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【スーパーラグビー・パシフィック2026/NZ勢戦力分析・上】連覇狙うクルセイダーズ。再建に挑むハイランダーズ、原田衛加入のモアナ・パシフィカはどうだ。
昨季成長のクルセイダーズのSOリヴェス・ライハナ。(撮影/松尾智規、以下同)

【スーパーラグビー・パシフィック2026/NZ勢戦力分析・上】連覇狙うクルセイダーズ。再建に挑むハイランダーズ、原田衛加入のモアナ・パシフィカはどうだ。

松尾智規

 2026年度のスーパーラグビー・パシフィックが2月13日、ハイランダーズ×クルセイダーズのニュージーランド(以下、NZ)ダービーの対決で幕を開ける。
 今季も大会は、NZ5チーム、オーストラリア(以下、AUS)4チーム、フィジー1チーム、パシフィック1チームの合計11チームで争われる。

 開幕を目前にNZフランチャイズのチームを紹介する。今回は、南島にあるクルセイダーズ、ハイランダーズと、NZを本拠地(オークランド)として活動しているモアナ・パシフィカの3チームだ。

◆クルセイダーズ/万全の布陣で連覇に挑む。


 7連覇の翌年、2024年は大不調に陥り、9位と低迷してプレーオフすら逃したクルセイダーズは翌年、わずか1年で王者に返り咲いた。

 昨季はレギュラーシーズンでチーフスに2度負けた。しかし、決勝での再戦時は試合巧者ぶりを発揮し、スコア(16-12)以上に力の差を見せつけた。プレーオフでの戦いを知り尽くした絶対王者の復活はクライストチャーチの観客を熱狂させた。

 その勢いのまま連覇を狙うロブ・ペニーHCは就任3期目。率いるチームは今季も戦力が充実している。

2025シーズン、2季ぶりに頂点に立ったクルセイダーズ。再び黄金期を築けるか。


 SOジェームズ・オコナー(英・レスター・タイガース)、CTBリーヴァイ・アウムア(横浜キヤノンイーグルス)、HOイオアネ・モアナウ(豪・ワラターズ)、FLトム・クリスティー(英・ニューカッスル・レッドブルズ)といった能力の高い選手たちがチームを去った。それでも、もともとの層の厚さに加え、CTB/WTBレスター・ファインガアヌクがフランスからチームに復帰。さらに有望な若手がスコッド入りし、戦力は昨季以上との印象を受ける。

 FWでは、フロントロー(PR、HO)とバックロー(FL、NO8)、BKでは、SHと中盤(CTB)、そしてバックスリー(WTB、FB)と、引き続き各ポジションに代表クラス(オールブラックス/オールブラックスXV)の選手がずらりと並ぶ。

 これまでチームを支えたクリスティーが抜けたバックローにおいては、代表勢に加え、NPCカンタベリーで好調だったコリー・ケロー、ドミニック・ガーディナーといった実力者が健在だ。さらに、イーサン・ブラッカダーがバックローの全てのポジションをカバーできることから、このエリアも引き続き層は厚い。

 LO陣では、オールブラックスの主将スコット・バレットが今季は休暇(サバティカル)を選択。出場は早くともシーズン中盤以降となりそうだ。それでも、近年着実に経験を積んできたアントニオ・シャルフーンとジェイミー・ハナの2人に加えて有望な若手も控えており、大きな不安はない。

プレシーズンマッチでのSOタハ・ケマラ(写真中央)


 連覇を狙う上での鍵は、引き続き司令塔(10番)だ。昨季はタハ・ケマラ、リヴェス・ライハナの2人がようやく開花。プレシーズンマッチでも自信に満ちたプレーをしており、今季もやってくれそうな雰囲気がある。

 昨年すでにデビューを果たしているHOマヌマウア・レティウの突破力、WTB/FBマロニ・クナウェヴのスピードとキレのあるラン、FL/NO8ジョニー・リー、CTBトビー・ベルといった選手らがプレシーズンマッチで好パフォーマンスを披露した。今季初めて正スコッド入りした若手選手たちの成長も見逃せない。

