![幸運だけで満足しない。山本秀[JAPAN XV/LO]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/10/20251016_miyazakiday2_00358_2.jpg)
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おそらく職場の人気者。営業先でも気に入られそうだ。
10月18日、大阪のヨドコウ桜スタジアムでおこなわれるJAPAN XV-オーストラリアAに5番のジャージーを着て出場予定の山本秀(しゅう)は感じがいい。
柔らかな口調と笑顔。囲み取材の最後には、チームの広報担当者にも労いの声をかける。
リコーブラックラムズ東京では、金融関連企業に自社製品を勧め、購入してもらっている。
「上司や先輩に同行させてもらい、自分がラグビーをやっていることを伝え、試合への興味をもってもらうようなことをしています」
細い目の目尻が下がる。
1999年6月1日生まれの26歳。小3の時に京都のアウル洛南ジュニアに入り、伏見中でも楕円球を追った。
京都成章高校時代は高校日本代表にも選ばれた。近大進学後はジュニア・ジャパン、U20代表にも選出。しかし、怪我や病気に苦しんだ4年間でもあった。
大学卒業後は2022年の春にリコーブラックラムズ東京に加入。すぐに出場機会を得て、リーグワン2022の4月以降の試合のうち3戦に途中出場する。社会人生活は快調に始まった。
ただその後、2024-25シーズンまでの3季は、2試合、1試合、2試合と出場機会をあまり得られなかった。そのうち先発出場は1試合だけ。

低空飛行が続いた山本に突然チャンスが舞い込んだのは、2025年になってからだ。
U23日本代表がオーストラリアツアーに出かける前にブラックラムズと練習試合をおこなった。
その試合でU23代表を率いていたのがエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ。その一戦でのプレーがジョーンズHCのアンテナに引っ掛かった。試合後に言葉を交わす。来日したニュージーランド大学クラブ代表(NZU)と戦うJAPAN XVのメンバーに選ばれた(30-21)。
5月31日の香港代表戦には先発(64-12)。6月28日のマオリ・オールブラックス戦にも出場した(20-53)。
そして今回、10月に入ってから実施されたJAPAN XVの宮崎合宿に招集され、日本代表との練習を経てオーストラリアA代表戦の先発に名を連ねた。
190センチ、96キロのサイズながら、バックローでもプレーできる運動能力でハードワークをする。
宮崎合宿の練習でも転んではすぐに立ち上がり、次の仕事へ。ラインアウトでも声を出し、中心となっていた。
「リーグワンで活躍している選手が集まっての練習はレベルが高いですね。スタッフ、選手、そして宮崎(それぞれの高いクオリティ)と、とても環境が整っている中でやれているのが、すごくありがたい。そう思いながら練習しています」と練習後に話す。
「ネガティブなわけではないですが」と前置きして、「僕は(リーグワンで)あまり試合に出ていません。だからこそ、人一倍頑張らないといけないと思っています」。
「そのアピールをする場はグラウンドなので、そこでエナジーを出そうと思っています。必死に喰らいついていくところは、エディーさんも評価してくれている点です。ワンプレー、ワンプレー、自分のできる100パーセントを意識しています」
U23代表の相手からの上昇という、幸運といっていい出会いとチャンスをもらったことで満足するつもりはない。試合に出たい。キャップを取りたいと意欲が高まっている。
そして、上を見るようになったからこそ、自分を高める道を探すようになった。
「最初の(代表活動での)練習の時には、自分のフィジカルのなさを感じました。S&Cコーチやエディーさんと、自分がどういう選手になりたいか話しました」
結果、体重をもっと増やそう、そのためにウエートの数をもっと多く、食事の管理もしないとね、となった。
代表活動以外の時間に、あらためて自分の行動を見つめ直し、私生活を改善。5月以降に体重5キロ増。今回の宮崎合宿には、以前より少し自信を上乗せして臨めた。

芽生えた自信は周囲にも伝わるのだろう。特にラインアウトではコーラーを任されたり、リーダーグループに入ったり信頼を得ている。
「超速ラグビーのスタートはセットプレーの安定があってこそ」と、重責を理解して責任を果たす。
「ラインアウトのテンポのコントロールもコーラーの仕事。(相手のマークや注意が)空いているところを見極めて、サインを決めることも、そう。雨なら、どういうボールがいいかフッカーとコミュニケーションを取ることも大事だと思います」
それ以外にも、日本代表の試合に出る選手には、スマートさや頭を使ったプレーも求められていると理解している。
超速ラグビーの体現者の一人として、世界と勝負していく集団の中に身を置き続けたい。
志の高い人たちの中に身を置いて、「自分のラグビー選手としての価値を高めたい。もっとラグビーと向き合いたい気持ちが強くなっています」と気持ちの変化を吐露する。
オーストラリア代表の予備軍と戦い、そのレベルでプレーする喜び、楽しさを知れば、その想いはさらに強くなる。