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【with サクラフィフティーン/RWC2025⑭】絶対勝つ。私たちのため、みんなのために。
左からマーク・ベイクウェル アシスタントコーチ、香川メレ優愛ハヴィリ、ンドカ ジェニファ。(撮影/松本かおり)
2025.09.07
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【with サクラフィフティーン/RWC2025⑭】絶対勝つ。私たちのため、みんなのために。

田村一博

 ラグビーワールドカップ2025(以下、RWC2025)の日本にとっての最終戦、プールステージ第3戦が9月7日におこなわれる。

 その試合の前日、サクラフィフティーンはヨークの街の郊外にある大学のグラウンドでキャプテンズランをおこなった。
 この日は珍しく、一日中穏やかな天気に恵まれた。

 選手たちは思い思いにウォーミングアップを済ませ、チーム全体でのトレーニングに移行した。
 別メニューで練習に取り組んでいる者はおらず、全員がリラックスしながらも、いい緊張感の中にいた。

 トレーニング後、NO8で初めて先発するンドカ ジェニファと、初めてメンバー入りして23番のジャージーを着る香川メレ優愛ハヴィリ、そしてマーク・ベイクウェル アシスタントコーチが取材に応じた。

 ンドカは今大会の第1戦、アイルランド戦(14-42)はメンバー外も、第2戦のニュージーランド戦(19-62)でベンチ入り。2大会連続で大会王者となった相手に、後半13分からピッチに立った。

 最終戦へ挑む仲間たちの雰囲気について、「チームの状況はとても良くて、勢いに乗っています」と話し、「個人的には、(スペインに)勝つ気持ちで練習に臨んできました。その準備はできています」と続けた。

出場メンバーだけでなく、全員で準備し、戦ってきた。(撮影/松本かおり)


 大舞台でつかんだ8番のジャージー。思いが通じたのは、仲間のサポートもあったからだと言った。
「ジャパンは凄くいいチームです。お互いをプッシュできています」
 頑張れる理由はほかにもある。
「日本で応援してくれている人もいっぱいいて、両親や会社の人も、凄く応援してくださっています。その思いも、いいプレッシャーに変えて頑張りたいです」

 168センチ、80キロの24歳。この先、長くキャリアを重ねていく存在になるだろう。
 しかしいまは、目の前のスペインに勝つことしか考えていない。
「(勝つことは)自分たちが今まで頑張ってきた努力の証明にもなると思うし、女子ラグビーをしている小さな子たちが、日本代表になりたいと思ってくれるようになることにもつながる。明日の勝利は、本当に大事です」

 求められているのは、持ち前のパワーを使い、チームを前に出すことだ。ブラックファーンズ戦でも思い切ってプレーしていた。
「アタックで地道に前に出るのが自分の強みだと思っています。次の試合でも、それを出せたらな、と思います」

 ベイクウェル コーチも、ンドカについて、「アタック、ディフェンスともに前に出て、チームを前に進めてくれるプレーヤーです。チームをフロントフットに持っていってくれる。そこがいちばんの強みで、それは、チームが必要としているもの。ジェニーが、レベルアップしてくれていることを嬉しく思っています」と期待する。

 香川は、「準備万全です」と頼もしかった。
「絶対に勝たないといけない最終戦。自分の最大限の力を発揮したいです」

 出番のなかった今大会の過去2戦。「1 戦目 2 戦目はチャンスがありませんでしたが、何があるか分からない。どんな状況でも万全の準備をしなきゃいけないと思っていました」。
「出場した時に最高のパフォーマンスを出せるように準備しよう、との思いで練習に取り組んできました」と話した。

 国内で戦ったスペインとの2試合。香川は秩父宮ラグビー場での第2テストマッチで、2トライを上げる活躍を見せた。
 しかし、安心も慢心もない。
「あの時とワールドカップでは舞台もまったく違うし、スペインも勢いが上がっているので、あの時の自分とは変わった自分で戦わなきゃいけないと思います」
 相手も調子が上がっているかもしれないが、自分自身についても、「前より強く戦える」と言う。

9月7日、ヨークの天気は穏やか。スタジアムに入る選手たちも気持ちが入る。(撮影/松本かおり)


 大会に入って、ノンメンバーの一員として、試合メンバーに圧力をかける日々を送ってきた。「(試合に出られなくても、誰も)腐る暇もなく、前を向いて頑張っていた」と感じた。
 そんな仲間に励まされて、自分もより強くなった。その力を余すことなく出し切る。

 勝利で多くの人に恩返しをしたいと話す香川は、1戦目、2戦目でプレーした選手たちが示した日本ラグビーについて、多くの人たちが称えてくれたと感じている。
「その価値を守る戦いをしたい」と誓った。

 ベイクウェルコーチは、スペインについて、「日本での対戦時よりダイナミックにプレーし、すべての面で脅威的な存在になっている」とする。また、ホームで戦ったときのような追い風もない。7月と同じ気持ちで戦ってはいけないと警戒した。

「我々が勝つには、容赦なく決めるところはしっかり決める。そういったことが必要になると思います。勝利することは決して簡単ではないという覚悟が必要です」

 すでに8強進出を逃したチーム同士の戦いは、決して消化試合ではない。
 お互いが秘めた闘志をぶつけ合う80分となる。

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