logo
【Just TALK】「日本を代表する以上、負けていい相手なんてない」。江良颯[日本代表]
えら・はやて。2001年9月18日生まれ、24歳。 大阪府出身。172センチ、106キロ。OTJラグビースクール(2歳/幼)・東大阪ラグビースクール(幼小)→枚岡中→大阪桐蔭高→帝京大→クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2024〜)。日本代表キャップ5。高校日本代表の経験もある。(撮影/松本かおり)
2025.10.14
CHECK IT OUT

【Just TALK】「日本を代表する以上、負けていい相手なんてない」。江良颯[日本代表]

向 風見也

 ラグビー日本代表で今年7月にテストマッチデビューの江良颯は、8月から日米各地でおこなわれたパシフィックネーションズカップ(PNC)で活躍した。

 フォワードパック先頭、中央のフッカーとして全4戦に先発した。フィジー代表とのファイナルこそ27-33で落とすも、持ち前のスクラムワーク、タックル、突進で光った。

 身長172センチ、体重106キロの24歳。大阪桐蔭高2年時に高校日本一となり、帝京大では主将を務めた2023年度まで大学選手権で3連覇を果たした(現在V4へ更新)。

 2024年から国内リーグワン1部のクボタスピアーズ船橋・東京ベイへ入り、南アフリカ代表84キャップでワールドカップ2連覇のマルコム・マークスと定位置を争う。

 身長189センチ、体重117キロで31歳の世界的名手と切磋琢磨する環境の中で、ある問題を抱えていた。それを解消する意味でも、PNCでのハイパフォーマンスには価値があったと明かす。

 最初の話題は、渡米中の仲間との過ごし方についてだった。

7月12日におこなわれたウェールズ代表との第2テストマッチ(写真)で初キャップを得た後、現在、5試合連続テストマッチ出場中(PNCは全4戦で先発)。(撮影/松本かおり)


——束の間の時間、同僚を交えたカードゲームで江良さんが強かったとの情報があります。

「あ、トランプですか。…結構、ずるがしこいかもしれないですね」

——運とともに戦略性も求められそうです。結果を出すためにスマートにプランを練るのは、普段からの習慣ですか。

「旅行とかは、計画するタイプです。暇があったら海外に行く、みたいな」

——長いアメリカ遠征から帰ってきた9月のオフは…。

「今回(PNC後)の2週間は、日本にいました。実家でゆっくりしました」

——あらためて、PNCでよい働きができたことをどう振り返りますか。

「自分にとっては大事な大会でした。試合を重ねるうちに自信がついてきた分、落ち着いてできました。ボールキャリーでも絶対に相手をドミネートする、接点の起こるシーンは絶対に勝つ、と。だから力強いプレーができたのかなと」

——「自信」。一時は損なわれていたのでしょうか。

「リーグワンでマルコムと一緒にやるなか、(競争相手が)あれだけすごい選手だからと受け身になっていたシーンがあって。思い切ってプレーしづらいところもありました。マルコムが試合に出たら安定する…と、自信をなくしていたところも」

——実質1年目から主力組に選ばれながら、そんな葛藤にさいなまれていたとは。

「(デイン・)コールズ(参加した2023-24年シーズン終盤に同僚だったニュージーランド代表90キャップのフッカー)とも少しの期間やりましたけど、(2人とも)どの場面においてもワールドクラス。こんだけ、えげつないんや…と」

——とにかく国際舞台で戦う「自信」を取り戻したのが、江良さんにとってのPNCだったのですね。準決勝ではトンガ代表を62-24で圧倒しながらも、足を痛めているように映りました。それを踏まえれば、よく最終決戦の場に立てました。

「足が両方ともつって、何か、違和感があるなと思ったんですけど…。S&C(コーチ)やトレーナーの方に支えてもらいながら、決勝に出られたという感じです」

——確かに医療の力にも助けられたのかもしれませんが、そもそもご本人に意志がなければどんなサポートがあっても立ち上がれないような。

「エディー(・ジョーンズヘッドコーチ)さんも『リッチー・マコウは骨折しながらワールドカップに出た(ニュージーランド代表148キャップの元主将は2011年のニュージーランド大会には痛みを押して出場していた)』と、マインドセットについて話した。やるしかないと思いました。

 中学の時も、結構、根性のチーム(枚岡中)やったので」

チームにすっかり溶け込み、のびのびと力を出す。(撮影/松本かおり)


 大学時代も毎日、寮から専用グラウンドへの道のりを約30分かけて歩いた。忍耐の人だ。

 頑張る理由がある。ナショナルチームへ入ってからは、「子どもたちのため」、「日本を背負って」との発言を繰り返すようになった。その真意も語った。

「僕自身がずっと日本代表を見てきました。幼い頃からの夢でした。(かつての自分のような)子どもたちがいます。強い日本代表が憧れであり、ヒーロー。その位置にいると自覚して、体現しなくてはいけない」

——大きな期待を背負うことに苦しさは感じませんか。

「常に、こう、(フィールドでのことを)考え続けるのは、難しいことです。リラックスする場面は大切だとPNCで感じました。

 ウェールズ(代表2連戦、7月)の時は、練習がない時もスローイングなどの不安について考えてしまって、すごくしんどかったんです。初めての(代表)キャンプで、はじめましての人もいましたし。

 ただPNCで(開催国のひとつである)アメリカへ行った時は、皆といろいろと喋ったり、さっき出たようなカードゲームで遊んだり、買い物をしたりすることも楽しみました。おかげでオン、オフを切り替えてできた。もしこのツアーがなかったら、ずっと(7月までと)一緒のままだったかもしれないです。

 考え過ぎず、試合の時には背負って戦えたら」

 10月25日より国内外で5つのテストマッチをおこなう。

 渡欧後の現地時間11月1日には、イングランドのウェンブリースタジアムに乗り込む。

 マークスを擁する南アフリカ代表とぶつかる。

「絶対に、倒しに行く気持ちです。マルコムはチームメイトですし、リスペクトもします。僕の120パーセントの力を出さないと勝てないとわかっています。ただ、あれだけすごい選手と日頃の練習から一緒にできているのは僕しかいない。日本を代表する以上、負けていい相手なんてない。本当に勝ちにいきます」




ALL ARTICLES
記事一覧はこちら