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たぶんシュワシュワする麦汁を片手にしていたら、話は何時間も続いた。
ラグビー情報番組「藤島大の楕円球にみる夢」のパーソナリティを務める藤島さんは、コーチングの話題になるといつも以上に熱が入る。
8月4日(月)、夜6時からラジオNIKKEI第1で放送される同番組のゲストは三井大祐さん。2024年度リーズンまで慶大ラグビー部でヘッドコーチを務めていた。
同氏は1984年10月20日生まれの40歳。慶大のヘッドコーチを務める前は母校・早大でもコーチとして選手を指導していた。
在籍していた東芝(現・東芝ブレイブルーパス東京)でのコーチ経験もある。
28歳の時に、初めて東芝でコーチになった。目の怪我が原因で体のバランスが崩れて引退を決めた。
チームに残り、2013年から4シーズンに渡りコーチを務める。結果、コーチ業一本で生きていくと決め、退職した。
学生時代から、指導者に恵まれた人生を歩んできた。
啓光学園中で始めたラグビーは、自分に合っていた。ポジションはスクラムハーフ。高校時代は2年、3年と全国制覇を経験している。
当時、記虎敏和監督が率いるチームはオリジナリティあふれるスタイルで戦っていた。20年以上前のことだけど、いま思い出しても、まったく古くない。
こうやって勝つ、のスタイルを実現するため、走り込みだけの合宿、試合目的の合宿、キックチェイスだけを繰り返す合宿などを重ねた。
選手選考における最大のポリシーはディフェンス。アンストラクチャ―の展開に持ち込んで、ボールを取り返したところから攻めて勝つ。
現代ラグビーを当時から追っていた。
早大時代は、「俺が言う通りにプレーすれば勝てる」の清宮克幸監督と、「きみたちはどういうラグビーをやりたいのか」の中竹竜二監督のもとでプレーできてよかったと思う。
選手としても頂点を味わい、競争の厳しさを知って、敗れた悔しさも体感した。5年目もプレーする決断をして目指していたものをつかんだ成功体験も、自分の人生の支えになっている。
早大と慶大でコーチを務めて感じた、両校のカルチャーの違いも興味深い。それぞれ、なぜ自分たちはこのクラブにいるのかを語る時、その原点に違いを感じることもあれば、同じように純粋な共通点もある。
三井コーチは自分のコーチングについて「泥臭い」と話す。
クラブに漂う空気と、個々の思い。コーチは、自分たちがどういう集団であるのかがすぐ分かるようにするのが大事で、目の前の一人ひとりの選手をサポートする。
その難しさと面白さの追求は続く。
昨シーズンで慶大の指導を終えた後は、古巣のブレイブルーパスの中に入り、リーグワンで2年連続優勝したチームのエッセンスを肌で感じる機会を得た。
あらためて知ったのは、チームが強くなるのに魔法なんてないことだ。「みんながチームのことを好き」。強いチームの真ん中には、それがあった。
馴れ合いでなく、選手同士、コーチ同士の仲が良く、選手とコーチの関係性もいい。試合に出られる人、出られない人が、それぞれ自分たちの役割を遂行する。
本当の意味で同じ絵を見て行動できるチームと感じた。
新しいシーズンから、リーグワンのチームでコーチに就くことも決まった。これまで積み上げてきたものを目の前にいる選手仕様にアップデートする。
人と向き合う仕事には、正解も決まった方法もない。ただ、「自分はコーチとして生きていく」の覚悟は思慮深さを呼ぶ。ふたりのトークが熱を帯びるのは最初から分かっていた。
▽ラジオ番組について
ラジオNIKKEI第1で8月4日夜6時から全国へ放送。radiko(ラジコ)のサービスを利用して、PCやスマートフォンなどで全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。
放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。U-NEXTでも配信予定。8月11日の同時刻には再放送がある。