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福岡はヒガシの1強じゃない。弓削輝流斗[筑紫]
167センチ、93キロの弓削輝流斗。つくしヤングラガーズ出身の2年生。(撮影/松本かおり)

福岡はヒガシの1強じゃない。弓削輝流斗[筑紫]

田村一博

 毎年1月3日、花園ラグビー場のスタンドは多くの観客で埋まる。全国高校大会の準々決勝4試合がおこなわれる。いつもすべての試合が熱戦となる。

 この舞台に立てるのは全国で8校だけ。狭き門をくぐり抜けてきた各チームは、激戦を制してきた。元日の対戦相手から、「俺たちの分まで頑張ってくれ」と思いを託されている。

 1月1日におこなわれた8試合の中で印象に残ったのが筑紫のプレーだった。東海大相模に17-33と敗れて花園を去るも、先に12点を先行。サイズとパワーのある相手に逆転負けを喫したものの、最後まで前へ出る出足、低く刺さるタックルを見せ続けて奮闘した。

 1番の弓削輝流斗(ゆげ・きらと)もフル出場と60分間、フルに動き回った。
 12-7で迎えた後半5分には、自身がスローイングしたラインアウトからモールを組み、押し切って、自らインゴールにボールを置いた。

弓削輝流斗の憧れの人は、筑紫OBでもある静岡ブルーレヴズのHO日野剛志。同じフロントローでスローワー。「以前、練習に来てくださった時にアドバイスももらいました」。(撮影/松本かおり)


 スコアを17-7とする貴重なトライとなったが、チームはその後、大きなFWが本領を発揮し始めた東海大相模に8分、12分、21分、30分と4連続トライを許してしまう。
 弓削は「前半はしっかりと戦えました。後半もずっとタックルしましたが、勝てませんでした。悔しいです」と試合を振り返った。

 福岡県第2地区代表として、5年ぶりの出場を果たした筑紫。1回戦で城東(徳島)に33-5、2回戦で聖光学院(福島)に72-0と2勝を挙げ、部史上初の3回戦進出を果たした。
 弓削は「いままでやってきたことは出せたかな、と思います」と話した。

 積み上げてきたものを出した。東海大相模戦でも「モールで取り切れました。サイン(プレー)も使えました。FWもBKもそれぞれ勝負できました」。
 しかし勝てなかった。
「サイズの差を感じました」と167センチ、93キロの弓削は言った。

 この日、トイメンとなった相手の左プロップは、先発が182センチ、110キロの吉田虎太郎で、後半2分から入替で入った伊丸真生が189センチ、114キロと、自分より随分大きな選手たちだった。
 まともに組み合うと反則を取られそうだから「受け流した」。マイボールキープに全力を注いだ。
 全国レベルのサイズとパワーを体感し、「1年かけて、相模のようにデカくなれるよう頑張りたいですね」。

敗れるも、魂のタックルは健在だった。(撮影/松本かおり)


 弓削は2年生。筑紫であと1年、自分を高め、チーム強化に注力できる時間が残されている。
「2年生で花園に出て、他のチームとは違う経験値を得られました。それを生かしていきたい」

 プロップながらラインアウトでスローイングをおこなう。「リフティングが下手なので」とその理由を自虐的に話すも、「相模の全国レベルの高さに苦戦したので、それを越えるスローをできるようにしたいし、スクラムでも、フィジカルの強い相手に差し込めるようにしていきたい」と高い所を見ている。
 最上級生となる1年を悔いなく過ごしたい。

 小4時、いまもチームメートの池上璃空(SH)が誘ってくれたことをきっかけに、つくしヤングラガーズに入った。
 高校進学時に筑紫を選んだのは、中2の時に見た花園予選、福岡県大会の準決勝で同校が修猷館に逆転勝ちした試合を見て心を動かされたからだ。
「最後まで諦めない姿勢に憧れました」
 いま、そのチームの一人としてプレーし、聖地の芝も踏むことができて幸せだ。

 新シーズンに向け、「この悔しさを糧に頑張って、新しく入ってくる新入生や、今回試合に出られなかった2年生、1年生に経験を伝え、チーム全体を底上げできれば」。
 今大会で3試合に出場(1戦はベンチスタート)した者として、その体感を仲間たちに還元する責任があると考えている。

 今回は105回目の記念大会で、福岡県には花園への出場枠が2つ与えられた。しかし来年以降は1校に戻る。再び聖地のピッチに立つのは、全国トップレベルの東福岡に勝つことが条件となる。

写真右はSO草場壮史主将(高校日本代表)。チームを心身両面で牽引した。(撮影/松本かおり)


 弓削は、自分たちの目の前にそびえ立つ大きな山について、「いいライバルというか、自分たちが強くなれる存在」と言う。
「この花園では(対戦が実現せず)ヒガシを倒すことはできなかったので、来年(新年度)、県内で頑張ります。(福岡は東福岡の)一強と言われたりするので、そんなことはないぞ、と筑紫をアピールしていきたい」

 そのために必要なのは、2勝の喜びではないと肝に銘じる。
「出し切れたところもありますが、来年もあるので、今回負けて悔しい気持ちを絶やさずにやっていくことが大事だと思っています」。

 筑紫のラグビーを「魂のタックル。どんな状況でも相手をひっくり返すタックルです。大きな相手でも心で勝負して、人間力で勝つラグビー」と信じている。
 1月25日には、全九州新人大会につながる県の新人大会での初戦が待っている。そこから自分たちの色を強く出して戦う。




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