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渡米中のラグビー日本代表は、現地時間9月6日、カリフォルニア州サクラメントのハート・ヘルス・パークでパシフィック・ネーションズカップのプールステージ第2戦目に臨んだ。アメリカ代表を47-21で下した。
8月30日には、国内でカナダ代表を57-15で制していた。そのため、大会のプールフェーズで首位通過を決めた。現地時間14日には、コロラド州コマースシティのディックス・スポーティング・グッズ・パークでトンガ代表との決勝トーナメント準決勝に挑む。
アメリカ代表戦終了後は、この日それぞれフランカー、ウイングで先発フル出場の下川甲嗣、石田吉平がオンライン会見に登壇。ゲームの所感を述べ、ハーフタイムのエピソードを明かした。
——この日の収穫と課題を教えてください。
下川「収穫は勝てたこと。それが一番の目的であったし、準備してきたプレーを遂行してスコアに繋げられたところもありました。
一方で、前回のカナダ代表戦と同様にラック周りでのペナルティが多かった。この1週間で修正するような準備をしてきたつもりでしたが、まだまだ減らせるものは何本かあったと思います。
次の準決勝では相手よりも1点でも多く獲って勝たないといけない。そのためには、ペナルティを自分たちの規律によって減らしたい。チャンスを与えてしまうと、フィジカリティの強い相手には(苦しめられる)。そういった点を踏まえ、次の1週間でいい準備をしたいです」

石田「バックスとしてはミスが多くありました。コミュニケーションのものも、普通の簡単なものも。これからは1回のチャンスをものにしないと勝てていけない。カナダ代表戦もミスが多かったので、もっと修正していかなきゃいけないと思いました」
ジャパンはこの日、セットピースの優位性を背景に様々な局面を圧倒。前半12分のターンオーバーからの先制トライで膠着状態を脱すると、続く22分、26分の連続トライなどで21-0とリードを広げた。
もっとも2人が口にする通り、反省点もあった。
攻めては、先制するまでの過程でエラーがかさんだ。さらにカナダ代表戦と同様、規律に課題を残した。公式記録上、与えたペナルティキックの数を向こうより2つ多い「12」とした。
前半、後半の終了間際には、反則を重ねて守勢局面を招き、トライを許した。
この日2トライと気を吐いたロックのワーナー・ディアンズ共同主将も、防御について警鐘を鳴らした。
「前半のラスト約10分、相手がいい順目の(一定方向への)アタックをしてきた。それに対して、自分たちがディフェンスで回ってフォールドする(穴を埋める)という対応ができなかった。フォワード(の動き)が遅く感じて…。それが、ディフェンスでの一番の大きなポイント(改善したい点)」
自分たちに求める基準は低くない。報道陣から前向きに映る仮説が飛んでも、当事者は地に足をつけていた。
——『超速ラグビー』を掲げ始めた前年度は攻めに窮屈さがあったものの、いまは緩急がついている印象です。

下川「自分たちのアタックをするうえでフォワードの役割が明確になっているからか、ポジショニングははやくなってきていると思います。(スタンドオフの李)承信がリードしてくれているなか、(所定の位置に)つきやすい。それがよかったら、いいアタックもできる場面もある」
石田「承信と、忍さんと健太さん(スクラムハーフの藤原、福田)が『どこで攻めて、どこでキック』についてコントロールしてくれていた。形になってきたと思います」
——後半22分、敵陣中盤左でルーズボールを拾ってからの連続攻撃。右端の接点のさらに右へ下川選手とともに走り込んでいたディアンズ選手が、藤原選手のパスをもらってフィニッシュしました。ディアンズ選手が端に立つのはチームで定めた布陣なのでしょうか。
下川「セットプレーからのストラクチャーアタックは、ある程度動きが決まっていますが、ラインブレイクが起きてからや、キックのあとなどのアンストラクチャーでは、固定(の形)はない。チームの中でそれぞれがいるべきところを判断し、ポジショニングしていると思います」
2023年のワールドカップフランス大会にも出た26歳の下川は、「先制パンチを打つというテーマがありました。向こうがホームで勢いづいて(向かって)くるであろうところを、そうさせない…。最初の20分で仕掛けていく…と」。その前半は28-14。戦前の世界ランクで日本代表が5つ上回る13位だったのを鑑みれば、さらに加速が求められそうだった。
ここで今年代表デビューの石田は、就任2年目のエディー・ジョーンズヘッドコーチから厳しい言葉をもらったようだ。問答を通して振り返る。
——後半30分、好ランでトライラインを割りましたが。
石田「前半が終わって、エディーさんに…言われたので、後半はしっかり立て直そうとして自分のスプリント、色を出せたかなと思います。前半は受け身になってしまって、ボールも全然もらっていないです。高いパフォーマンスを一貫して出せるように…ということを感じました」
——指揮官には「受け身」だったと指摘されたのですか。
石田「すごく、喝を入れられて。『なんだ、このパフォーマンスは。やる気がないなら帰れ』と」

——それは皆の前で告げられたのですか。
下川「あれ、みんなの前だったの」
石田「いや、皆の前じゃなく、個人的に呼び出されて」
——敵地のスタジアムについて。
石田「日差しが強いくらいで、日本のようにジメジメしておらず。ただ、アメリカ代表のチャンスの時の歓声は凄かったです。個人的には(15人制日本代表では)初めてアウェイで試合をしたので、『これが、アウェイの力か』と感じました。次はホームもアウェイもなくなり、イコールコンディションです」
36歳で7月のウェールズ戦時は主将だったリーチ マイケルら、経験者を欠く陣容の現代表。白星を得ながら問題点をあぶり出している。