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【Just TALK】「キャプテンをやって後悔したことはない」。原田衛[日本代表/HO]
8月15日に始まったFWの東京合宿中の一枚。(撮影/松本かおり)
2025.08.24
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【Just TALK】「キャプテンをやって後悔したことはない」。原田衛[日本代表/HO]

向 風見也

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 ラグビー日本代表の原田衛はいま、スーツケースひとつで生活している。

 2022年に入団して副将も任された東芝ブレイブルーパス東京を、今年6月までに退団。いまは国際リーグのスーパーラグビー参加へ準備中だ。

「一応、ビザを取ってという感じです」

 行く先々で使う最低限の荷物をひとまとめにし、それ以外は兵庫県内の実家へ預けた。6月下旬から7月中旬までの代表活動後は、ブレイブルーパスや日本代表で主将を務めるリーチ マイケルが治療などで使う部屋を寝床にした。前所属先の施設でトレーニングを続けた。

 睡眠の質を高めるべく、夜8時に自動的にスマートフォンのアプリケーションが止まるよう設定しているとあり…。

「リーチさんと電話していても、8時になったらぱっと切れる…という」

 8月15日からは、再びナショナルチームの一員として動く。最初の2日間は、東京でフォワード限定のキャンプへ参加した。

 その頃バックスは、宮崎で動き出していた。

 ポジション別で汗を流す利点は何か。原田が微笑む。

「『なんであいつら(バックス)、はよう(グラウンドから)上がってんねん』というストレスがなくなる。それくらいですかね」

 ストイックで実はユーモラスな26歳が取材に応じたのは8月16日。古今東西、フォワードの練習時間は伸びがちだと再確認したうえで、30日から参戦のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)への展望、リーチが不在となる今度のキャンペーンへの思いについて語った。

1999年4月15日生まれ、26歳。 兵庫県出身。175センチ、101キロ。伊丹ラグビースクール(小1〜)→桐蔭学園中→桐蔭学園高→慶大→東芝ブレイブルーパス東京(2022〜2025/2025年6月4日、ブレイブルーパス退団発表)。代表歴/日本代表キャップ12。ジュニア・ジャパン、U20日本代表、高校日本代表。(撮影/向 風見也)


——いまのターゲットは。

「今回はわかりやすく、PNCでの優勝をチーム全員で目指していければいいかなと。大会なので」

——目標達成への鍵は。

「僕的にはセットプレーが一番重要。ウェールズ代表戦(7月5、12日の連戦)もそうですけど、スクラムでプレッシャーをかけられると(勝った)1戦目みたいにいい試合ができます。PNCでは、あまりそこに自信を持ったチームはないと思うので、しっかりやりたいですね。

 いまはフォワードのキャンプをしていて、モールのアタックとディフェンスも結構やっています。PNCではいいモールを見せて、トライまで決め切れるようにしたいです」

——前回大会の決勝で17-41と敗れたフィジー代表にリベンジを果たすには。

「まずはセットプレーで圧倒する。ディフェンスでどんだけ我慢強く相手のアタックを止められるかも重要です」

——「ディフェンス」といえば、6~7月にオブザーバーとして帯同のギャリー・ゴールドさんが正式に防御担当のアシスタントコーチとなりました。

「去年はあまり(守り方の)枠組みみたいなものがなく、選手の判断に任されていました。いまは『チームでどうするのか』ができつつあるので、だいぶ、いい感じに進んでいると思います。『誰がどこにセットするか』、『その後のタックルの場面で2人が入る』を意識します」

 8月17日には宮崎に全選手が集まった。追加招集、離脱を経て、同22日時点でのスコッドは計37名だが、PNCのプールフェーズ登録メンバーは28名とされ、2戦目以降のためのアメリカ遠征メンバーも30名が上限だ。サバイバルが続く。

 さかのぼって8月16日、原田は組織における役回りについても正直に述べた。

7月のウェールズとの2連戦では、両試合とも先発出場した。(撮影/松本かおり)


——初めてジャパンに選ばれてから1年以上が過ぎています。

「ちょっと慣れたというか。スケジュールに関してもいまは『こういう時にしんどくなるな』というのがわかってきている。まぁ、(合宿の)3日目が1番きつくなって…という感じなんで、そこに合わせてどれだけ準備できるか(が肝)かな、と」

——今回は、ワールドカップに4度出場で36歳のリーチ選手が個人的事情のため招集外。フランスに挑戦中で8月に28歳となる齋藤直人選手も帯同しません。原田選手のリーダーシップが求められます。

「フッカーというポジションはフォワードをまとめないといけないので、しっかりリーダーシップを発揮していきたい」

——エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ体制が発足した昨年から、原田さんはずっとリーダー候補と目されています。

「そこまでリーダーをやりたいわけじゃないですけど、チームがどうやったらよくなるか、日本ラグビーにどれだけ貢献できるかを考えている。リーダーであれ、他の役職であれ、まずはPNCの優勝へ頑張りたいです」

——「リーダーをやりたいわけじゃない」。その心は。

「リーダーは人に言う分、自分もやらないといけない。1番きついポジションです。やりがいはありますけど、進んでやりたいわけではない。できれば、周りで見とくほうが楽っちゃ楽なんで」

——そんな調子でも、桐蔭学園高校、慶應義塾大学と行く先々で主将になっています。

「何でかはわかんないですし、やりたくないですけど、やって後悔したことはないです。そこが経験になって、人間として成長できる部分もある。(今後も)任せてもらえるのであれば、まぁ、全うしたいと思います」

——ジョーンズさんからのリクエストは。

「『若手のなかで、言葉じゃなく姿勢で引っ張ってほしい』と。これはずっと伝えられていて、ウェールズ代表戦後の1on1(個人面談)の機会でも言われました。やることはこれまでと変わらないです。例えば同じポジションの(江良)颯とか、若い人たち——皆(ほとんどが)僕より若いので——を(個人)練習に誘うようにしています」

2026年シーズンはスーパーラグビー・パシフィックでプレー予定。(撮影/松本かおり)


——ずっと一緒にいたリーチさんは、視野の広さと献身性を長所に代表主将を全うしています。もしその役目をご自身が担うとしたら。

「リーチさんは結構、天性というか、姿勢で示す。で、たまに喋ることがチームをモチベートする感じです。あれを真似しようとは、思っていないです。僕は、厳しさが、リーチさんよりあるかなと。細かいというか、結構、心配性なので、チームに口出しもできます。だからいろいろと(指摘する内容を)言ってしまうとは思うんですけど、言える人ってそんなにいない。自分のアイデンティティみたいなものを、このチームに還元できればと考えます」

——仲間に厳しいことを伝えるには度胸や勇気が伴います。それを原田さんができるのはなぜでしょうか。

「空気が読めへんからか、わからないですが、中学からだいたいそんな感じで生きてきたので。いままで代表では言うことがなかったですけど、リーダーを任されたらしっかり周りにも言ってきたなと思います」

 大会後はいずれニュージーランドへ渡る。

 詳しい時期については「PNCが終わってから、もう1回エージェントと話してという感じ」。秋以降は新しいチームのプレシーズンキャンプがある一方、日本代表も国内外を回るためだ。

「そこ(どちらにどの日にちまでいるか)は、話し合いがあるかなと思います」


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