6月29日にマオリ・オールブラックスに挑んだJAPAN XVには、4名の大学生が登録されていた。
そのひとりは森山飛翔(つばさ)だ。帝京大2年の右PRで、身長180センチ、体重109キロ。京都成章高校の出身である。
今年5月の長野・菅平での候補合宿を経て、同6月から日本代表に帯同。東京・秩父宮ラグビー場でのマオリ・オールブラックス戦では、若手が多いJAPAN XVの一員として後半28分からプレーした。10-36での敗戦後、取材エリアで話した。
——きょうの手応えと課題は。
「まず、課題で言えば、スクラム。為房さん(慶次朗/先発で3番)が入った時と僕が入った時とでは、全然、違います。レベルを上げていき、(為房の出場時と)同じクオリティのスクラムを組めるようにしたいです。アタックでも、もうちょっと余裕を持ちたいです。プレーをひとつに絞るのではなく、選択できるような余裕を、です」
——「余裕」。攻撃陣形に入ってパスをもらう際、複数の選択肢が頭にある状態でいたいのですね。
「いまは、(周りの選手に)言われたことしかできていない。そこで、もっと自分の引き出しを増やしていけるようにしたいです。(チームの)システムに対して『(遂行)できる』と自信を持って、練習するだけです。それ(システムに沿った多彩な動き)が確実にできるようになったら、もっと別のことにチャレンジしてもよくなる。まずはシステム(の理解など)を、完璧にする」
——スクラムを組む時のチェックポイントは。
「(腰を落として)左足を下げる時、右足に乗りながら(体重をかけて)、肩を使ってバインドする。実際に口には出さないですけど、毎回、それを頭(のなか)で言いながら組むといい感じになります」
——今回の代表入りについて聞きます。ここまで、日本代表およびその候補の練習に参加し続けていますがいかがですか。
「毎回、毎回の練習で、求められていることがはっきりしています。それがどうできているかを(日々確認する)。いい感触です」
——例年の日本代表と比べ、大学生が多くなった印象です。
「前回(6月22日のイングランド代表戦前)と比べても、(23日以降に始まったJAPAN XVの福岡合宿では)大学生が増えた。そこは少し、気が楽かなと」
——22日までは、誰と話すことが多かったですか。
「為房さんと同じ部屋にさせてもらっていて、一緒にコーヒーを飲みに行ったりしていました」
——為房さんは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ所属の23歳。森山選手と同じ右PRで、前年度まで明大でプレーしていました。
「代表のなかでは、それほど年が離れていない。仲良くさせてもらいました」
——何よりこの先輩は、スクラムを組む時の姿勢がきれいで一定です。マオリ・オールブラックス戦でもよく押していました。
「…化け物です。何でそんなに強いのか。仲がいいので、ちょこちょこと(秘訣を聞き出して)パクっていけたら」
——ご自身のことをあらためて伺います。帝京大に入ったのは、日本代表に近づくためだったようですね。
「(代表関係者などに)見てもらえる環境にいるのが大きかったです。優勝したチームに参加させていただいていた…という」
——チームは昨季、大学選手権3連覇を達成。ルーキーだった森山選手はレギュラー定着前でしたが、今回のようなチャンスをもらっています。
「今年の春季大会でも、1試合も出ていないのですが。(候補合宿への招集には)『何で僕なのだろう』と思いました。経験をしにいく、自分のラグビーキャリアに対していいものを持って帰る…という感覚で、選考に入ることは考えられなかったです」
——ちなみに、2月から活動する20歳以下(U20)日本代表には(当初から)加わらない意向を示していました。
「去年、帝京大の右PRには上杉(太郎=現九州電力キューデンヴォルテクス)さんがいらっしゃった。そのため自分が試合に出られる状況は少なく、(上杉との)差を感じていました。だから(2月の時点では)、チームでスクラムを組むことで自分がどこまで成長していけるかを考えていました」
——目指す将来像は。
「3番(右PR)で生きていくには、スクラムが強くなくてはいけないのは間違いない。そのために、自分自身の身体の強さを上げていきたいです。かつ、フィールドでのパフォーマンスを上げる。走れるPRになりたい。ディフェンスでも、(攻める側から見たら)PRは『穴』に見られがち。そこで脅威になりたいです」
約9年ぶりに登板のエディー・ジョーンズヘッドコーチからは、突進力と将来性が買われている。