
7月19日にサルタでウルグアイと戦ったアルゼンチン代表は、前日にキャプテンズランを行った。会場は今回も、通常はサッカースタジアムとして運用されているエスタディオ・パドレ・エルネスト・マルテアレナ(Estadio Padre Ernesto Martearena)。キャプテンズランの内容はメディアには公開されなかったが、終了後はグラウンドが解放され、2名の選手が取材に対応した。
現地メディアが特に注目しているのが、インサイドセンターのフスト・ピカルドだ。国内有数の裕福なエリアにあるサン・イシドロ・クラブでラグビーを始めた彼は、昨年11月のアイルランド戦でデビューを果たし、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦では初先発を務めた。
アルゼンチンから南米の国際リーグ、スーペル・ラグビー・アメリカ(以下、SRA/南米版スーパーラグビー)に参加するチームの一つであるパンパスに所属している。2024年シーズンの新人賞にも選出。来シーズンには、フランスTOP14のチームへの移籍がささやかれている。取材対応では、代表としてプレーする喜びを語った。
「ブエノスアイレス、サンファン、サルタと国全体を周る中で、特に新人である私は、各地にいるサポーターの温かさを実感しています。ホテルに到着すると、すでに10人以上の子どもたちがサインを待ってくれているんです。街を歩いても、どこへ行っても人がいて、写真をお願いされたり、サインを求められたり。すごく嬉しいですし、それがモチベーションになります」

2002年生まれの23歳。183センチ、105キロのがっしりとした体格で、首も太い。公主ともに激しく身体を当てる。当初、彼がミックスゾーンに来たとき、私はプロップと勘違いしてしまった。それほど身体が分厚い。そんなフィジカルを持ちながら、小さく繋ぐようなパスや数的優位時の仕掛けなど細かなスキルも高い。
これまで12番にはフランス、トゥーロンでプレーするサンティアゴ・チョコバレスが入ることが多かったが、今回のサマーシリーズでは休養を取っている。ザ・ラグビーチャンピオンシップから合流となる見込みだ。その間にピカルドはテストマッチでの経験を一つひとつ積んでいる。8月以降もプーマスの12番を背負えるか、注目だ。
また、B&Iライオンズとイングランドとの2連戦を終えて、アルゼンチンは怪我人が続出。B&Iライオンズ戦で10番を務めたトマス・アルボノロスに代わってフルバックから繰り上がったサンティアゴ・カレーラスは、脳震盪の可能性があるとして離脱。彼をはじめ、先週のイングランド戦のメンバーの中で計4人が負傷のためチームを離れた。結果、今週に入って、4人の新たな追加招集選手を発表している。
そのうちの一人がリザーブ、17番に入るナウエル・テタス・チャパロだ。2年ぶりの代表戦となる。2023年のワールドカップメンバーに選出されながら、直前の南アフリカ代表戦でアキレス腱を断裂。3度目のワールドカップ出場は叶わなかった。現在36歳、イタリアのベネトンでプレーする。待望の復帰戦、期待は高い。

一方、ウルグアイ代表ロス・テロスは、今季SRAで優勝したペニャロールのメンバーが半数以上を占める。ペニャロールはSRAにウルグアイから参戦する唯一のチームで、10年前に日本で発足したサンウルブズのような存在だ。アルゼンチン戦の先発メンバー15人のうち、ペニャロールに所属する選手は9人。代表強化と直結している。
同時に、近年ではフランスやアメリカ・メジャーリーグラグビーに移籍する傾向が強く、ロックのキャプテン、マヌエル・レインデカルはTOP14バイヨンヌ、13番のアンドレス・ビラセカは同様にヴァンヌでプレーしている。
キャプテンとともにロックへ入るマヌエル・アルダオは、メジャーリーグラグビーのマイアミ・シャークスに所属。2025年のメジャーリーグラグビーのオールスターチームにも選出されている。
フストは、そんなウルグアイ代表への印象を語った。
「ウルグアイは常に全力でハードワークしてくるチームです。80分間、集中を切らさずに戦ってくるので、非常に激しくタフな試合になると思います。でも、僕たちはこのシリーズを良い形で締めくくりたいと思っています。応援に来てくれたサポーターのためにも、勝利で終わりたいです」
ウルグアイ代表は先週のルーマニア戦で70-8の大勝を収めた。近年のスコアは21-23(2024年・ウルグアイ勝利)、16-21(2022年・ウルグアイ勝利)、29-14(2021年・ルーマニア勝利)と拮抗していただけに、この勝利はウルグアイ代表の強化を裏づけるものとなった。自信を持ってこの一戦を迎える。
また、アルゼンチン代表にとってラグビー・チャンピオンシップ前の大事なテストマッチであるとともに、ウルグアイ代表にとっても2027年ワールドカップオーストラリア大会予選の初戦、パラグアイと対戦する前の最後のテストマッチとなる。フィジカルに強みを持つ両チームが激しくぶつかり合うような良い試合を期待したい。
