
周りにはいつも笑顔や笑い声がある。日本代表キャップ13を持つ竹内柊平は、コーチや仲間に、よくいじられる。
リーグワン2024-25シーズンは、入替戦1試合を含む17戦に出場するも、先発したのは5試合だけ。納得できるパフォーマンスを残せなかった。
しかし、6月12日に発表された日本代表メンバー37人の中にその名前はあった。
6月16日に始まった宮崎合宿でも、この人はチームの空気を盛り上げる存在となるだろう。
同県出身者として、メイン平とともに、地元メディアにも多く登場することが予想される。
日本代表が発表される日の5日前(6月7日)、竹内の姿は菅平にあった。
5月31日に入替戦を終え、その4日後に始まった日本代表候補合宿(15人制男子トレーニングスコッド合宿)に招集された。
若い選手たちもいる中で2024年シーズンに10キャップを積み重ねた27歳は、あらためてコーチ陣の信頼を得るために自分らしさを出していた。
「シーズン中パフォーマンスがよくなかったのに、ここにいられることが光栄です。日本のラグビーを表現するチャンスを与えてもらえたことに感謝です」と話すタイトヘッドプロップは、「(練習は)ハードだけど楽しい」と言った。
チームは強豪国に勝てなかった昨シーズンの反省点を見つめ、アタック面にマイナーチェンジを施している。
選手たちは新しいシステムに対応しながら強度の高いトレーニングに取り組んでいた。

スクラムについても話した。
昨季は自分たちの低さを武器にするため、「ジャパンハイト」という共通認識を持って意思統一し、組み合った。
今年は「シバ」(芝)がキーワードとして使われていた。
例えばその日の練習の最後に組んだスクラムは、テストマッチのラストワンプレー、日本代表のディフェンスを想定して組んだ。
ここを耐え切ったら勝ち。
「そういうシチュエーションで勝ちにいくのでなはく、膝を芝すれすれまで落として組む意識をしろ、ということでした」
スクラムは、練習から真剣勝負の連続だ。前日は「ダメダメで、フッカーとなかなか合わせられず、崩れまくりました」。落ち込んだ。
そんな時、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチと話す時間があった。その内容を、「見透かされていて恥ずかしかった」という。
所属する浦安D-Rocksでの今シーズンの自分を、「やってやろう感がすごかった」と振り返る。
「後半から入ったり、ミスしたあと、自分がラインブレイクをしないといけないとか、ジャッカルやスクラムで取り返さないといけない。そんな気持ちでプレーしていました」
ジョーンズHCは、それに気づいていた。
「TK(ニックネーム)は、そういうプレーをしなくていい、と言われました。ありのままのプレーをしてくれたら脅威になるんだから、と。チームのためを思ってプレーするのは嬉しいけど、自分の仕事だけをしてくれ。去年の日本代表で、いいパフォーマンスを出せる3番ということはすべてのテストマッチで証明したんだから、自信をもってやるだけでいい、と言ってもらえました」
スクラム練でうまくいかなかったあとだったから、「めちゃくちゃ沁みましたし、泣きそうになりました」。そして、そのお陰もあったのか、この日は「いいスクラムを組めました」。
今季D-Rocksで思うようにプレータイムを得られなかったのも、周囲に俺がやってやろう感が伝わっていたからだ。
「考え過ぎていました」と気づき、原点に戻った。
D-Rocksを2024-25シーズン限りで退団した竹内は、海外で自分を高めたいと考えている。
その思いを最初に相談したのもジョーンズHCだった。昨季の日本代表活動の途中だった。
「エディーさんは一人でも多くの(日本の)選手が、トップ14でもプロD2(フランス)、プレミアシップ(イングランド)でもいいから、海外でプレーしてほしいと言っていました。慣れない環境で自分を磨くことで伸びるから、と」
竹内自身はフランスでプレーできたら最高だと考えている。昨年(2024年)11月のフランスとのテストマッチ時に感じたことがあるからだ。
「フィールドプレーで2回仰向けに倒されました。タックルも10回ほどタックルして、何回もネガティブタックルがあった。他の国とやったときには通用していたのに、まったく通用しなかったんです」
それを、自分を伸ばすチャンスと考えるのが、この人らしい。
「こういうラグビーがある環境に行ったら(自信を持っていた自分の)フィールドプレーが(さらに)伸びるのでは、と思いました。さらにフランスはスクラム大国です。(日本とは違う)スクラムにも挑戦して、ぐちゃぐちゃにされたらどうなるのか楽しみ」

フランスに挑戦した後の自分を想像して言った。
「フランスで生き残れたら、胸を張って自分の強みはフィジカル、フィールドプレーとスクラムと言える。そこへの挑戦です」
フランスのチームとの交渉は、まだ道の途中。昨秋のフランスとのテストマッチでいいスクラムを組んだことは、契約の成否につながる好材料のひとつになっているようだ。
自分のことながら幸運を祈るばかりだ。
今シーズンも2024年のように多くのテストマッチに出たい。特にウェールズとのテストマッチ、その中でも第1テストマッチは北九州(ミクニワールドスタジアム北九州)が舞台。絶対にピッチに立ちたいと思っている。
「僕の(学んでいた)、九州共立大に近い。そして4年生の時、あそこでやった大学選手権で朝日大に(19-49で)負けて(学生生活が)終わりました。僕らは、あんなにいいグラウンドで試合ができることなんてなかったので、よく覚えています。そんな場所なので、今回プレーできたらいいですね」
その試合にはロック(5番)で出場していた。
今回出場するならタイトヘッドプロップ。このスクラムをしっかり組めたなら勝利、という展開に持ち込んで、海のすぐ横のスタジアムを熱くしたい。
8人のパックで「シバ」を意識して勝利をつかむ。