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【太陽生命ウィメンズセブンズ】PEARLSが花園で今季2度目のV。快足コスタきらめく。新人・須田、「楽しくて嬉しくて」
ファイナルは好ゲームに。PEARLSもナナイロプリズム福岡も力を出し切った。(撮影/松本かおり)
2025.08.04
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【太陽生命ウィメンズセブンズ】PEARLSが花園で今季2度目のV。快足コスタきらめく。新人・須田、「楽しくて嬉しくて」

田村一博

 2日間、これでもかと強い日差しが照りつけた。
 選手たちは誰もが真っ黒に日焼けし、ジャージーは汗でびしょびしょ。そんな中で、PEARLSが今シリーズ2度目の優勝を手にした。

 8月2日、3日に開催された太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2025の第3戦、花園大会の決勝は、好ゲームとなった。

 PEARLSと戦ったのは、今季第2戦でもファイナリストとなったナナイロプリズム福岡。今回こそ頂点に立ちたい同チームは気迫にあふれ、前半4分に中村知春、後半1分に小笹知美がトライを挙げるなど先手、先手とリードし続けた。
 しかしPEARLSは後半2分過ぎからギアを上げて、21-17と逆転勝利をつかんだ。

 この試合で強く輝きを放ったのがタリア・コスタだ。ブラジル代表で、今大会のMVPにも選ばれたスピードスターは、154センチと小柄ながら快足で、圧倒的な存在感を誇る。時速33.7キロのトップスピードで走ると、ディフェンダーは置き去りにされる。

【写真上】中央がMVPのタリア・コスタ。左はガブリエラ・リマ。右は末結希。(撮影/松本かおり、以下同)
【写真中左】庵奥里愛→タリア・コスタのホットラインでトライを挙げたPEARLS
【写真中右】ナナイロプリズム福岡の吉野舞祐が抜け、PEARLSのオリブ・ワザーストンが追う
【写真下】中村知春の先制トライでナナイロプリズム福岡が先手を取ったが……

 その実力がいろんな局面で発揮されたファイナルだった。そして、そのスピードはアタック時だけでなく防御時にも貢献度の高いプレーを実現させ、試合のフィナーレには攻める相手のボールを奪い取って、まさに勝利をもぎ取った。

 最初の見せ場は開始1分過ぎだった。ナナイロのボールキャリアーが抜け出し、トライラインへ向かってスピードを増した時だった。
 アウトサイドのコスタはすぐに反応し、急加速で追走してトライセーブタックル。走り切られていたら、相手が大きなモメンタムを得るシーンだった。

 0-7とリードされていたハーフタイム直前には、自陣深い位置でのスクラムから展開したアタックを、コスタが一発で仕上げた。
 一人内側の庵奥里愛がディフェンダー間に鋭く走り、半ズレ状態を作ってラストパス。背番号7は約80メートルを走り切った。
 7-7として前半を終えた。

 そして最後の見せ場はラストシーン。PEARLSが21-17と逆転し、ナナイロの渾身のアタックと対峙している時だった。
 相手の切り札、レアピ・ウルニサウが外に走ろうとしたところを庵奥が倒す。その時、瞬時にボールに手をかけて反則を誘ったのがコスタだった。

 試合後のコスタは、「チームとして練習でやってきたことを出せて嬉しい」と言った後、準決勝で敗れた前回大会から再浮上できた心の動きをこう話した。
「ウィニングマインドセットをもう一度取り戻そう、と思ってきました。相手が誰でも自分が勝つ、と信じてプレーしました。そうなったら、誰にも止められない。試合前にパッションを出して戦おうと声を掛け合いました。その通りのプレーができたと思います」

2025年シリーズで、熊谷大会に続き2回目の優勝を手にしたPEARLS。山中美緒主将は前回の3位という結果を受けて、「ハングリー精神を思い出して戦おう、と」。それが好結果を呼んだ。(撮影/松本かおり)
北九州大会に続いて2大会連続決勝進出のナナイロプリズム福岡。馬場希美主将、ベテランの中村知春とも、「もっと丁寧にプレーしないといけない」と矢印を自分たちに向けてグランドファイナルへ挑む。(撮影/松本かおり)


