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毎年、風通しのよさが伝わる。
ジャパンラグビーリーグワン1部のクボタスピアーズ船橋・東京ベイが3月5日、千葉県内の拠点で新入団選手の会見を開いた。
3季連続での実施。まずは前採用でもある前川泰慶ゼネラルマネージャーが挨拶する。
「皆さんこんにちは。お忙しいところわざわざお越しいただきまして、ありがとうございます。また新入団選手の皆さん、いろんな選択肢があるなかでクボタスピアーズ船橋・東京ベイ、株式会社クボタを選んでもらってありがとうございます。皆さんと一緒にこれから将来を築いていけるのを楽しみにしているので、よろしくお願いします。
新人を迎えることはチームにとって本当に嬉しい、わくわくすることです。毎年いい人材がスピアーズを選んで来てくれています。近年チームの成績が上がって、安定しているのはまさに人の力です(初優勝した2022年度から昨季までに2度のプレーオフ決勝進出)」
今回加わったのは5名だ。
立命大前主将の島正輝はもともとナンバーエイトで活躍も、リーグワンではフッカーにコンバートする。
栗原大地は東洋大出身。192センチのロックだ。群馬の伊勢崎興陽高では無名ながら、大学2年から公式戦に出て昨季は23歳以下日本代表にも名を連ねた。
今季2018年度以来14度目の大学日本一に輝いた明大からは、フランカーの利川桐生とスクラムハーフの柴田竜成が加わった。激しさのある利川は3年時に日本代表入り。柴田は精度の高いキックが光る。
流経大から加わったティシレリ・ロケティは突進力のあるナンバーエイト。母国トンガでは来日直前の22年1月、大規模な海底火山噴火で被災した経緯がある。

この5人を前川GMが紹介する。ひとりひとりの総評に入部への謝辞を付け加えた。
「島選手を初めて見たのは1年生の時。皇子山(皇子山総合運動公園陸上競技場のことか)で、確か雨が降っているなかでの試合でした。ルーキーながら出場していることにも驚きましたが、身体の大きさ(身長182センチ、体重107キロ)がありながらも常にボールの近くにいて、身体を張り続けられる選手という印象がありました。その日は腰を打って退場してしまいましたが、その姿が悔しそうで、当時から何となく『一緒にラグビーをやれたら面白いだろうな』と。こうして来てもらえることを嬉しく思います。
栗原選手は、彼が1年生の時に東洋大の練習へ見に行かせていただきました。大学の福永(昇三)監督に監督室へ呼ばれて彼を紹介してもらい、(本人に)『練習参加、してみないか』と打診したのですが…。
2秒で断られました! 『嫌です』と。
これまで数多くの選手の採用に関わってきましたが、練習参加を断られたのは初めてでした。あとから聞けば『怖かったんです』と。本当に素直な子で。そこから何回かお誘いして、練習に来てもらえて、いろんな選択肢があったなかで今日を迎えられたことは本当に嬉しいです。
利川選手は高校時代から有名。(かつて利川が在籍の)大阪桐蔭高のコーチを務めるクボタOBの四至本(侑城)さんに、(以前から)『今度、明大に入る利川選手はいい男。クボタに合っている。注目してください』と言われていました。
ちょうど廣瀬(雄也)、為房(慶次朗)が(2024年度にスピアーズへ)来てくれる縁で明大に通っていた時、大学2年で活躍していた。これは本当にいい選手だと思っていたら、3年生で日本代表になった。
スピアーズから代表へ行っている選手からは『いい男で、タフさもある。クボタっぽい選手』と言われ、いま採用担当をされている鈴木力さんもその姿にほれ込んで、八幡山(明大のグラウンド)に通われたと思っています。今回、来てもらえて、嬉しく思います。
柴田選手は1、2年生の時は出場機会が少なかったものの、(全体トレーニング後に)いつまでも残っていて、練習がない日もグラウンドに出て(個別メニューをして)いました。いまはチームに合流してまだ1週間ですが、来なくてもいい日まで(拠点で)ボールを蹴っています。本当に努力ができる人間だと感じています。
3、4年生の時にその積み上げをグラウンドで発揮し、大学を日本一に導く原動力になったと思っています。彼がクボタの強いフォワードをどう操り、ドライブしてくれるかを楽しみにしています。きょうはありがとうございます。
