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いいところはあった。
この試合で立てたプランは、セットプレーからたたみかけ、攻める。そのイメージ通り、スクラムで押し、若いBKは積極的に走った。
しかし、結果的には勝敗を競う展開にはならなかった。
6月29日、19時キックオフ。秩父宮ラグビー場でおこなわれたJAPAN XV対マオリ・オールブラックスは、36-10のファイナルスコアが刻まれた。
勝ったマオリ・オールブラックスは6トライを奪い、JAPAN XVは2トライに終わった。
超速ラグビーを掲げるJAPAN XV。そのスタイルは、試合開始直後に必ず相手を慌てさせる。
前週の日本代表×イングランド代表と同様、この試合でも先制点を奪ったのは桜のエンブレムの側だった。
前半5分だった。JAPAN XVは相手の反則からPKを得て、敵陣深い位置でのラインアウトに持ち込む。
モールを押した後のラックから、この日の共同主将の一人、HO原田衛がインゴールに入った。
この試合での最大の収穫は、先制トライのきっかけも作ったスクラムだ。三浦昌悟、原田、為房慶次朗の3人がフロントローを形成するパックは、何度も相手を苦しめ、PKを獲得した。
そのお陰でチームは何度も敵陣に入った。
前週のテストマッチで日本代表が見せたパフォーマンスから良い面を引き継ぐことができた。一方で、課題もそのまま残っていた。
チャンスは作れた。この日も9番、10番からの仕掛けやFB矢崎由高の思い切りのいいランニングで相手の防御に綻びを作った。スクラムの圧力で、相手を後退させた。
しかし、作ったチャンスをスコアに結びつけることができない。
ハンドリングミスもあれば、パスが乱れるシーンも。反則。前に出ることはできても、あと数メートルが遠かった。
先制点でリードを奪った時間は短かった。
9分、ラインアウトからの攻撃でアウトサイドを前進され、最後はFLキャメロン・スアフォアにトライラインを越えられる。
その後、漆黒のジャージーは28分、36分とインゴールにボールを置き、前半を終えて17-5とマオリ・オールブラックスがリードした。
前半を優位に進めた側は、後半の立ち上がりに5点を追加して勝負の天秤を大きく傾かせた。
3分、マオリ・オールブラックスはゴール前ラインアウトからモールを押し、機を見てショートサイドのWTBベイリン・サリヴァンへパス。背番号11がFW戦の横を走り去った。
5-22とされたJAPAN XVはその後も敵陣に入ることは何度もあった。
しかしトライライン直前のFW戦でターンオーバーを許したり、ミスでスコアできず。
一方のマオリ・オールブラックスは効率的に2トライを追加して得点差を31点と広げた。
試合終了間際、JAPAN XVにWTB根塚洸雅のトライが生まれ、1万3565人のファンは沸いた。
両チームの選手たちがヘトヘトになるほど攻め合う内容はエキサイティングだったが、エディー体制になっての初勝利は、この日も遠いところにあった。
試合後の記者会見でエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、ロッカールームの選手たちの口から「フラストレーションがたまっている。悔しいという言葉が出ていた」と明かした。
そして、好機を作った回数は自分たちが多いのにそこで攻め切れない課題がこの試合でも解消できなかったとした。
スクラムや、積極的だった矢崎への評価は高かった。チャンスを生み出した仕掛けの部分についても前向きだ。
そして、自分たちの目指すスタイルを遂行しようとする選手たちの姿勢については評価するも、「負けるのは大嫌い」と、結果に怒っていると言った。
「我々がやりたいラグビーは、集団としてのスピードを上げる中で、オプションを持ってプレーするスタイル」
その基盤となるセットプレーの中で、スクラムは毎試合成長を続けている。そこにフォーカスすれば、指揮官が約束する「毎週進化する」目標はクリアしている。
しかし、成長のスピードを高める勝利、あるいはクロスゲームをそろそろ見たい。