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【RWC2025】ブラックファーンズ、プールステージの大一番、アイルランド戦へ。日本戦3トライの18歳、ソレンセン・マギーの凄み。
日本戦で3トライと、高いランニングスキルを披露したブラクストン・ソレンセン・マギー。(撮影/松本かおり)
2025.09.07
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【RWC2025】ブラックファーンズ、プールステージの大一番、アイルランド戦へ。日本戦3トライの18歳、ソレンセン・マギーの凄み。

松尾智規

 18歳の新星がワールドカップの大舞台で輝いている。
 イングランドで開催中の女子ラグビーワールドカップ(以下、W杯)のプールC第2戦(8月31日)、序盤は日本代表の勢いに押される場面もあったブラックファーンズだったが、後半にかけて攻撃力を爆発させ、62-19で快勝。プール戦残り1試合を残してプレーオフ進出を決めた。

 この試合で大きな存在感を示したのが、背番号15のブラクストン・ソレンセン・マギーだ。3トライを挙げ、文句なしでプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選出された。
 試合後、ソレンセン・マギーは「家族が観戦に来てくれた中でプレーできたのは、本当に特別な事だった」と語った。

◆高校生から半年で世界の舞台へ。


 昨年まで高校生だった若干18歳のソレンセン・マギーは今年、スーパーラグビー・アウピキ(NZ国内の女子のスーパーラグビー)でデビュー。ブルーズでSOルアヘイ・デマント、WTBポーシャ・ウッドマン・ウィクリフらのワールドクラスの仲間から学び、試合を重ねるごとに成長。代表まで一気にのぼりつめた。
 代表デビューとなった5月10日オーストラリア戦では、いきなり2トライを挙げる活躍で衝撃デビュー。続く強豪カナダ戦(5月19日)でも巧みなプレーでトライを挙げる活躍を見せた。
 その2試合で首脳陣からの信頼を得てW杯の切符もつかむ。わずか半年の間にスーパーラグビー、代表、そしてW杯と、3つの大きな舞台を一気に駆け上がる急成長を遂げた。

ブラクストン・ソレンセン・マギー(右から2人目)は、日本戦のFBからWTBにポジションを移してアイルランド戦に出場する。(撮影/松本かおり)


◆本来のポジションで躍動。


 W杯の初戦スペイン戦(8月24日)でソレンセン・マギーは、WTB(14番)で出場して1トライを記録するも、やや控えめなパフォーマンスとなった。しかし、続く日本戦(8月31日)では、本来の持ち場のFB(15番)に復帰し、攻守にわたり持ち味を最大限に発揮。のびのびとプレーし、その実力を存分に示した。

 ソレンセン・マギーの魅力は多彩だ。スピードに加え、巧みなフットワークでタックルを外し、走りながら両手でボールを扱うことで、周囲へのパスを意識させる。相手ディフェンスが迷った瞬間に、巧みなダミーで抜けていく。その高度なスキルは、とても18歳とは思えない。

 さらに、細身に見える体格からは想像しにくいがタックルも強烈。スーパーラグビーやW杯前のテストマッチでは、自分より大柄な相手でも確実に止める力を見せてきた。FBとしての守備力の高さが、18歳での起用を後押ししている。
 W杯2試合を経て、ソレンセン・マギーは世界の舞台で才能を示した。日本戦の前半ではゴールキックも任され、6 本中4本成功。18歳の新星がブラックファーンズの連覇のカギを握る存在になりつつある。

 ソレンセン・マギーと共に、開幕前にチームの分析で「超目玉」として紹介したFLジョージャ・ミラーも、初戦に続き日本戦でも圧巻のパフォーマンスを披露した。この2人の活躍が日本代表のプレーオフ進出を阻む決定打となったと言える。
 さらに、WTBポーシャ・ウッドマン・ウィクリフは代表通算50トライを達成し、ニュージーランド(以下、NZ)のみならず、世界中のメディアを大いに賑わせた。

アイルランド戦のメンバー。(PHOTO/New Zealand RUGBY)


◆FWは固まりつつも、オプションが多いBKは調整中。


 9月5日、ブラックファーンズの指揮官アラン・バンティングHCは、プールステージ第3戦のアイルランド戦(9月7日)の試合登録メンバー発表。前戦の日本戦から先発メンバーの変更はわずか2人で、いくつかのポジション調整もおこなわれた。

【フォワード】
 フロントロー(PR、HO)とセカンドロー(LO)は日本戦と同じメンバー。バックローでは、NO8にリアナ・ミカエレ・トゥウが先発に復帰した。レイラ・ サエがブラインドサイドFL(6番)にシフト。前戦で6番を付けたジョージャ・ミラーがオープンサイドFL(7番)に戻り、開幕戦のスペイン戦のバックローの布陣となった。

今大会好調、凄まじいボールキャリーを連発するFLジョージャ・ミラー(左)と、日本戦で通算50トライ目を挙げたWTBポーシャ・ウッドマン・ウィクリフ。( PHOTO/ New Zealand Rugby)


【バックス】
 ハーフ団とCTB陣は前戦と同じメンバーを維持。ウッドマン・ウィクリフが右WTB(14番)から左WTB(11番)、前週15番のソレンセン・マギーが右WTBにシフトされた。開幕戦で15番を付けたレニー・ホームズが再びFBで先発と、再びチャンスを与えられた。
 控えには、開幕戦で足首を負傷したWTBアイシャ・レティ-イイガの怪我が癒えてベンチ入り。一方、先週11番で出場のケイトリン・ヴァハアコロは怪我ではないが、メンバーから外れた。
 フォワード陣はメンバーを固めてきた印象だが、バックスのSHとFBのセレクションを見ると、まだ最適な布陣を模索している様子がうかがえる。それでも、チーム全体を見渡すと、先発・控えともに非常に強力な布陣と言える。

◆2014年のリベンジでプール予選1位を狙う。


 昨年のWXV1では、格下と見られていたアイルランドに27-29で敗れる屈辱を味わったブラックファーンズ。プール予選1位通過はもちろんのこと、リベンジに燃えている。
 その敗戦はミスの多さもあったが、やはりフォワード戦での苦戦が大きく響いた。バックスに陣は能力の高い選手が揃うだけに、プレーオフの先に見えるカナダ、フランス、イングランドといった強豪に勝つには、まずアイルランド相手にFWの強さを示すことが不可欠だ。

 2014年のW杯、ブラックファーンズはプールステージでアイルランドに14-17で敗れている。その結果、準決勝進出を逃している。あの時の借りを返すとともに、昨年のリベンジと合わせてチームのモチベーションは高い。

日本戦でワールドカップデビューのSHマイア・ジョセフ。前日本代表HC、ジョセフ氏の娘。(撮影/松本かおり)


 指揮官は、「私たちの(全員の)選手たちは、過去2試合で出場の機会を得た。選手起用においては、一貫性とチームとしてのまとまりが重要なポイントとなる。ここ2週間で得た重要な学びを活かし、チームは着実に成長している」と自信のあるコメントをした。

 ソレンセン・マギーは、この試合で本来の持ち場のFBでの出場ではないが、フィニッシャーとしての能力もある事から心配は要らない。
「ここからは成長するしかないと感じた。ブルーズでプレーする彼女たち(デマント、シルビア・ブラント、ポーシャなど)と一緒にプレーできることが、自信につながる」と語り、18歳とは思えない落ち着きぶりを見せている。

 アイルランド戦でソレンセン・マギーは、どんなパフォーマンスを見せるのか。W杯期間中、さらなる成長が楽しみだ。

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