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世界ランク1位のラグビー南アフリカ代表で87キャップ(代表戦出場数)を得たジェシー・クリエルが、加入7シーズン目となる日本の横浜キヤノンイーグルスで主将を務めることとなった。
ニュージーランド出身のレオン・マクドナルド新ヘッドコーチに推された。
指揮官はこうだ。
「経験のある選手をリーダーにしたかった。彼は日本人とつながりを保つための努力をしていて、全員とコネクションを保っています。何よりトレーニング、リハビリといった習慣がトップレベル。誰よりも早くジムやグラウンドに来ていて、皆の手本になっています」
就任が発表された11月、本人は秋の代表ツアーに参加していた。大役拝命の所感を述べたのは、クラブ合流後の12月10日。都内の拠点で報道陣に話した。
今年はナショナルチームでもゲーム主将を任されたことがあった(3試合)。その時の心境を「最初にアナウンスされた時はさすがに緊張しました。ただ、周りに他の強いリーダーがいた。心強いです」と明かした。仲間へのリスペクトを露わにする身長186センチ、体重91キロで31歳のアウトサイドセンターは、イーグルスで船頭役となることへも「とても光栄です」と頷いた。
「周りによいリーダーシップグループがいることは幸運です。僕の役割は(以前と)そこまで変わりません。他のリーダーからのサポートもある。気楽にできると思います」

——前主将の梶村祐介選手とはどんなやり取りをしていますか。
「梶さんからはいまも多くを学んでいます。彼もリーダーシップグループに入っています。サポートを受け、さらに学び続けることが大事です」
——イーグルスは体制を刷新しています。
「レオンさんはクリアな目的を持っている。そのもとでプレーするのが楽しみ。僕らは(プランを)遂行できるように頑張ります」
——代表期間中も、マクドナルドさんとオンラインで面談していたようです。
「いい会話ができました。彼はやりたいことがクリアで情熱を持っている。力強いコーチです。私はいつも心の中にイーグルスがあり、それもあって7年目に突入しています」
——タフな代表戦を経て、いまのコンディションは。
「痛みのある部位はありますが、徐々に復調。12月5日のプレシーズンマッチにも入れました(東京・キヤノンスポーツパークで三重ホンダヒートに33-26で勝利)。チームの一員となれてきています。たくさんラグビーをしてきましたが、もう開幕への準備はできています」

加盟するジャパンラグビーリーグワンの初戦を12月14日に控える。神奈川・日産スタジアムで昨季12チーム中5位の静岡ブルーレヴズとぶつかる。
前年度のイーグルスは8位と苦しんだ。もっともクリエルが加わる直前の2018年度は、旧トップリーグで16チーム中12位とさらに低迷していた。
その後、指導陣の交代や効果的な補強などで躍進。一昨季まで2季連続で4強入りを果たした。進歩のさなか、クリエルは強さ、速さ、勤勉さで信頼された。
代表活動で欧州にいる間も、イーグルスを思っていた。
現地時間11月1日。ロンドンのウェンブリースタジアムで61-7と破った日本代表に、普段のチームメイトが2人いた。そのうちひとりは、左右のプロップをこなす祝原涼介だった。祝原の証言。
「南アフリカ戦が終わった直後、ウェンブリースタジアムで『イーグルスは戦術面でもっと…』という話をしてきました。(イーグルスからジャパンに呼ばれた石田)吉平とも、そういう話をしたと聞きました」
それは事実かと問われたクリエルは、「オフコース」と微笑む。代表にまつわる問答にも応じる。

——まず、日本代表戦について。
「日本代表にイーグルスのチームメイトを迎えて対戦できたことは特別な経験でした。イワ、キッペイのハードワークは誇りに思います」
——それにしても、あの日の南アフリカ代表はとてつもなく強かった。
「日本代表を下の相手とは見ていませんでした。スプリングボックス(南アフリカ代表)に多くいるリーグワンの参加選手が、日本のスキルや速さを皆でプレゼン。その情報があったため、よい準備ができました」
——あの日、スプリングボックスのリーグワン勢が、日本でプレーしている時よりも動きが素晴らしかったような。
「本当にそうですね。それぞれに、(普段の)チームメイトを相手にいいプレーをしたい気持ちがありましたね」
ウェンブリーでの交流について、祝原はこうも付け足す。
「常にラグビーのことを考えていて、(仲間内の挨拶でおこなう)イーグルスポーズもしてきました。チームマンです。だから、皆、ついていくと思います」

イーグルスへの愛は不変だというクリエル。かつては「優勝するまでここを辞めない」とも宣言していた。
継続的に日本語のレッスンも受けていて、自身の語学力を「まぁまぁです。毎日、お勉強。ちょっと難しいですね」と日本語で評した。
ミーティングで同僚が話すことも、ほとんど理解できる。
「むしろ、そうならなければいけないと思っています」
——自身からの発言も日本語で。
「ケースバイケース。熱い試合の最中は難しいですが、できるだけ日本語で」
——昨季、リコーブラックラムズ東京に入ったニュージーランド代表89キャップのTJ・ペレナラ新主将は、街角で日本人に話しかけるなどして会話力を高めています。
「(日本語で)TJも、本当に上手ですね。頑張ります、日本語。(ここからは英語で)できるだけ日本語を学ぶ姿勢は持っています。ただ、ラグビーでパフォーマンスを発揮することが第一優先です」
語学に関する話が一段落すると、あらためて国際シーンのやり取りに移った。
質問は、南アフリカ代表のシヤ・コリシ主将が日本行きを検討しているという現地報道についてだ。
自然なイントネーションで応じた。
「知らんけどね。わからない」