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とんでもない暑さの中での試合になる。総力戦となりそうだ。
23人全員が出場したなら、日本代表に新たなキャップホルダーが8人誕生することになる。
7月5日(土)にミクニワールドスタジアム北九州(福岡)でウェールズ代表と戦う日本代表が同3日、試合出場予定メンバーを発表した。
オンライン記者会見にはエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)と、キャプテンに指名されたリーチ マイケルが出席した。
ジョーンズHCは、87キャップを持つ36歳をあらためて主将とした理由を「(現日本代表の中で)最も経験豊富な選手で、最も影響力のある存在」とし、今回の代表活動の中でも「短い期間の中でチームをまとめ、活気を与えてくれた」と評価した。
HCは、リーチを今シリーズのキャプテンとした。7月12日に神戸でおこなわれる第2テストマッチでもチームの先頭に立つ。
ジョーンズHCは、キャップのない選手を8人含んでいることについて、怪我人が相次いだ(15人前後=招集不可だった選手なども含むと思われる)ことを認めた上で、「若手選手たちがトレーニングで素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた結果」とも話した。
リーチは主将を任されたことについて「非常に光栄なこと」と語り、責任の重さを強く感じていると心境を口にした。
昨季からテストマッチでの負けが込み、日本代表に向けられる目が厳しくなっていることも感じている。そういう背景もあり、チーム、日本ラグビー全体を支えていく覚悟とした。

結果を残すことがいちばん、といった。
「新しくキャップを得る選手も多くいますが、とてもいい準備をしてきました」
試合までの残り2日。心身を整えて万全の状態で戦いに臨む。
「相手よりも暑さに慣れている」点は強みとし、「テンポの速いラグビーを展開し、試合の主導権を握ろうと思っている」と話す。そこもウェールズを上回っていると、自信がある。
「(ジャパンXVが戦った)マオリ・オールブラックス戦からは多くの学びがあった」という。
全員で試合映像を見返し、改善点を確認。特に、ボールを前に運ぶことや、フィールドをどう使って攻めるかについて議論を重ねた。
キックも使い、バランスよく攻める。
注力するのはディフェンスだ。そこが勝負のカギと肝に銘じている。
「自分たちの役割を明確にする。そこに多くの時間をかけてきました」と話し、ラインスピードを上げて前進し、タックルの精度も高めるとした。
「自分たちのアイデンティティーをディフェンスで表現したいですね。良いディフェンスは、良いアタックにもつながる。ファンにもディフェンスを見てほしいですね」
ジョーンズHCは、先発で初キャップを得るPR紙森陽太、WTB石田吉平について、信頼と期待を込めて話した。
紙森はリーグワンの2024-25シーズン、所属するクボタスピアーズ船橋・東京ベイで見せたパフォーマンスが高く評価された。「スピアーズは(リーグの中で)今季最も支配力のあったスクラムを組んでいた。彼は南アフリカ代表のマルコム・マークス(HO)と一緒にプレーしたことが大きなプラスになっている」と見ている。
「宮崎合宿でもアタック、ディフェンス両面でワークレートを高めようとしている」と、その姿勢にも触れた。
石田に関しては、あらためて日本版チェスリン・コルビ(南アフリカ代表/サンゴリアス)と呼び、俊敏さを含めた身体能力の高さを評価。テストマッチレベルにもすぐに順応できるだろうと言った。
トレーニングへの取り組みも含め、「正直、選ばない理由がなかった」。


藤原忍、李承信で組むハーフバックスについても信頼は厚い。
「藤原はリーグワンで間違いなくベストのスクラムハーフでした。どうして彼がベスト15の9番に選ばれなかったのか理解できない」と言ったのに続けて、「昨年よりもずっと成熟している。チャンスに対する認識、コミュニケーション能力も向上している」。
スクラムハーフに関しては、フランスのトップ14で優勝したトゥールーズに所属する齋藤直人も火曜日には帰国しているが、今回の起用は見送られた。ジョーンズHCによると、所属クラブから今週の試合での起用は見送ってほしいと連絡が入ったという。
ただ、すでにトレーニングは合流済み。第2テストには出場しそうだ。
李に関しては「私が日本代表に戻ってきて以来ずっと、日本のナンバーワンの10番と評価している」と語り、アタック能力、パス、キックの技術の高さを認めた。
SOとしての経験不足を「唯一の課題」と指摘し、「彼の所属クラブの事情は私たちにはコントロールできません。それでも今後、彼が日本ラグビーの最高の10番になると信じている」と続けた。
2019年のワールドカップ時にウェールズ代表が北九州をキャンプ地としたことから縁が生まれ、それ以来、地域とレッドドラゴンの結びつきは強い。
試合当日は市民がウェールズ代表の選手たちとナショナルアンセムを歌ったり、日本代表のいつものホストゲームとは違う空気がスタジアムを覆いそうだ。
ジョーンズHCはその点については「ウェールズや北九州のことについては興味がない。関心を持っているのは自分たち自身のことだけ」と言った。
ジャパンフォーカスを貫く。合宿で積み重ねてきたことを生かし、チャンスを仕留めることに注力。
「北九州市民がウェールズと一緒に国歌を大声で歌うとしたら、(日本代表の選手たちに)火をつけるでしょう」
2日後に迫った決戦へ向けた負けん気が伝わってくる。
チーム全員、勝利しか見ていない。

【日本代表メンバー/vs ウェールズ代表 2025年7月5日(土)】
①紙森陽太(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/近大/172、105/26/-)
②原田 衛(- ※2025年6月4日に東芝ブレイブルーパス東京より退団発表/慶大/175、 101/26/10)
③竹内柊平(- ※2025年6月1日に浦安D-Rocksより退団発表/九州共立大/183、115/27/13)
④エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ/ラトゥカンダヴレヴスクール/196、122/28/6)
⑤ワーナー・ディアンズ(ハリケーンズ/流経大柏/201、117/23/21)
⑥◎リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京/東海大/189、113/36/87)
⑦ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ/クインズランド大/195、110/30/20)
⑧ファカタヴァ アマト(リコーブラックラムズ東京/大東大/195、118/30/13)
⑨藤原 忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/171、76/26/10)
⑩李 承信(コベルコ神戸スティーラーズ/大阪朝高/176、86/24/18)
⑪マロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ/スコッツカレッジ/182、91/29/7)
⑫中野将伍(東京サントリーサンゴリアス/早大/186、100/28/7)
⑬ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ/ボンド大/187、102/28/28)
⑭石田吉平(横浜キヤノンイーグルス/明大/167、75/25/-)
⑮松永拓朗(東芝ブレイブルーパス東京/天理大/172、82/26/4)
⑯江良 颯(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/帝京大/172、 106/23/-)
⑰木村星南(東芝ブレイブルーパス東京/東海大/175、105/25/-)
⑱為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/明大/180、108/23/10)
⑲ワイサケ・ララトゥブア(コベルコ神戸スティーラーズ/東海大/193、120/27/-)
⑳ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ/ブリスベンボーイズカレッジ/195、120/27/9)
㉑北村瞬太郎(静岡ブルーレヴズ/立命館大/168、77/23/-)
㉒中楠一期(リコーブラックラムズ東京/慶大/174、84/25/-)
㉓ハラトア・ヴァイレア(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/日体大/185、104/26/-)
◎=キャプテン
※カッコ内は所属、出身校、身長・体重、年齢、キャップ数の順