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8月29日(金)〜31日(日)の3日間、韓国仁川市にあるハナグローバルキャンパスで、OK金融グループウッメンラグビー部(以下、OKウッメンラグビー部)が主催するラグビーアカデミーが開催された。
韓国国内の実業団チームが初めて開催するラグビーアカデミーに、韓国全土から中学生チームが10校、総勢174名の選手とコーチが参加した。

韓国では小学生対象のラグビースクールはほとんどなく、多くが中学に進学して初めてラグビーボールに触れる。
ラグビーを始めて間もない彼らに「本当のラグビーの楽しさを学ばせてあげたい」という、OK金融グループの崔潤会長(前大韓ラグビー協会会長)の強い思いによって、今回のアカデミーが開催された。

アカデミーのメインテーマは「本当のラグビーに出会う」。2泊3日のアカデミーはパス、キック、タックル、ブレイクダウンなどの基本スキルの他にも、競技規則や栄養学、テーピングの実技も含まれている。
また、ラグビー界で大きな功績を挙げたゲストたちによる講義や、OKラグビー部の現役選手たちとの座談会などもおこなわれ、世界中で愛されるラグビーの魅力を存分に学べる内容だった。
今回参加したチームの平均部員数は16.4名。日本のように各協会主催の定期的なコーチング講習会や、ラグビー関連の教材を探すことは容易ではない。
また、近隣にラグビーチームがほとんどないため、子どもたちが実戦形式のラグビーを経験する機会が限られているのが現状だ。
初めて開催されたラグビーアカデミーは新しい仲間と出会い、ラグビーの魅力を満喫できる機会となった。

【写真右上】タックル直前に低い姿勢になるよう指導するOKウッメンラグビー部の李光紋(イ・グァンムン)コーチ。元日本のトップリーガー(サントリー/トヨタ/東芝)。(撮影/李鍾基)
【写真左下】初日におこなわれたパス練習で指導するキム・チャンドゥル選手。(撮影/李鍾基)
【写真右下】キックスキルを細かく指導するイ・ジョンガプ選手。(撮影/李鍾基)
韓国国内の実業団チームは、最も長い歴史を持つ韓国電力(1986年創部)、ポスコE&C(2010年創部)、現代グロービス(2015年創部)と、2023年に社内のクラブチームから実業団に生まれ変わったOKウッメンラグビー部の4チームが国内リーグでしのぎを削っている。
OKウッメンラグビー部は創部から2年で、急速に強化を進めてきた。社員選手の積極雇用や外国人選手の起用など、韓国実業団チームとして初めての試みも積極的に採り入れている。
昨年12月にNetfrixで公開された『最強ラグビー』(国内実業団と大学チームによる対戦を題材としたスポーツリアリティーコンテンツ)では、地力で勝るポスコE&Cラグビー部に逆転勝利を収めた。

【写真右上】2日目のブレイクダウンのトレーニングでは、OKラグビー部選手たちも身体を当てながら指導。(撮影/李鍾基)
【写真右下】最終日に行われたタッチゲーム大会。仁川市にあるプピョン中学のカン・ウヌ君(中2/SH)は上級生にも対しても果敢にチャレンジしていた。(撮影/李鍾基)
『最強ラグビー』で戦っていた選手たちは想像以上に強くて上手かった。
大田広域市にあるカヤン中学から参加した、キム・ミンゴン君(中3/CTB)とイ・ドユン君(中3/PR)は、「選手たちの筋肉がすごかったし、キック練習がすごく楽しかった。次回も絶対参加したい!」と笑顔で語った。
今回のアカデミーは社内のスポーツ事業を管轄する部署の「スポーツ団」(ラグビー部の他にプロバレーボールチーム、ゴルフ奨学財団などのスポーツ事業を担当)が統括して運営された。

現役時代、OKウッメンラグビー部の初代キャプテンを務めスタンドオフとして活躍したハン・クミン氏は、昨年(2024年)5月に引退後はスポーツ団所属の社員としてセカンドキャリアを歩み始めた。
高麗大学卒業後、国軍体育部隊「尚武」に2年間所属した。除隊後に中学校のコーチを務めたが、ラグビー選手としてもう一度挑戦したかったクミン氏に、OK金融グループのラグビーチーム所属社員募集の案内が届いた。
社員として働きながら、ラグビーができる環境が嬉しかった。そんな選手たちにとって、よりハイレベルなラグビーに挑戦できる、2023年の実業団への転換は絶好の機会となった。
今は社内のスポーツ事業やラグビー部の運営に奔走しながら多忙な日々を過ごす。引退後もラグビー部に関わる今の仕事に大きなやりがいを感じている。
ハン・クミン氏は、今回のアカデミーを通して「一人でも多く高校進学後にラグビーを続けるきっかけになれば嬉しいし、将来のOKウッメンラグビー部への入部も期待している」と語った。

10月13日に釜山で開幕する全国体育大会(日本の国体にあたる)を控えて大切な時期であるにも関わらず、呉英吉監督は「子どもたちの(新たなことへの)達成に喜びを感じ、伝えることの難しさを体感できたことは、選手にとっても成長できる大切な経験だった」と語る。
最終日の退所式で呉英吉監督は「ラグビーは一人ではできないから、横にいる仲間のことを信じて助け合うことがいちばん大切。ラグビーを通してそのことを学べば、きっと社会でも通用する大人に成長できる。今回のアカデミーを通して、韓国ラグビーの未来への期待が大きくなった」と、子どもたちに向けて温かいメッセージを送った。
韓国のコーチたちは「クムナム」という言葉をよく使う。直訳すれば「夢の木」、つまり将来の有望株のことだ。
韓国ではマイナースポーツの「ラグビー」を選んでくれた大切な「クムナム」たちに、本当のラグビーの楽しさを伝えて綺麗な花を咲かせてほしい。
OKウッメンラグビー部、そしてコーチたちの熱意と優しさが詰まった3日間だった。

