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【Just TALK】「トライでやりたいことを表現できたかと聞かれると、正直、ハテナ」。矢崎由高[JAPAN XV/早大3年]
前半22分、ラインブレイクから長い距離を走り切ってトライを奪った矢崎由高。(撮影/松本かおり)
2025.10.19
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【Just TALK】「トライでやりたいことを表現できたかと聞かれると、正直、ハテナ」。矢崎由高[JAPAN XV/早大3年]

向 風見也

 早大ラグビー部3年で日本代表5キャップの矢崎由高は10月18日、大阪・ヨドコウ桜スタジアムでJAPAN XVのフルバックとしてオーストラリアA代表戦に先発。ノーサイドの瞬間までフィールドにいた。JAPAN XVはナショナルチームの予備軍だ。

 身長180センチ、体重86キロの21歳は、0-26で迎えた前半22分に光った。フラットなパスへの走り込み、絶妙なスワーブとの合わせ技で、トライを奪った。

 課題も残した。強力な走者へのタックル局面で差し込まれ、後半5分には妨害行為でイエローカードを提示された。

 7-71で大敗した。経験値に長けた相手に、攻守逆転時の反応、決定力、セットプレーの安定感で上回られた。

 苦い現実を青年はどう捉えたか。報道陣に応じた。

——鮮やかなフィニッシュを決めましたが。

「オーストラリアA代表はフィジカル的にも強く、苦しんだ場面も多かったのですが、(自身のトライシーンでは)前にスペースが見えて、コミュニケーションが取れて、遂行できた。

 個人としても代表活動で久しぶりの試合だったので、緊張感はありました。まだ結果を出していないのでいい感触とは言えないですけど、ここからパフォーマンスを戻して、勝ちに貢献できるような選手になっていきたいです」

 昨年10月26日には横浜・日産スタジアムで、日本代表の一員としてニュージーランド代表戦に臨んだ。80分出場も19-64で敗れた。今回はそれ以来、約1年ぶりに国際舞台へ立っていた。

この日はフル出場(シンビンで途中退出あり)。昨年10月のニュージーランド代表戦以来の国際試合だった。(撮影/松本かおり)


——矢崎選手のスコアでチームのやりたいことを表現できたのでは。

「トライを取れたこと自体は本当によかったですし、それは自分の自信に繋げてもいいとは思いますけど、あれでやりたいことを表現できたかと聞かれると、正直、ハテナが浮かびます。これだけ大差で負けても試合後にも応援してくれるお客さんには感謝しています。勝ちという形で返さないといけない」

——ポジティブに捉えられる要素は。

「正直、現時点では思いつきません。ビデオを見て、自分のなかでよかったこと、悪かったことを次に繋げたいです」

——向こうの衝突の激しさはいかがでしたか。

「もちろん身体も大きいですし、アタックでも、ディフェンスでも一歩、半歩、前に出続けられることが。やりにくかったです」

——ご自身がイエローカードをもらってしまったことについては。

「レフリーが、正しい。それに対して僕がああだこうだ言うことはないです」

——オーストラリアA代表のトランジション(攻防の切り替え)の速さについて。

「インターナショナルレベルで戦っていくうえでは、トランジションが速いのは当たり前。逆にJAPAN XVが遅いと思うので。きょうの失点も、多くが自分たちのミスとトランジション(が原因)。そこをもっと高いスタンダードにしないと、勝ちはないかなと感じます」

——大学レベルとの違いは。

「どのカテゴリにいてもフォーカスは自分。相手の強さとかは関係なく、何が求められているのかを考え、それをやるのが僕です。ボールタッチして、ハードワークして。これが日本代表の15番として求められることです」

——このステージに帰ってきて。

「当たり前ですけど、大学の試合と盛り上がり方が違います。(代表にいたのは)たかだか1年なので『帰ってきたな』とは思わないですけど、これからもこの舞台に立てるよう努力し続けられたら」

 この午後のJAPAN XVの登録メンバーは10月12日以降に編まれ、矢崎が合流したのもそのタイミングだ。以後、キャンプ地の宮崎で正代表とトレーニングしてきた。

——準備期間は短かった。

「それは僕だけじゃなくて皆がそう。言い訳はないです」

——難しい状況にあって、首脳陣からは練習中のリーダーシップが評価されていました。

「思ったことをしっかり伝えて、チームにプラスになることを全員でするのが、強くなるうえでは大事です」

 もともと矢崎は、今秋の代表関連活動には加わらないだろうと伝えられていた。

 エディー・ジョーンズヘッドコーチは10月2日、この季節に動く日本代表やJAPAN XVのスコッドを発表しながらこう話していたのだ。

「大学生でも注目した人はいたが、(各クラブの)リーグに専念したいために参加できないということだった」

日本代表キャップ5を持つ。今季、関東大学対抗戦では3試合で8トライ。(撮影/松本かおり)


 当の本人は10月11日、こう微笑んだ。

「そういうの(代表関係のやりとり)は、僕だけのこと。(ラブコールが)あったも、なかったも、どうなるか、どうならないかも、ノーコメントで」

 その日は、神奈川・大和スポーツセンター競技場で、関東大学対抗戦Aの筑波大戦を39-13と制した。それに先んじて、代表側はクラブなどと折衝。JAPAN XVへの招集を叶えた。

 今後の動向やいかに。

 日本代表は25日に国立でオーストラリア代表とぶつかり、渡欧後の現地時間11月1日からはワールドカップ2連覇中の南アフリカ代表などに挑む。

 JAPAN XVは10月24日に敵地でおこなうホンコン・チャイナ戦を見据えるが、JAPAN XVの選手が日本代表へ昇格する可能性もある。

 他方、指揮官が発言する通り、現在の代表活動は大学シーンの重要なゲームと時期が重なる。永友洋司ナショナルチームディレクターは、「そこの調整が(必要)」と述べる。

 ジョーンズは笑う。

「(この手の質問に)自分の判断で答えられたらいいのですが。日本のラグビーについては、あなたのほうがご存じでしょう」

 翌週以降の予定について、話題の人は「わからないです。その時々で、自分で対応していければ」と語るにとどめる。

 早大でも、上級生として集団を引っ張る意欲を示している。




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