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【Just TALK】「日本代表でプレーすることがひとりひとりの目標であるべき」。リーチ マイケル[東芝ブレイブルーパス東京]
1988年10月7日生まれの37歳。日本代表キャップ92。(撮影/松本かおり)
2025.12.05
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【Just TALK】「日本代表でプレーすることがひとりひとりの目標であるべき」。リーチ マイケル[東芝ブレイブルーパス東京]

向 風見也

 ラグビー日本代表92キャップのリーチ マイケルは12月2日、都内でジャパンラグビーリーグワンのメディアカンファレンスに参加した。

 現在2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京の主将としての決意のほか、12月3日にプールステージの組分け抽選会を控えた2027年のワールドカップオーストラリア大会への展望も口にした。

 身長189センチ、体重113キロで37歳の第3列は、今秋の代表キャンペーンでは現地時間11月8日のアイルランド代表戦(●10-41)で負傷。途中離脱を余儀なくされていた。

 それが最初の話題となった。

——怪我でチームに戻ってから、新シーズン開幕への準備を進めているようですが。

「リハビリから始まって。順調です。(痛みの詳細は)言えないです。帰るか、帰らないかは(代表)チームの判断。(予定より)1 日長くチームといて(日本に)帰ってきました」

——他の選手には残留を求められたようですが。

「まぁ、少しは。いろんな選手が。誰かは言わないです。まぁ、すごくいいチームになってきているし、これから楽しみです。来年はテストマッチも増えるし」

リーグワン2025-26の開幕戦では埼玉パナソニックワイルドナイツと戦う。日本代表ではチームメートのディラン・ライリーと。(撮影/松本かおり)


——秋の対上位国5連戦は1勝4敗。収穫は。

「昨シーズンに比べたらディフェンスはよくなっています。スクラムも、ラインアウトも。自分たちの戦い方のバランスも少しずつ見えてきている」

 11月24日、日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチは「経験値があり、フィットしていて、いますぐ来られる選手がいれば是非呼びたいが、どこにいるのか」と発言した。若手主体のいまのスコッドに、現在辞退および選外となっている熟練者を入れるか否かについて聞かれた時だった。

 この話題について、まさに「フィット」しているシニアプレーヤーのひとりであるリーチは、こう応じた。

——リーチさんにとって「日本代表にフィットする」とはどんな状態を指しますか。

「日本代表を強くしたい(思い)。それだけです。日本代表って、自由時間、家族との時間と、いろんなことを犠牲にしないといけない。(故障などの)リスクもあるし。それでもプレーしたい選手を選ぶ、ということかなと思います。

 日本代表でプレーすることがひとりひとりの目標であるべき。そのためにはチームを憧れの環境にしないといけない」

——しばらくスコッドから離れていて、復帰を希望している選手が戻ることについては。

「戻りたい選手はもちろんいます。そういう人は、積極的にエディーさんと話してどんなことにフォーカスしたら選ばれるか(を聞いてほしい)。経験を持っている選手には、どうエディーさんにアプローチすべきかを考えてほしいです。

 ただ、言えるのは、トップのトップでプレーするとメリットが多い。僕は37歳になって、新しい刺激がほしい。高いレベルのラグビーをやり続けることでレベルアップできる。

 今回のヨーロッパ遠征。自分のキャリアにとってよかった」

——イングランド時間11月1日、遠征先のロンドンでワールドカップ2連覇中の南アフリカ代表に7-61で敗れました。

「世界1位のチームと対戦できたことで、自分の練習の甘さ、考えの甘さを感じました。

 自分が『これでいい』と思っていたところが全然、足りていなかった。全てを圧倒された。タックル回数、オーバー、ボールキャリーの数は相手チームよりも上回っていましたが、1個、1個が弱い! (11月8日にぶつかった)アイルランド代表の選手が5回ボールキャリーをするとしたら、5回とも前に出られている。僕は10回キャリーできたとしても前に出られているのは3回とか。そういう、差があって。回数じゃなく、質にこだわってやらなきゃいけないなと。

感じることの多かった11月1日の南アフリカ戦。(撮影/松本かおり)


 コンタクトフィットネス(の強化)をもっと激しくやらないとだめ。そのために、専門のタックルダミー、ラックダミー、タックルをされても痛くないタックルスーツと(足につける)パットを、ニュージーランドから取り寄せ中です。25万円です。送料別!