 4月下旬から新しいスタジアムをホームに戦うクルセイダーズ。充実した戦力を土台に、連覇へ向けた準備は整っている。

Super Rugby Pacificの公式『X』より

●注目選手: SHルイ・チャップマン

 多くの注目選手がいる中で、昨年に引き続き新加入のSHにスポットを当てたい。昨季、NPC(NZ国内州代表選手権)カンタベリーで9番を背負い、優勝に貢献したのがチャップマンだ。ボール捌き、冷静な状況判断、キックの精度に優れるだけでなく、ディフェンスの強さも兼ね備えた、安定感のあるSHだ。

 実は2023年、負傷者のバックアップとしてクルセイダーズで1試合だけ出場経験がある。その後は順調とはいえない時期を過ごしたが、今回ついに正スコッド契約を勝ち取った。

 代表経験を持つミッチェル・ドラモンドをワイダー・トレーニング・スコッドに押しのけたことからも、首脳陣の評価の高さがうかがえる。ノア・ホッザム、カイル・プレストンといった近年代表入りを果たしたSHたちと、ポジション争いに挑むチャップマンの今季は見逃せない。

NPCカンタベリーでの活躍が認められたSHルイ・チャップマン


◆ハイランダーズ/再建に挑む。鍵を握るのは今季も司令塔。


 昨季は、序盤はまずまずなスタートを切ったものの、主力の負傷なども重なり失速した。4連敗後に白星を挟むも、そのあとは6連敗。まさかの最下位フィニッシュという屈辱のシーズンとなった。

 オールブラックスの次期指揮官の有力候補で注目を集めるジェイミー・ジョセフHCは、今季も積極的に補強に動いた。ブルーズからベテランPRアンガス・タァヴァオ、アルゼンチン代表LOトマス・ラバニーニ、ブランビーズとフォースで経験を積んだSO/CTBリースジャン・パシトアを獲得した。
 特にLO陣は、ミッチ・ダンシアとファビアン・ホランドの2人に負担がかかっていただけに、経験豊富なラバニーニの加入は、セットピースとフィジカルの両面で大きな上積みとなる。

アルゼンチン代表LOとして実績のあるトマス・ラバニーニ


 層の薄くなったCTBでは、プレシーズンマッチ2試合でWTBのジョナ・ロウがアウトサイドセンター(13番)で起用され続けている。今季、この配置転換が一つの選択肢として機能するかが注目される。
 加えて、新加入のパシトアがどこまで存在感を示せるかも重要なポイントだ。

 バックスリーは充実している。
 昨季ブルーズから加入したWTBケイレブ・タンギタウは開幕から強烈なインパクトを残し、昨年末のオールブラックスXVでも存在感を発揮した。今年は代表入りも見えてくる。
 ジョナ・ナレキとの両翼に、最後尾のFBにはラトゥマイタヴキ・ニープケンス。この3人が軸となる布陣になりそうだ。さらに、フィン・ハリー、新加入のスタンリー・ソロモンも出場機会をうかがう。

 FW陣は、補強により昨季以上に厚みが期待され、接点での強度向上が見込まれる。ただし、チーム全体の力を結果につなげるためには、BK陣、特に司令塔(10番)のパフォーマンスが鍵となる。
 SHは、昨年U20ニュージーランド代表とNPCオタゴで評価を高めたディラン・プレッジャーがシーズン前、膝に大怪我を負って今季絶望の見込みとなった。代表経験のあるフォラウ・ファカタヴァへの負担は大きくなりそうだ。

 昨季も定まらなかった10番のポジションは今季もキャメロン・ミラーとテイン・ロビンソンの2人が軸になりそうだ。決定力のあるバックスリーを擁するだけに、司令塔が安定すればプレーオフ進出も十分可能だ。最低でも最下位脱出は、ファンの為にも欠かせないシーズンになる。

Super Rugby Pacificの公式『X』より

●注目選手:SO/FBアンドリュー・ニュースタッブ

 2025年のNPCカンタベリーの優勝メンバーのニュースタッブは、長くセブンズを主戦場としてきた。2017年からオールブラックス・セブンズで活躍し、2020年の東京オリンピックでは銀メダルを獲得。ブロンコテストでは、4分11秒前後のタイムを記録しており、セブンズ仕込みの運動能力の高さも魅力だ。

