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ラグビーをする、見る、の両方にいい季節。リーグワンの開幕はまだ先も、学生ラグビーや社会人ラグビーは毎週末、各地で熱い試合が繰り広げられている。
トップイーストリーグも、9月上旬の開幕から1か月ちょっとが過ぎ、各チームが3〜4試合を消化(全8試合)。AグループではAZ-COM丸和MOMOTARO’Sと東京ガス ブルーフレイムスがともに開幕3連勝で、それぞれ勝ち点15と14。首位を争っている。
その両チームが10月18日(土)に激突する。MOMOTARO’Sがホームの東大丸和グラウンド(千葉・柏)に昨季の3地域社会人リーグ順位決定トーナメント戦(以下、3地域戦)で敗れた相手を迎える。
悔しい思いをしたのも、同グラウンドだった。MOMOTARO’Sの選手たちは、リベンジを果たしたい気持ちが強い。

昨季の両チームは、リーグ戦で2回対戦して1勝1敗。勝ち点差でMOMOTARO’Sが1位、東京ガスが2位となり、揃って3地域戦へ進出。その舞台の決勝戦で再び顔を合わせ、MOMOTARO’Sは33-43で敗れた。
そこにたどり着くまではMOMOTARO’Sの方に勢いがあるように見えていた。しかし、長い伝統を持つ東京ガスの粘りと意地に屈した。
MOMOTARO’Sの主将を務める眞野拓也(FL)は、「あの試合の悔しさはいまでも残っています」と話す。
「東京ガスはトップイーストの中でも特別な存在だと感じています。(今年の)春のトーナメントでは勝利できましたが、今回の試合にすべてをかけたいと思っています」
静岡ブルーレヴズから昨季移籍し、チームに加わった鹿尾貫太は、トップイーストでのプレー期間はまだ短い。しかし、チームメートから伝わってくる東京ガスへの思いを感じ、「体も心も、絶対に負けられない状態になっています」と感情を言葉にする。
3地域戦決勝の敗因の一つとなったブレイクダウンについては、「そこに注力して取り組んできました。その成果は、今シーズンのここまでの結果に現れているので、東京ガス戦には自信を持って臨めます」。
今季最初の直接対決を制し、チームをさらに勢いづけるつもりだ。

開幕から3戦を戦ったMOMOTARO’S。その足取りは、クリーンファイターズ山梨戦に26-7、日立Sun Nexus茨城戦に69-0、明治安田ホーリーズ戦に76-16と充実している。
高い得点力からも好調さが伝わるが、3試合を戦って失ったトライは2つだけ。そこにチームのこだわっている点が浮かぶ。
「初戦は少し硬かったのですが、チーム内で修正を重ね、自分たちのスタイルを明確にできていっています」と眞野主将が言う。
「ブレイクダウンやアタック、ディフェンスの修正を重ねたことでチーム状態が向上しました」
鹿尾は日立戦にしか出場していないが、今回の東京ガス戦には13番のジャージーを着て戦列に復帰する。
日本代表キャップも持つCTBは、自分が出た試合での体感、外から仲間が戦う姿を見つめて得た感覚を「いい瞬間を繰り返せている」と表現した。
特にFWの働きをリスペクトし、「セットプレーでもブレイクダウンでも圧力をかけてくれているからバックスにスペースが生まれ、それがスコアに結びついています」と言う。
MOMOTARO’Sには今季開幕前、PR東恩納寛太(NECグリーンロケッツから移籍)、PR五十嵐 優(豊田自動織機シャトルズ愛知から)、CTB南橋直哉(横浜キヤノンイーグルスから)、FB藤田慶和(三重ホンダヒートから)ら実績のある選手たちや、東海大出身のSH辻時羽が加わった。
海外からも、仏・トップ14のリヨンでプレーしていたSOフレッチャー・スミス(以前はグリーンロケッツにも所属)らがやってきて、チームに刺激を与えてくれている。

チーム内の変化を、眞野が主将の目で語る。
「昨年、貫太が入った時にも感じたことなのですが、経験のある選手たちがしっかりとチームにコミットしてくれるので、チーム全体が引き上げられる」
練習時の言葉を聞き、実際の行動を見て学ぶ選手たちが増え、それが成長につながり、競争を呼ぶ。
鹿尾もトップチームにいた感覚からすると、「(チーム内競争に)もっと闘争心があっていい」と思っていた。それが、今季は以前の空気が払拭され、「競争も、そのレベルも上がっているように感じます」と話す。
例えばリコ・サイム。NZでも実績があり、昨シーズンはMOMOTARO’Sでもエース級の働きでピッチを駆け回った。
しかし今季は日本代表キャップ31を持つ藤田の加入もあり、より必死さが伝わるようになっている。
チームが、2026-27シーズンからのリーグワンへの新規参入に正式に手を挙げたことも選手たちの心に火を点けた。
眞野主将は「具体的な目標が明確になり、チームの一体感がさらに高まりました」と感じている。「選手一人ひとりの目の色が変わった」と鹿尾も言う。
結果、選手個々の行動や言動も変わってきた。周囲の自分たちを見る目の数や熱も以前とは違う。

社内の応援がより大きくなって、試合の時に響く声が選手たちを元気づけてくれていると主将は感じている。
鹿尾は本拠地近くのモールでのイベントに参加した時、以前と比べて自分たちのことを知ってくれている人たちが多くなったと実感したそうだ。
「チームグッズを着てくれている人もいれば、ラグビー体験コーナーには列ができました。子どもたちと話している時に、こんなこともありました。僕がチームのことを丸和と言うと『モモタローズって言ってよ』と。1年前とは、全然違う」
今季のチームスローガンは『ブレイクスルー』。眞野主将は、昨季届かなかった3地域戦での優勝までの道を圧倒的に走り抜き、誰もがリーグワン参入は当然、と思うぐらいの結果を残したいと話す。
東京ガスとの一戦を、自分たちの覚悟をあらためて示す80分にする。