 それを東芝に置いて、コンタクトフィットネスやブレイクダウンについて怪我をしないでもっとハードにできる。練習メニューを考えて、強い若手をパートナーにしてやりたいです。早く来てほしい。来週中には届くかな。

 あとは、首を鍛えるマシンも買いました。F1ドライバーがつけるようなやつ。アメリカから、安くなって8万円。これもクラブハウスに置いておきます。まだ薫田(真広)社長の許可をもらっていないですけど。メルカリでソーセージ機(ソーセージ製造の機械)を買いました。でっかいの。

 もう、カードの請求書が凄いです。たぶん、奥さんがびっくりします」

——ここからはブレイブルーパスについて。リーチさんはどんな復帰計画を描いていますか。

「開幕戦に向けて調整中です。チームのトレーニングはしています。今週はバイウィーク(休息週)ですが」

——3連覇へ。

「自分たちのスタンダードをもう1回、引き上げなくてはいけない。試合に出ていないメンバーも含め、自分たちが何を目指しているのかを考え直してやらないと」

——プレシーズンマッチでは反則が多い印象もあります。

「この間、ミーティングで厳しく言った。少しずつはよくなってきています」

——フッカーで副将だった原田衛選手、ロックで日本代表の主将も務めるワーナー・ディアンズ選手がスーパーラグビー挑戦のためチームを離れました。

「ロックはカバーできているかなと。(リコーブラックラムズ東京から)マイケル・ストーバーグが入ってきた。33歳。経験もリーダーシップもある。ラインアウトのマネジメントのレベルが高い。東京サントリーサンゴリアスから来たカラム・マクドナルドのフィジカリティは、東芝に合っています。

 フッカーでは花園近鉄ライナーズから獲ったアンドリュー・マカリオが、リーダーシップの部分をカバーできています。33歳でいろいろな経験があり、フロントロー全体をカバー。その辺は助かります」

——新加入したウイングのティージェイ・クラーク選手は。

「左足が武器になる。アイルランド代表のジェームズ・ロウみたいに、(自陣ゴール前左端などの)スクラムからスタンドオフの位置に入って(防御の圧力を受けずにキックで)陣地を脱出できる。チームにおいてレフティーは重要です」

——若手の注目株は。

「東海大出身のアフ・オフィナ選手(フランカー)がよくなってきている。あとはヴェア(・タモエフォラウ=プロップ)選手、(ナンバーエイトの木戸)大士郎選手、石岡玲英選手(=ウイング)が少しずつ出てきている。去年よりもいろんな選手の出番が増えると思います。先シーズンは34人で戦っていた。それが40人になるのが理想です」

——一方、リーチさんも前年度に続き全試合出場を目指します。

「(後輩に)出てきてほしいですけど、譲るっていう意味じゃないです。練習量、試合のインパクトで勝っていかないと。出続けるのが大事。それには経験だけではなく、身体の持っていき方も大切。去年よりもパフォーマンスを上げないと」

——2年連続MVPのリッチー・モウンガ選手は今季限りで退団しますが。

「僕はまだ合流したばっかり。今シーズンは(代表活動のため)ほとんど東芝のグラウンドにいられなくて。そんななか、彼に『チームはどう?』と聞けば『大丈夫』と。でも、周りは厳しくやらないと、勝っていけない。

 周りのチームは、思っているかもしれない。『リッチーありき。いるかいないかで全然違う』と。確かに彼が凄すぎて頼ってしまうところもありますが、リッチーがいなくても勝てるように僕が裏で頑張らないと」

日本ラグビーを自然体で引っ張る人。(撮影/松本かおり)


 話をした翌日、オーストラリア大会の序盤にジャパンが戦う相手が決まった。フランス代表、アメリカ代表、サモア代表の3か国だ。

 この決定の前日、リーチは「オールブラックスと(同組に)なったらいいな」。自身の出身国のナショナルチームであり、大会で過去3度優勝と格の高いニュージーランド代表とぶつかるのを熱望していた。

——その心は。

「僕が出られたら、これが最後のワールドカップになると思います。いつか日本がオールブラックスに勝つという夢を持っている。それができたら、最高だな」

 聞き手の動きが、止まった。

——「僕が出られたら、これが最後のワールドカップになると思います」と。

「…いや、思ってないです!」

——オールブラックスとは2011年のニュージーランド大会で対戦。7-83で大敗しました。

「あのチームでは、絶対に無理です。でも、いま、差は縮まっています。(打倒オールブラックスの夢は)2018年くらいから、ずっとありました。日本代表の可能性が高まったから」

 4年に1度のワールドカップで爪痕を残してきた。

 自身にとって2度目の出場を飾って初めて主将も務めた2015年のイングランド大会では、当時優勝2回の南アフリカ代表に34-32で勝利。2019年の日本大会でも船頭役を務め、初の8強入りを果たした。

 2023年のフランス大会を含め計4度出場した大舞台に関し、こうも続けた。

「(本番へ)いまの段階では、層を厚くするのが大事。2019、2023年にも感じましたが、同じメンバーでずっと戦い続けるのは無理がある。いまはいろんな選手に経験を与えるのが大事。そして、ワールドカップに行ったらベストメンバーでベストパフォーマンスを。プレッシャーのなかで戦い続けないと」




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