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前日こそ青空が見えたものの、ウェールズ代表×日本代表を翌日に控えた11月14日のカーディフは、またも雨。
市街地は強くは降らなかったが、局地的に大雨が降ったところもあったようで鉄道が運休となったところもあったようだ。
この日、両チームは試合会場となるプリンシパリティスタジアムでキャプテンズラン。午前中にトレーニングをするウェールズの取材のため、取材受付開始時刻の10時15分前に到着も、扉が開かれたのは予定より10数分遅かった。
日本では指定時刻のずいぶん前から報道陣の列ができるのだが、この日は他に人影なし。現地メディアは練習開始の11時に合わせて到着していた。
スタジアム内に入る通路での手荷物チェックでは探知犬(火薬? 麻薬?)が登場して荷物をクンクン。自分が危険物を持っているはずがないのだが、なんだかドキドキする時間だった。
日本戦でウェールズの主将を務めるのは、7月の来日時にもチームを率いたHOのデヴィ・レイク。前週のアルゼンチン戦(28-52)で負傷したFLジャック・モーガンからバトンを引き継ぐ形となった。


そういう背景があるだけに練習後にインタビューを受けたレイクは、「複雑な気持ち。彼には(今週も)ピッチに立っていてほしかった」と話した。
日本代表については、「スピード、強度、ボールの動き、ラック周辺の攻防などに対して、要求されるものが多い試合になる。非常にフィジカルなコンタクトバトルになるでしょうし、彼らはラインアウトでもとても強い。走力があり、スピードのあるチーム」と警戒していた。
日本代表は青いセカンドジャージーを着てグラウンドに登場。日本での試合では両チームともファーストジャージーで対戦したが、今回は違うようだ。
1時間の練習後、1番で先発する小林賢太とフィニッシャーとして21番のジャージーを着るSH福田健太の2人が取材対応をした。
欧州ツアーでのここまでの2試合で日本代表が挙げたトライは2つだけ。チームは、日々の練習の中で攻め切る力の向上に取り組んでいる。

その点について小林は、「フォワードとしてはせっかく22メートルラインの中に入ってのラインアウトの精度が低く、ゴール前のプレーをミスで終わらせたり、トライまで持っていけていないところがあります。なので、リフトでマックスに上げたり、いいスローイングなど、自分たちの大事にしているところにもっとフォーカスし、バックスにしっかりボールを供給しないといけないと思っています」と話した。
福田は「トライが取れていないからチームの戦術を変えていたら、これまで積み上げてきたこともなくなってしまうし、チャンスメイクは、アイルランド戦でもできている」とし、WTB長田智希が抜けた場面や、FB矢崎由高がビッグゲインをしたシーンを挙げた。
サポートの位置が悪かったり、ブレイクダウンの寄りの遅れなど、その好機を得点につなげられなかった理由は分かっている。
「その改善に日々取り組んでいます。エディー(ジョーンズHC)も練習の時からフィニッシュまでちゃんとやろうと口酸っぱく言っています」
「チームとしてやり切るところに取り組んで準備しています」と続けた。
ウェールズが得意とするチョークタックルへの対策も進んでいる。
小林は、「ランキングの上のチームとの試合ではブレイクダウンでプレッシャーを受け、自分たちの早いテンポのラグビーができなかった」と認め、今週は相手ディフェンダーが仕掛けてくる前にクリーンアウトに出て、「自分たちに対して脅威があるところをしっかり排除しにいくことを意識してトレーニングしてきました」という。

福田も、「チョーク(タックル)はウェールズの特徴のひとつだと思いますが、ブレイクダウンの中で誰がどういう役割をするかは、どこが相手でも変わりません。インサイドサポートから相手の体にしっかり入り、レッグドライブをしてしっかりとしたブレイクダウンを形成できるようにしたい」。相手の思い通りにはさせない。
11月22日にトビリシでおこなわれるジョージア代表戦まで続く長いツアーも後半に入り、2人はチームの雰囲気について「(みんな)仲良し」と笑顔を見せた。
「若い選手も多いですが、あまり若手だけで固まっていることもありません」(福田)
ホテルの部屋割りは、同じポジション同士が多いそうだ。福田は土永旭、小林は祝原涼介がルームメイト。福田は、土永が入浴の時には音楽を流しながらコブクロの歌を熱唱していることを明かし、「リラックスしてチームにコミットできているから、みんな自分を出せていけていると思います。グラウンドでも表現できているし、コーチ陣ともいいコミュニケーションがとれている」とチームの一体感を伝えた。
小林は祝原が以前サンゴリアスに所属していたこともあり仲がいいとし、ハリー・ホッキングスと3人でNetflixの恋愛リアリティーショー『オフライン ラブ』をああだこうだいいながら見て、くつろいでいるという。
2人は、ジョーンズHCが率先してミーティング冒頭にジョークを口にしたり、お気に入りの平生翔大をいじって和やかな空気を作ってくれていると話す。
バックスコーチ不在についても、「もちろんいるにこしたことはないけど」と前置きした上で現在の状況について、「コーチとコミュニケーションを取り、選手からアイデアを出したり、ディスカッションしながらゲームプランを組めています」。
結束力の高まりを感じている。

ウェールズ戦での勝利に向け2人は、自分たちがどうプレーすべきか、考えがまとまっていた。
今回でパシフィックネーションズカップから8戦連続出場(7戦連続先発)の小林は、いろんな癖を持つ相手とのスクラムを組んで個人的にも「引き出しが増えた」という。
「ウェールズはヘビーパックですが、日本に比べるとスクラムの姿勢が高い印象です」とし、日本の低さを武器に戦う。
「ただヒットのタイミングで自分たちがパッシブな(受けの)状態になると、相手の重いパックにプレッシャーを受けてしまいます。ヨーロッパに来てから南アフリカやアイルランドを相手に、ヒットの時のパンチが出せていないところが課題となっているので、そこを改善して臨みます」
福田は、「最終的にチームを勝ちに導く。そこを意識したいと思います。テンポのコントロール、エリアのコントロールをして、ブレイクダウン周りをアタックする姿勢を見せていけたら」
2025年3度目のウェールズ戦。レッドドラゴンからの2勝目をもぎ取るため、全員でジャパンスタイルのラグビーを100パーセント出し切る覚悟でキックオフを迎える。
