
日体大、立教大をそれぞれ59-7、78-0と圧倒した早大。筑波大は明大に28-24、慶大に21-12と、接戦を制し、チーム力の充実を伝えるシーズン序盤を過ごした。
今季、好調なスタートを切った早大と筑波大が10月11日に関東大学対抗戦Aの第3節で戦った。
その日、舞台となった大和スポーツセンター競技場(神奈川)は雨も、多くのファンがスタンドを埋めた。熱視線が注がれた80分は、39-13のスコアで早大が勝利を手にした。
前半3分に筑波大、SO楢本幹志朗がPGを決めて動き始めた試合は、すぐに早大が流れをつかんだ。
9分、ラインアウト後の乱れたボールをPR杉本安伊朗がインゴールで押さえ、CTB野中健吾がコンバージョンを決める。7-3とした赤黒のジャージーは、背中から風を受けて優位に試合を進めた。
10分過ぎの自陣右ラインアウトからの攻撃でスタジアムをどよめかせたのはSO服部亮太だ。
22メートルライン内でボールを手にした10番はロングキックを蹴る。楕円球は風にも乗って、筑波大陣22メートル内地域で弾み、ゴール前10メートルのところでタッチに出た。50/22キックで再び攻撃権を得た。
早大はそこから筑波大陣に居座り続け、16分にPGで加点。10-3と差を広げた。

29分にもPGを追加した早大は、13-3で迎えた前半40分過ぎに敵陣深い位置、左サイドでのスクラムから右へ攻める。SO服部からのパスを受けたFB矢崎由高が強さを見せ、タックルを受けてもトライを取り切った。
Gも決まり、20-3として前半を終えた。
早大は後半4分にPGで3点を返されるも、風下ながらハードなタックルと粘りのディフェンスを見せて反撃を許さず、逆に23分、34分とトライを重ねる。勝負を決めた(34-6)。「先手を取る」の意識で試合に入り、そのミッションを遂行して得た勝利だった。
大田尾竜彦監督は、日本一を目指すチームとしては修正しないといけない点が多く残るとしながらも、「しっかり戦ってくれた」と選手たちを称え、「力のある筑波大に対して勝ち点を取って勝てたのは評価できる。勝って反省して次へ進む」と話した。
同監督は、苦しい状況に陥る時のきっかけについて、「自分たちのエラーや、チームとしてのルールから逸脱していることが多かった」と話し、CTB野中健吾主将も、「80分を通してチームが一つになれなかったのは課題」と厳しい目も忘れなかった。
ただ2人とも、接点で激しく、ゲインされても粘るディフェンスにはチームの成長を感じたようだ。
序盤のファーストスクラムからのアタックでCTBに前に出られたシーン、SH糸瀬真周が戻り、ボールを乗り越えてターンオーバーしたプレーがあった。166センチのFL、田中勇成のタックルも迷いがなかった。

アウトサイドでプレッシャーをかけてくる。FW周辺でハードワークするFWのダブルタックル。敗れた筑波大の島﨑達也監督は試合前にそれらを想定していたが、その圧力は「想像以上だった」という。
特にアウトサイドでモメンタムを生んだ後、それを維持して攻撃を続けられていたら、と悔やんだ。
SH高橋佑太朗主将も、「自分たちがボールを持つ時間が非常に短かった」と言う監督に同調し、「風下の前半をいかにロースコアに抑えられるか、と9番、10番で考えていましたが、自陣でディフェンスする時間が長く、反則も多くなってしまった」と戦況をレビューした。
「(早大の強い)プレッシャーに負け、思い通りのアタックができなかった。自分たちがプライドを持ってやっている接点のところで戦い切ることができませんでした」
◆味方の力を生かすパス。
試合後、チームを勝利に導くタクトを振った早大の司令塔、SO服部が80分を振り返った。
勢いのある相手と雨の中で戦う。その前提で風上スタートとなった司令塔は、「キックを使い、敵陣で戦う」ことを真っ先に考え、プレーした。
「コンディションも悪くて、かなり苦しいゲームになるのは分かっている中で、自分たちのラグビーをすることにフォーカスしました」

その結果の快勝。しかし服部は、「勝てましたが、課題も多く残る試合」と言った。
「前半は思い通りでしたが、後半はキックするところ、ランするところ(の選手個々の判断が)が違ったりしたので修正していかないと」
キャプテンのレビューと同じ感覚を得ていた。
「ゲームメイクのところで(それぞれの判断が)バラバラのところもありました。全員でコミュニケーションをとってひとつのチームにならないと(この先の厳しい戦いには)勝てない」と言って、アタック、ディフェンスとも、もっと密につながるための準備を重ねていくとした。
服部自身は、ひとりのプレーヤーとして成長を続けている。
前述の50/22キック以外にも、効果的なロングキックやハイパントを蹴り分け、自ら仕掛けることもあれば、パスも散らした。
特にパスの進化が印象的だ。
味方とのコンビネーションで攻める時は柔らかく、優しく放る。昨季と違うのは、勝負どころで繰り出すもの。動的にアクションし、長短の速いパスを投げ分ける。
ディフェンスを切るクオリティーのものが何本もあった。
本人は「1秒でもはやくランナーにボールを渡すことで、その人がいい間合いで走れる。僕がはやめにパスを供給することでいいアタックになると思って意識しています」。
自分でそう考え、「パスに力を入れ、日頃から練習した結果が出ていると思います。実感では、2割か3割ぐらい速くなっているかも」と、パススピードの高まり、そしてディフェンスを翻弄できている体感もある。

「昨シーズンより自信を持ってやれています」と言えるのは、以前よりランニング強度の強い練習に取り組んだり、スキルを高めるトレーニングを続けてきたからだ。
フィットネスの練習後にボールゲームに取り組むなど、「きつい中でどれだけ動けるか、という練習をして体力もつきました」。足もつらなくなった。
そんな土台があると、身についた技術も安定して出せる。「強く、速いパスを投げられるようになったので、とばしパスも自信を持って出せます」。
昨年は全国大学選手権決勝で帝京大に敗れたから、今季こそ日本一になりたい。
チームを加速させ続けて目指す場所にたどり着きたい司令塔は、日本代表については、「呼ばれたら嬉しいし、(代表に)行くことによって自分自身も大きく成長できると思いますが、そこを見すぎるのではなく、早稲田でしっかり、一つひとつ勝っていかないと意味がないと思っています」と独特の表現で赤白ジャージーとの距離感を表現した。
キックでドカンと、チームを前に進めることとは違う。実力の積み上げは、コツコツと、決して後戻りしないようにしたい。
自分を磨く時間は続く。
そして、もっと輝く。