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ジャパンラグビーリーグワンで昨季4位の埼玉パナソニックワイルドナイツは12月14日、東京・味の素スタジアムで2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京との開幕節に挑む。
リザーブのフッカーに入ったのは佐藤健次。身長177センチ、体重105キロの22歳だ。
2024年度は早大主将として大学選手権で準優勝を果たし、新加入の埼玉パナソニックワイルドナイツでアーリーエントリー(2025年1月19日〜)の立場ながらプレーオフを含め計13試合に出場。6月以降は、学生時代から選ばれていた日本代表の一員として活動した。
夏までは途中出場やメンバー外が多かったが、故障者続出のもと臨んだ欧州遠征では南アフリカ代表戦、アイルランド代表戦、ウェールズ代表戦、ジョージア代表戦の全4試合に先発。1勝3敗と洗礼を浴びながらも、持ち味の突破力とフィジカリティをアピールできた。

12月9日、熊谷市内の拠点で取材に応じた。
——11月24日に代表キャンペーンを終えて欧州から帰国。その後は。
「オフをもらったので、いまのところはいい感じに進んでいます。ちゃんとチームに合流したのは宮崎(11月30日以降の合宿)からで、その前からちょっとずつ身体を動かしたり、ボールゲームに混ぜてもらったり。休みすぎるとご飯とかもいっぱい食べて、腐っちゃうので、(適度に)練習して、制限(節制)していたほうがいい」
——わずかな休みはどう活用しましたか。
「帰ってきて2日は、何していたかな…。あ、買い物をして。服とかです。代表期間中、お金をあまり使っていなかったので。
2~3日後はもうクラブハウスで動いていた。旅行に行くとかは、していないです。何か、あんまり面白くないんですけどね、人生的には。ラグビー、頑張ろうかなと思っています」
——秋の代表戦。いかがでしたか。
「プレータイムをもらえることが多かった。スタメンで出た南アフリカ代表戦からジョージア代表戦まで、1試合、1試合、気づかされることがありました。自分の『ここが通用する、もっとここ伸ばさなきゃいけない』がすごくはっきりとわかりました。
スクラムは徐々によくなってきました。ラインアウトの成功率もよかった。アタックでは、誰かが抜けた後のボールに関わっていない時の動きで(好感触)。そこから(サポートにより)いいシーンがあったと思うので、強みにしていきたいです。
言葉にするのは難しいですけど、僕のイメージでは、代表戦は成長する場というより、自分の持っているものを出す場みたいな印象です。ひとつひとつの試合にチャレンジして、持っているものは、出せたのかなと思います」

——よいボールキャリーがみられました。
「成長しなくちゃいけないボールキャリーも何個かありました。ただ、通用する場面もあった。ポジティブに考え、強みにしていきたいです」
——現地時間11月15日、カーディフでウェールズ代表に23-24と逆転負け。現地報道写真では、佐藤選手が悔し涙を流すシーンが印象的でした。
「いやぁ…。スクラムで反則をしたり、ジャッカルで(ボールを)獲り切れる場面があったのに獲り切れず、その流れでペナルティになったり…。相手のダミーの選手とすれ違って、いいタックルに入れずにトライ…(前半6分のことか)。重要な場面に全部、関わって、接戦を落としてしまったので、悔しさはありました」
——2027年のワールドカップオーストラリア大会に向けて厳しい練習をしながら、毎週、上位国と対峙してきました。
「1試合 、1試合、1日、1日、自分のベストを(出して)成長し続けるのをポリシーのひとつとして取り組んできました。また、うまくオンとオフを切り替えられたので、最後まで切れずに——ラスト2試合については80分——戦えたのかなと。同期の子がいっぱいいたので、一緒にご飯やカフェに。それでリラックスできました」

——あらためて、今回の厳しいロードを経験して思うことは。
「コンタクトエリア、セットプレーの強度は自分のなかで大きく成長できた。ここは今後、活きてくる。また苦しい状況というか、国も違って、海外を転々として、ご飯も合わないといったことがあるなか、あまりパフォーマンスを落とさず皆で戦えたのは、すごく自信になりました」
——食事、難しかったですか。
「現地にいる日本人の方に作っていただいたので僕は食べられました。というか、見ての通り、僕は基本、何でも食べられます! あと、そういう(食の進まない)選手はいて、体重も減ってきていたんですけど、そこは、同期であおり合っていました。(特に)小村(真也)と植田(和磨)と土永(旭)です。この4人はずっと一緒にいました」
——厳しい状況を乗り切った。
「怪我人も多く、グラウンドも雨でぐちゃぐちゃ。エディー(・ジョーンズヘッドコーチ)さんもやりたいことをやれなかった部分があったと思うんですけど、そこで、戦えた。(負傷離脱者がかさんだため、実戦練習では)フッカーやスクラムハーフ(の控え)がバックスに入るなど、皆がチームマンに徹していました」
——その過酷な条件のもと、現地時間22日にジョージア代表との最終戦を制したわけですね。ラストワンプレーで25-23。
「いやぁ…。気持ちよかったです」

上質なシリーズを経て、いまは実質1年目の国内シーズンを見据える。
「代表とチームとでは(動きが)結構、違う。ラインアウトで同じ場所でジャンプするのでも、ジャパンはゆっくりしたボールで、パナソニックでは速いとか、その逆とか…。アジャストしたいです。
去年はアーリーエントリー。試合に出ていたというより、出させていただいていた。完全に戦力になっていたかと言えば、そうではない。今年はチームの勝利に貢献できる選手に成長していけたら。チームは優勝しか目指していない。そこへいい影響を与えていきたいです」
——坂手淳史主将との定位置争いへ。
「リザーブでも先発でもチームの勝利に貢献するだけ。でも、スタートのほうがわくわくします。坂手さんはフッカーとしてもリーダーとしても人間としても素晴らしい。しっかり見習って、信頼を置いてもらえるようになりたいです」