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期待通りの大活躍だった。
ワールドカップ(W杯)の開幕戦で最も輝きを放ったのは、セブンズ出身の大スター、FLジョージャ・ミラー。持ち味の豪快なランを武器に前半だけで2トライを奪取した。先制トライでは、ディフェンスを切り裂く衝撃のプレーを見せ、W杯の大舞台で早くも存在感を見せつけた。
◆初戦圧勝も、ミスと怪我人多発。
大会3日目の8月24日(現地イングランド)、前大会の王者、ニュージーランド(以下、NZ)代表のブラックファーンズは、開幕戦でスペインに54-8で勝利した。
スコア上は快勝に見える。しかし初戦では布陣を大きくいじった背景もあり、コンビネーションに課題を残した。
NZのラジオ番組に出演したアシスタントコーチのリキ・フルーティは、「エラーレイトの高さ」を指摘。前回大会と同様、選手を入れ替えながらプレーオフでピークを迎える戦略がうかがえる。
さらにCTBエイミー・デュプレッシー(肩)、NO8カイポ・オルセン-ベイカー(足首)に加え、この試合でフィジカルの強さを活かして2トライを挙げたWTBアイシャ・レティ-イイガ(足首)が負傷した。ハーフタイムで多くの選手を入れ替えたことでリザーブが不足し、60分頃からは13人で戦う苦しい展開となった。
スペインの奮闘も重なりビッグスコアには至らなかったものの、最大のライバルのイングランドが大会前のウォームアップマッチでスペインに97-7で圧勝しているだけに、手放しで喜べる内容ではなかった。
幸い3人の怪我人に重傷者はいないが、正式な復帰の目途はたっていない。限られたスコッドの中で、これ以上の負傷者は避けたいところだ。

◆バックロー陣の活躍、FBホームズの存在感。
エラーや怪我人の多さはマイナス材料も、バックロー陣のパフォーマンスがチームに勢いをもたらした。
FL(6番)レイラ・サエは、ボールキャリーで200メートルを超える驚異的な数字を記録。試合後には「ボールキャリーの面で厳しく取り組んできた。ワールドカップの舞台で自分を示したかった」と手応えを語った。NO8リアナ・ミカエレ-トゥウもアグレッシブに前に出てトライも挙げるなど、プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選出された。ポジション争いが熾烈なバックロー(FL/NO8)において各選手がしっかりアピールをした。
ブラックファーンズの課題のひとつであるゴールキックでは、15番で先発したレニー・ホームズが正確さを発揮。難しい位置でのコンバージョンを含め、8本中7本成功させて存在感を示し、プレーオフに向けて心強い材料となった。
◆日本戦は大胆ローテーション。
8月29日、ブラックファーンズの指揮官アラン・バンティングがプールステージ第2戦の日本代表戦(8月31日)の試合登録メンバーを発表した。当初から32人全員に出場機会を与える方針のもと、初戦から大幅にメンバーを変更。先発11人を入れ替えた。
【フォワード】
フロントロー(PR、HO)は全員を入れ替え、PRクリス・ヴィリコ(1番)、HOジョージア・ポンソンビー(2番)、PRターニャ・カルーニベール(3番)が前週のベンチスタートから先発に昇格。セカンドロー(LO)はマイア・ルース(5番)が今大会初登場となり、2試合連続で先発のアラナ・ブレムナーとコンビを組む。
注目のバックローは、怪我が回復したケネディー・トゥクアフ(7番)、前週7番のミラーが6番にシフトされ、前週6番のサエはNO8となり、今回も強力布陣が整った。

【バックス】
ハーフ団は、開幕戦は、急遽ベンチ入りをしたリサリアーナ・ポウリ・レーンとSOルアヘイ・デマントが共に先発に昇格しコンビを組む。
中盤(CTB)は、シルビア・ブラントとステイシー・ワッカが今大会初登場。パワーとスキルを備えたバランスの取れたCTBコンビに注目だ。
バックスリー(WTB/FB)は、ケイトリン・ヴァハアコロが11番で初登場、大ベテランのポーシャ・ウッドマンーウィクリフが14番、開幕戦でWTBを務めたブラクストン・ソレンセン・マギーが最後尾の15番にシフトされ、決定力のある3人が揃った。
【リザーブ】
36歳の大ベテランPRケイト・ヘンウッドが怪我から復帰してW杯初出場。スクラムと激しいタックルに注目だ。若干20歳の新星ベイシニア・マフタリキ-ファカレルは、元バックローでボールキャリーも得意なだけに後半からのインパクトに期待。
SHマイア・ジョセフは、開幕戦の数日前のハムストリング怪我が癒えてベンチ入り。距離の出るパスとキックを織り交ぜたプレーに注目だ。
その他では、開幕戦でPOMのNO8ミカエレ-トゥウ、CTBテレッサ・セテファノ、FBホームズの経験のある選手も控える。
キャプテンはトゥクアフが復帰戦のためプレーに専念し、デマントとブレムナーが開幕戦に引き続き共同で務める。層の厚さと破壊力を兼ね備えた強力布陣で、日本戦に挑む。