ロケティ選手は苦労して日本に来ました。ボールキャリー、接点でボールを前に運べる。相手を押し下げる。クボタのオレンジのジャージーがすごく似合うのではないか、着てもらいたいなと思いました。こうしてチームに迎え入れられて本当に嬉しいです。
クボタらしい実直な5人に来てもらえたと思いますので、ぜひ彼らの活躍にご期待いただければと思います。きょうはありがとうございます」
フォワードの採用者数が4名にのぼったことについて、こう説明する。
「いまスピアーズで試合に出場しているフォワードの年齢層がちょっとずつ上がっています。これは(主力組に)一貫性がある証でもあると思いますが、これから試合数も増え、フォワードの消耗度も高まっていくなか、フォワードの層の厚さは大事になってきます。そういったこともあって、フォワードを多く採用しました」
ここまで部屋の端側にいすを並べていた5選手は、順番に中央に出てボールを持って意気込みを語る。その後は広報の岩爪航氏が、フラン・ルディケヘッドコーチからのメッセージを代読する。
「今日はこのクボタスピアーズにとってとてもエキサイティングな1日です。これは単に新しい選手を紹介するだけの日ではありません。チームの未来、そしてクラブの成功を担う次世代の選手たちを迎える日です。
彼らへの私からのメッセージはシンプルです。皆さんは経験豊富なチームメイトから多くを学び、私たちのカルチャーのなかで成長していきます。そして、クボタ、家族、そしてオレンジアーミー(筆者注・ファン)にとって、『誇りの広告塔』となる存在になっていくでしょう。
忘れてはいけないのは才能やチャンスはあくまでスタート地点に過ぎないということです。それらは未来への扉を開いてくれますが、本当に大切なのは自分自身の成長に責任を持ち、毎日ベストな状態の自分自身を目指し続ける意思と規律です。
スピアーズへ、ようこそ」
端正なフレーズに出席者が息をのんでいると、岩爪氏が和ませる。
「僕のコメントでは、ないですからね」

ここからは新人たちが、報道陣の質問に答えた。ロケティは岩爪氏のサポートのもと、日本語での質問内容をくみ取って英語で応じた。
——スピアーズを選んだ理由と同部で「倒したい」選手は。
島「フッカーとしてチャレンジするのに一番の環境だと思ったからです。憧れる、倒したい選手は、マルコム・マークス選手です」
栗原「最初は、迷っていたんですけど、何回か練習(参加を)して、すごくいいチームだなと。憧れの選手は…。これから、一緒にプレーして探していきたいです」
利川「一番、熱心に声をかけていただいたことがきっかけです。倒したい選手は、末永(健雄、フランカー)選手です」
柴田「レベルの高いチームでプレーしたかったことと、(スピアーズの)雰囲気がよかったことで、入団させていただきました。倒したい選手は、現日本代表の藤原忍選手(スクラムハーフ)です」
ロケティ「スピアーズに来られてとても誇りに思います。選手たちと一緒に仕事をするのが楽しみです。スピアーズからも日本代表として活躍している選手がたくさんいるので、私もその一人になりたいです。
スピアーズに初めてトレーニングに来た時、プロラグビーは大学ラグビーとは違う環境だと思いました。クラブに加わってから新しいスキルを学べることにとても興奮しています」
——学生時代、もともと将来の進路についてどんな考えを持っていましたか。
島「大学に入ると決めた時から、(トップレベルで)ラグビーがしたいと思っていました。そして1年生から試合に出てアピールして…という感じです。とりあえずラグビーを続けたくて、『(フォワード第3列の)フランカーやナンバーエイトだと(身長などの観点から)厳しい』といった話を大学の監督とするようになって『じゃあ、フロントロー(フッカーなどの最前列)、やってみるか』と。そうしたら、まさかクボタさんから声がかかるとは思っていなくて。いい機会をいただきました」
前川GMが補足する。
「(立命大のグラウンドで)スローイングを練習していて。結構、うまい、かなと!」
栗原「1年生の時の大学選手権(東洋大が初出場)を見て、『ラグビー、頑張ってみようかな』と」
