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情熱あふれるロス・コンドレスと、また会える。W杯出場決めたチリ代表を支えているもの。
2023年ワールドカップ時のチリ応援団。大声援だった。(撮影/松本かおり)
2025.10.01
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情熱あふれるロス・コンドレスと、また会える。W杯出場決めたチリ代表を支えているもの。

中矢健太

 9月27日。チリのサウサリート・スタジアムで行われたチリ代表 『ロス・コンドレス』(以下、コンドレス)とサモアの第2戦(RWC2027/South America/Pacific play-off)。31-12でチリが試合を制した。
 第1戦は32-32で引き分けており、この結果を受けて、チリがワールドカップ2027年オーストラリア大会への出場権を獲得した。2023年フランス大会での初出場に続き、2大会連続での出場が確定した。

 また、チリとサモアは前回大会で、日本を含む同じプールに振り分けられていた。両者の対戦は43-10でサモアが圧倒しており、今回は2年ぶりの再戦だった。

condores rugbyの公式Instagramより


「サウサリート・スタジアムはほぼ満員で、素晴らしい試合が繰り広げられました。観客の声が時折大きすぎて、主審のルーク・ピアースはインカムでTMOや副審の声を聞き取れないほどでした。さらに、コンドレスのサンティアゴ・ビデラは試合後、インタビュアーからの質問が聞き取れなかったと語りました」(Americas Rugby News)

 筆者は今年6月にチリ・サンティアゴを訪れ、現地のラグビーを取材した。コンドレスへの直接取材は叶わなかったが、現地のラグビーショップを切り口に、ラグビーへの強い情熱やワールドカップからの進化を知ることができた。

 チリ国内にはプロリーグはない。だが、首都であるサンティアゴを中心にARUSA(La Asociación de Rugby de Santiago)というラグビー協会主導のアマチュアリーグがある。
 サンティアゴ以外に拠点を置くチームも含めて、約110のチームが加盟しており、ディビジョンは4部まである。さらに35歳以上、18歳以下、16歳以下の部門も設置されており、ラグビーをプレーできる環境は充実している。

 2023年のワールドカップ以降は、選手の海外移籍が加速している。
 コンドレスの絶対的存在であるSOロドリゴ・フェルナンデスはイタリアへ。FBイニャキ・アジャルサエスコは以前からフランス2部でプレーしていたが、2024年にTOP14ヴァンヌへ。エスコバル兄弟の次男であるHOディエゴはラシン92でプレーしている。

2大会連続W杯出場のチリ。2023年大会では日本と対戦。12-42と敗れるも先制トライを奪い、大きな声援を受けた。(撮影/松本かおり)


 取材をさせてもらったサンティアゴ唯一のラグビーショップ『LA OVALADA』のオーナー・ホワニは、コンドレスとの関わりが深い。
 ホワニ曰く、海外組の選手たちは現地で学んだことをチームに還元しており、それが代表チームとしてのスタンダードを向上させた。2年前から、チームのレベルは確実に上がっているという。

 また、パブロ・レモイネ ヘッドコーチは、この海外組と国内組の双方を強化するため、頻繁にトレーニングキャンプを組んでいる。例えば、南米大陸の国際ラグビーリーグであるスーペル・ラグビー・アメリカ(SRA)に参加しているチリ唯一のプロチーム、セルクナムには国内の代表候補選手たちが揃っている。
 2020年まで日本で組織されていたサンウルブズに近い形態で、アルゼンチンやウルグアイから同じくSRAに参戦しているチームとの対外試合を組めることが、代表強化に大きく寄与している。このSRAもパンデミックの影響を受け、2021年から本格的に始動。ここで培った選手の経験値が、コンドレスのテストマッチにも活きている。

 筆者が滞在していたタイミングではセルクナムのプレーオフが続いており、逆に海外組がそれぞれのシーズンを終えて帰国していた。
 レモイネHCは先に海外組だけでキャンプを組み、トレーニングをおこなっていた。プレーオフ準決勝で敗れたセルクナムの選手たちはその後、海外組と合流。チームとして強化するための時間が、早い段階から確保されていた。

チリラグビーの強化拠点は、こんなところ。(撮影/中矢健太)


 そのキャンプが行われるトレーニング施設の一部を見学することができた。サンティアゴの中心部から車で40分ほどの距離にある。アルゼンチンとの国境に沿ってそびえ立つ、世界最長のアンデス山脈。雪化粧のかかった山々の麓にあるこの施設は、まるで秘密基地のような雰囲気が漂う。U20などユースからトップ代表、またセルクナムの拠点にもなっており、ここで一貫した育成を図っている。

 そんなチリの出場が決まったラグビーワールドカップ2027年オーストラリア大会。アメリカ大陸の代表としてアルゼンチン、ウルグアイ、アメリカ、カナダ、チリの5チームの出場が確定した。出場国が従来の20から24に増加したこともあり、ワールドカップ史上、アメリカ大陸から出場する国は最多となる。プールステージの組分け抽選会は今年12月3日に予定されている。

 サモアは1991年に男子ラグビーワールドカップに初出場して以来、すべての大会に出場している。今回の結果を受けて、今年11月8日〜18日にドバイで開催される最終予選トーナメントに回り、ベルギー、ナミビア、ブラジルまたはパラグアイ(10月11日と18日に対戦)のいずれかと対戦。この勝者が、ワールドカップへの 24番目かつ最後の枠を勝ち取ることになる。





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