◆超攻撃的バックスに注目!
バックス陣は突破力に優れ、強さ・速さ・スキルを兼ね備えている。日本代表が苦手とするタイプの選手が並び、攻撃面で驚異的なパフォーマンスを見せるだろう。
既に開幕前にブラックファーンズの分析記事で注目選手を数人挙げているが、そこで挙げきれなかった日本戦で出場する注目選手を紹介してみたい。https://www.justrugby.jp/check-it-out/2025/08/24/7916
● CTBシルビア・ブラント(ブルーズ)
前回のW杯には18歳で出場し、限られた出場時間ながらインパクトを残した。スーパーラグビーでもフィジカルの強さとスキルの高さを披露している。CTBの熾烈なポジション争いでも十分食い込める実力があり、13番ワッカとのコンビは要注目。
●WTBケイトリン・ヴァハアコロ(ブルーズ)
ラグビー・リーグ(13人制)でも並外れた実力を見せ、15人制に転向後すぐに頭角を現した。スピードとランニングスキルが光り、強さもあることからボールを持たせると非常に厄介だ。今年は個人プレーだけでなく、チーム貢献を意識したプレーも増え、幅が広がった。
バックスだけでなく、フォワード陣も強力だ。チームが一番こだわっているコリジョン(接点)エリアで優勢を確保しつつ、ボールキャリーと機動力に優れるバックロー、先発のフロントローはもちろん、控えのPRも含めて強力だ。
さらに、今季ロックで先発を多く務めたルースとブレムナーの2人もスキルと機動力を兼ね備え、攻守ともに隙のない布陣となっている。

◆注目マッチアップは、NZで元チームメイト対決。
・ケネディー・トゥクアフ×齊藤聖奈のバックロー対決
昨年スーパーラグビーで同じチーム(チーフス)だった2人が、今度は真っ向勝負でぶつかる。生活を共にした仲でもあり、互いを知り尽くした者同士のバトルは必見だ。怪我から復帰するトゥクアフは熾烈なポジション争いもあり高いモチベーションで挑む。
一方、NZでも見せたゴール前でのアタックセンスを持つ齊藤が、王者相手にどんなパフォーマンスを見せるか。日本代表にとってフィジカルバトルは重要。齊藤はディフェンスでも力を見せたい。
・永田虹歩 ×ブルーズ所属のFW陣
昨年NZのブルーズでプレーしたPR永田虹歩は、アイルランド戦の後半に登場し、好ボールキャリーを見せた。昨年ブルーズでも試合を重ねるごとに進化して優勝に貢献している。ブルーズの選手がFW陣に多くいるブラックファーンズとの対戦に燃えているだろう。ブルーズのヴィリコ(1番で先発)とスクラム対決が見られるか。
◆試合展望。
初戦はミスが目立ったブラックファーンズだが、2戦目は精度を高めてくることは間違いない。 一方の日本代表も、NZでのプレー経験者や元チームメイトとの対戦が多く、気持ちの入る試合となる。コリジョンエリアでどれだけ互角に戦えるかがカギを握る。
ブラックファーンズの指揮官アラン・バンティングは、「日本の成長をリスペクトしている。我々も先週より進化したい」とコメントした。日本戦に向けたチームミーティングでは、日本語を交えた自己紹介をするなど、親しみやすさを感じさせつつ、その裏にあるプレーオフを見据えた強い覚悟も感じさせた。
試合前にはブラックファーンズの魂のハカ「Ko Uhia Mai(コ・ウヒア・マイ)」が披露される。日本代表がどのように受け止めるかも、注目のシーンとなりそうだ。
世界王者に挑む日本と、連覇を狙うブラックファーンズ。両国に深いつながりを持つ選手たちが揃い、いくつもの想いが交差する特別な一戦が熱い80分となることを期待したい。