 本格的に15人制でプレーしたのは2025年のNPCから。主にFBとして起用されていたが、シーズン終盤には10番を任された。

 キックを軸とする従来型の10番とは異なり、セブンズ仕込みの長いパスと鋭いランでスペースを巧みに突くランプレーが最大の持ち味だ。ハイランダーズの長年の課題だった10番のポジションに、新たな風を吹き込む可能性を秘めている。

司令塔として期待がかかるアンドリュー・ニュースタッブ。写真はNPCカンタベリーでのプレー時のもの


◆モアナ・パシフィカ/アーディ不在でもプレーオフへ挑む。


 チーム結成4季目となった昨季は、確かな成長を印象づけた。開幕から接戦を落として3連敗と出遅れたものの、粘り強く戦い続け、第7節では敵地でクルセイダーズに45-29と勝利。まさにアップセットだった。最終的には勝敗で並んだブルーズに勝ち点で及ばず7位に終わり、初のプレーオフ進出はならなかったが、チームとしての自信と存在感を大きく高めるシーズンだった。

 今季最大の課題は、昨季加入し、ピッチ内外で絶対的な存在だったアーディ・サヴェアの不在だ。2回目のサバティカルを利用してコベルコ神戸スティーラーズへ移籍。プレーだけでなく精神的支柱を欠くことになる影響は小さくない。

 今オフも主力の流出は続いた。FLシオネ・ハヴィリ=タリトゥイ(清水建設江東ブルーシャークス)、CTBダニー・トアラ(仏・オヨナ・ラグビー)、WTB/FBカイレン・タウモエフォラウ(チーフス)らをはじめ多くの選手がチームを去った。 

トレーニング時の原田衛。Moana Pasifikaの公式『Instagram』より


 一方で補強も着実に進めた。チーフスから移籍したLO/FLジミー・トゥポウは、渾身のプレーに加え、リーダーシップでもチームに好影響を与える存在だ。さらに元オールブラックスのSHオーガスティン・プルとCTBナニ・ラウマペの加入は、経験値を持ち込み若手に良い刺激となるだろう。
 また、日本代表のHO原田衛が東芝ブレイブルーパス東京を退団し、スーパーラグビーに挑戦。フィジカルの激しい舞台で、どこまで通用するかも見どころだ。

 毎年、選手の入れ替わりが激しいチームだけに、真の評価はシーズンが始まってからとなる。ただ、LOトム・サーベッジ、FLミラクル・ファイラギ、SHジョナサン・タウマテイネ、SO/FBウイリアム・ハヴィリ、CTBラロミロ・ラロミロ、そしてCTB/WTBジュリアン・サヴェアといった経験豊富な選手たちが残っているのは心強い。
 この顔ぶれを見れば、「2026年は経験と若手のバランスが良い」という指揮官のタナ・ウマガHCの言葉にも説得力がある。

 昨季は、司令塔のパトリック・ペレグリーニがBKの展開に多彩さを持ち込み、得点力向上につなげた。今季もFWが奮闘すれば、CTBを中心とした頼もしいBKが活き、試合はさらに面白くなるだろう。
 昨季の上位チームを何度も撃破した快進撃を、今季も再現できるか。アーディ不在という状況でも、初のプレーオフ進出を現実のものにしたい。

Super Rugby Pacificの公式『X』より

●注目選手: FLミラクル・ファイラギ

 アーディ不在の今季、主将に指名されたのがファイラギだ。フィジカルの強さと運動量を兼ね備えたプレースタイルは、アーディにも引けを取らない。
 強烈なボールキャリーとタックルに加え、ラインアウトでも貢献できる万能型のバックロー。さらなる経験を積むことでワールドクラスへと成長する可能性を秘めている。
 ファイラギが前に出れば、チームも勢いに乗る。モアナ・パシフィカの2026年を象徴する存在となれるか注目だ。

今季はキャプテンとしてチームの先頭に立つミラクル・ファイラギ



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