利川「僕は大学3年生になるまで(社会人で)ラグビーをする気はなかったのですが、日本代表に選んでいただいて、もう1回あの舞台を目指したいと思って続けると決めました。そのなかで、一番熱心に声をかけて下さったのがスピアーズでした。(明大からスピアーズに入った先輩とは)決める直前にご飯に行かせていただいて、いろんなお話を聞かせてもらいました」
柴田「大学に入ってからは、将来もラグビーを続けようと思っていました。1、2年で試合に出られなかったので『無理かなぁ』と思っていましたが、3、4年で出させていただき、スピアーズさんから声をかけていただいた」
ロケティ「スピアーズに初めてトレーニングに来た時、スタッフを見て、選手たちにとても近い立ち位置で、選手を尊重していると感じました」
——明大の2人は、学生王者となったことで注目されています。
利川「スピアーズに入団した時から経歴は一切関係ない。大学1年生の頃の初心を思い出して頑張りたいです」
柴田「優勝も何も関係ない。自分に求められている役割ができるよう頑張りたいです」
——栗原選手に聞きます。前川さん曰く、最初に打診された練習参加を「2秒」で断られたとのこと。当時の心境と、考えを改めた経緯を教えてください。
栗原「えーと、(福永監督を介してスピアーズの関係者と会った時は)1年生で、(大卒後も)ラグビーを続けるという考えがまだなかったので、最初はお断りさせていただきました。ただ、その年度の(大学)選手権で、ラミンさん(当時主将の齋藤良明慈縁=現静岡ブルーレヴズ)の試合を見て、『ラグビー、頑張ってみようかな』と思って(スピアーズの)練習に参加しました」
——柴田選手はスピアーズのよさに「雰囲気」を挙げています。同じ明大の利川選手も、別な場所で似た話をされていました。
利川「年齢の上下に関係なく、色んな人から声かけてもらって、積極的に挨拶もしてくれます」
柴田「大学の頃に1回、練習に参加させてもらった時、全員が気さくに声をかけてくれました。練習も、楽しそうにやっていて、いいな、と思いました」
——島選手は誰よりも早く合流したようですね。
島「2月の頭から合流させてもらって、コンディショニングから始まり、2週目からはスクラムの基礎、ラインアウトのスローイングを徐々にやってきた感じです」

——入部後、フィールド内外で先輩たちからどんなサポートを受けていますか。
島「スキルに関してはフッカーの先輩方に位置から教わっています。安江(祥光)さんからはスクラムのトレーニングで、足の位置から、姿勢から、色々と学びました。プライベートでは近藤翔耶さん(センター)がロッカーで隣なので、話しかけてくれています」
栗原「まだ練習には参加していないのですが、ミーティングで堀部(直壮、ロック)さんなどにサインを確認させてもらっています」
利川「僕もまだ練習に入っていませんので(周りと)関わることは少ないのですけど、ユニットのミーティングでは梁川賢吉(フランカー)さんにプレーコールなどを聞いています」
柴田「古賀駿汰さん(スクラムハーフ)にサインのコールなどを教えてもらっています」
ロケティ「チーム全員がフィールドの内外で気にかけてくれます」
——それぞれの強みは。
島「ブレイクダウンでの働きです。それを活かしながら、フッカーのスキルも磨きたいです」
栗原「ラインアウトのジャンプ。安定したセットプレーができたら」
利川「コンタクトの局面。スピアーズのチームスタイル上、そこで頑張れたらなと」
柴田「パスやキックで、しっかりスピアーズの求める役割を遂行したいです」
ロケティ「私のフィジカルをボールキャリー、フィールド周りでのプレー、スクラムで活かしたいです」
——ニックネームは。もしくは、これから何と呼んで欲しいか。
島「マーシーです。これまでだいたい島と呼ばれていましたが、初めてあだ名っぽいものができました。気に入っています。(由来は)島田(悠平、フルバック)さんが、『シマ』と呼ばれていたからです」
栗原「名前で、大地です」
利川「トシです。高校の頃からそう呼ばれています」
柴田「僕は普通に、苗字の柴田です」
ロケティ「僕は、ティシ!」
明大で廣瀬らと同期だった不京大也もスタッフとしての入部が発表された。休学や海外留学を経てのジョインだ。すでにスピアーズのチケット販売などで尽力する。
岩爪広報から誘われて急きょ会見に登壇し、「5 人の同期たちに負けないように、しっかりとチームをドライブしていけるように頑張っていきたいと思います」と微笑んだ。