スピーキングです。自分が思っていることをもっと的確に伝えたいと思う場面が多い。自分はフッカーなので、スクラムなどの円陣の部分で、周りが自分の声を待っている状況でも、うまく言葉が出てこなかったり、難しさがあったりしますね」

ハリケーンズ戦(10-52)でスーパーラグビーデビューを果たした直後。(モアナ・パシフィカ提供)


◆プレー面での実感とセットプレーの自信。


——スーパーラグビーの選手たちと体をぶつけ合い、日々の練習を共にする中で、日本との違いや、逆に通用すると感じたのはどこでしょう。

「やはりフィジカルはかなり強い。全体的に試合を見ていても、ブレイクダウンなどの一般プレーの激しさが全然違います。ただ、スクラムやラインアウトといったセットプレーは通用するな、と。スクラムに関しては、日本の方がしんどいし、細部にこだわっている。だからセットプレーは問題ないです」

——試合への出場機会や、コンディション調整の難しさについてはどう感じていますか。
「試合から少し離れていた時期もあったので、自分でコンディションを上げていくのは難しい。チャンスが限られているので、チーム練習だけでなく、個人練習で体力などをしっかり上げていかないといけないと思っています。チームのカルチャーにはだいぶ慣れてきたと感じています」

◆ストイックな習慣と「チキンライス」という愛称。


——原田さんは非常にストイックで、「20時以降はスマホを触らない」といった習慣も有名ですが、今も継続されているのですか。

「最初は、みんなと一緒にカバ(パシフィック地域の伝統的な飲み物)を飲みにいったりしていました。でもいまはそれもやめて、自分らしく規律正しい生活をするように心がけています。いつも準備として、低脂質のチキン弁当を持参しています。チーム内では『チキンライス』って呼ばれることもありますが(笑)」

——アイランダーの選手たちだと、試合前にハンバーガーを食べるような方もいそうですね。

「それしか食べるものがない時があります。試合当日の食事でチャーハンが出てきたり……。米が食べたいと思っても、そういう脂っこいものしかなかったりする。『みんな、これを食べてプレーしているのか』と驚くこともありますね」

ロッカールームでの一枚。(モアナ・パシフィカ提供)


◆異文化への適応と孤独への向き合い方。


——ミーティング前の歌など、独特の文化についてはいかがですか。

「歌、ありますね。分からない歌詞とリズムを永遠に歌うという。だんだん覚えてきましたが、意味は全く分かっていません。歌詞がローマ字なので読むことはできますから、一応歌えてはいます(笑)」

——遠い地での挑戦です。孤独感などは感じませんか。

「どこにいても、孤独感というものはあるものと思っています。日本語を話せる環境はありがたいですが、新しいチームに来てすぐにファミリーのような感覚を持つのは難しい。その中で、どうチームに馴染んでいくかだと思っています」

——今シーズンの目標を教えてください。

「チームにどれだけ貢献できるかが重要だと思っています。まずはトップ6に入るために、試合に出続けることがいちばん。チームに良い影響を与えるために精進したいです。日本人としての機敏さなどを強みにアピールして、しっかり結果を残したい」

 今週末(3月15日)、同じオークランドのイーデンパークを本拠地にするブルーズと対戦、原田は16番でリザーブに入った。
 その様子もお届けしたい。




ALL ARTICLES
記事一覧はこちら