全国女子選手権の決勝戦が近づいてきた(2月1日/秩父宮)。
ファイナリストが決まったのは1月17日だった。その日おこなわれた準決勝で日本経済大を64-19と圧倒したYOKOHAMA TKMと、PEARLS(三重)に36-17で勝った横河武蔵野アルテミ・スターズが頂点を争う。
準決勝2つは、リーグワンの試合と同日、同じ会場で実施された。
TKMの試合はニッパツ三ツ沢球技場で、横浜キヤノンイーグルス×埼玉パナソニックワイルドナイツのあとにキックオフ。4242人が観戦した。
アルテミ・スターズはコベルコ神戸スティーラーズ×リコーブラックラムズ東京が戦った後に試合に臨んだ。こちらは1300人の観客だった。

関東対決となった決勝も盛り上がりそうだ。
両チームが全国大会を決めた1月4日の関東女子大会の最終節は小田原市城山陸上競技場で2試合(アルテミ・スターズ×日体大ラグビー部女子/19-10、TKM×東京山九フェニックス/19-14)が続けておこなわれ、2試合目がおこなわれる時には875人の観客がお正月気分の残るスタンドを賑やかにしていた。
同日は試合の模様がJスポーツで放映され、両試合の解説者は、それぞれ鈴木彩香さん、鈴木陽子さんと、サクラのジャージーを着て世界と戦った経験のある人たちが務めた。
また、マッチオフィシャルも女性でチームが組まれ、森町瑞季レフリー、牧野円(つぶら)レフリーがそれぞれの試合でレフリーを務めた。

全国女子選手権の準決勝でもレフリーを務めたのは神村英理さんと、牧野円さんだった。
神村さんは2023年の関西大学Aリーグの関西学院大×摂南大で、女性レフリーとして関西の男子トップカテゴリーを担当した。
現在は日本ラグビー協会のB級レフリーだ。旅客機のパイロットをしていることでも知られる35歳だ。
牧野さんは2025年度の関東大学リーグ戦1部、10月12日におこなわれた東海大×関東学院大で、関東で初めて男子トップカテゴリーの笛を吹いた女性レフリーとなった。
その試合後には「スピードの速さもありますが、公式戦ということでチーム同士の熱量が非常に高いと感じました」と話し、さらに高いステージを任されるように、もっと経験を積み、知見を増やしていきたいとした。
得点に絡むシーンやゴール前では両チームの激しさがより増した。そういう局面での「自分の見極めや判断に甘さを感じました」とベクトルを自分に向けた。
「スクラムやブレイクダウンで、チームのやりたいことを引き出せたと思う一方で、もっと勉強が必要だと感じたところもあったと思います」
牧野さんは31歳。関東ラグビー協会公認B級レフリーで、同協会に15人いるパネルレフリーの中で唯一の女性レフリーだ。
レフリーを志したのは大阪教育大に入学した1年生時だった。

同大学に学んだ4年間は「選手8割、レフリー2割」(本人談)だった(ポジションはFL)。より力を入れたのは2017年に東京学芸大の大学院に入ってからだ。
「当初は教員になろうと思っていたので、いずれ必要になるだろう、という気持ちからでした」
しかしラグビーと深く付き合うにしたがって、新たな気持ちが湧いた。
プレーする中で、試合は選手だけで成り立つものではないとあらためて感じた。「自分がレフリーとして関わることで、女子ラグビーにより貢献できるのではないか」と。
絶対数が足りない。選手のレベルに追いついていない。レフリー界が抱えるそんな問題点にも目が向いた。
さらに、女子ラグビーだけにとどまらず、その枠を超えてトップレベルに挑戦したいと向上心も高まった。
2021年、加古大樹レフリーと結婚。家で一緒にお互いが担当したものも含め、いろんな試合の映像を見ながら意見交換をすることも多い。「喧嘩になることもあります」と笑う。
ジムに行ったり、トレーニングの時間を共にすることもある。レフリーとしての感覚を高められる場所が、いろんなところにある。

上のステージにつながる道へ進むまでに時間はかかったが、期待される立場にいる。しかし、「信頼されるレフリーになることが目標」と足元を見つめる。
「欲を言えば、女子ラグビーワールドカップに関わりたい夢はあります」と控えめに話すも、いちばんの願いは「選手たちがやりたいことができるようなレフリングをすること」。
「女性レフリーということで注目されることもありますが、試合が終わった時、『そういや、きょうのレフリーって女性だったっけ』という感じで、それだけ選手もチームも、観客も熱中できるのがベストだと思っています」
厳しい言葉を受けることも少なくない。それでも、試合が終わった後に選手やチームから感謝の気持ちを伝えられるとまた、次の一歩を踏み出せる。
「いちばんいい場所でラグビーに関わらせてもらっています。(大学トップなど)このレベルで選手としてプレーするのは、性別的にもレベル的にも私には無理です。その中で、試合を成立させる責任とやりがいを強く感じています」
女子ラグビーの認知度がどんどん高まっている。その理由の中のひとつには、男子以上に、一人ひとりの個性や歩んできた道、バックグラウンドが違う点がある。
2月1日には、秩父宮ラグビー場で第12回全国女子選手権大会のファイナルがおこなわれる。
昨秋のワールドカップに出た選手たちが何人もいて、その日のマッチオフィシャルたちも、きっと情熱的。いつか日本にやってくる女子ワールドカップに向けて、いまから推しておいて損はない。