 笑顔が溢れていた試合後、その中には須田倫代の顔もあった。今季追手門学院大から加わったニューフェイスは、花園大会では後半からピッチに立つことが多かった。
「インパクトを与えてこい、と言われています」と話し、チームの流れが良ければそれを維持し、悪い流れなら断ち切り、上向きにするハードワークをするように心掛けた。

 今季のPEARLSは第1戦の熊谷大会でも優勝しており、第2戦の北九州大会は3位。大学時代は上位に進出することができなかった須田は、「(常に上位にいるのは)めっちゃ変な感じ」とケラケラ笑った。

「準決勝や決勝の舞台に立っているのは、いままでにない経験。強いチームは上位にいることを当たり前にして、それだから強くなる」と言い、自分もこの流れを継続していきたいと前を見る。
 関西出身。今大会は家族や友だちの声援を受け、気持ちよさそうにプレーしていた。

 女子セブンズ日本代表キャップ20と、国際舞台を知る須田だが、2024年の夏に開催されたパリ五輪への出場は逃した。
 同年3月、アメリカでの強化合宿中に左膝の前十字靭帯を断裂。手術はせず、保存治療により五輪を目指す決断をしたものの、オーストラリアでの最終セレクションを兼ねた合宿で再受傷する。7月下旬に手術を受けた。ちょうど、サクラセブンズがパリで戦っている時だった。

「1回目の怪我の時は間に合わせようとモチベーションも高かったのですが、2回目の時は絶望感しかなかった。オリンピックは泣きながら見ていました」と当時を回想する。
 そんな絶望から這い上がっている最中にある。

 リハビリ期間を使って、大学卒業後の進路を考えた。PEARLSへの入団を決めたのは、チームを訪れた時に感じた空気をとても心地よく感じたからだ。
「みんな明るくて、ファミリーっていう感じがしました。外国人選手も分け隔てなく仲がいい。直感で決めました」

 その感覚は正しかった。そこは、自分を高めてくれる場所だった。
 例えば、花園大会で大活躍のコスタ。「すごい選手とは分かっていたのですが、普段から真面目で努力家。そして、速いだけじゃなくてうまいんです」。

PEARLSのルーキーでチームへの貢献度が高い須田倫代。大怪我から復帰を果たし、再びサクラセブンズ入りを狙う。(撮影/松本かおり)


 ワールドクラスのニュージーランドのスター、サラ・ヒリニの存在感も、「スキルはもちろん、それ以外もすごい」と体感を語る。
「チームがうまくいっていない時にかける、言葉の力がすごいんです。サラさんが喋ったら、(焦っていた)みんなが元に戻る。フィールド外でのコミュニケーション能力も高いし、楽しい人です」

 住友電装で仕事もする。直属の上司はチームメートで先輩の末結希。「いろいろ教えてもらいながら」広報の仕事に取り組み、PEARLSのことを多くの人たちに知ってもらう役目も担っている。
 毎日が楽しい。その充実があるからパフォーマンスも順調に上がっている。

 6月下旬の第1戦、熊谷大会の2週間前に試合形式の練習に加われるようになった。実戦を重ねながら感覚を取り戻している状況だ。
「熊谷大会はすごく緊張していて、あまり前が見えていませんでした。2戦目の北九州では緊張が取れ、自分のプレーができてきた。今回(花園大会)は、チームの中で自分が何をすべきか考えながらプレーできたと思います」

 花園大会ではキックもよかった。チームの期待に応え、ゲームをうまくコントロールしながら、行ける時には自分で仕掛けた。得意のステップワークから長い距離を走り切るトライもあり、本人の表情も明るい。
 3キロ減でシャープな体躯となり、スピードも怪我前より上がった。サクラセブンズに復帰する意欲も高い。

 五輪前に再受傷し、絶望していたオーストラリアからの帰国の便で、現在サクラセブンズを率いる兼松由香ヘッドコーチから「強くなって戻ってきなね」と言われたことを覚えている。
 8月17日に札幌でおこなわれるグランドファイナル(今季第1戦から第3戦の総獲得ポイント上位8チームがノックアウト形式で年間王者を争う)で優勝し、ふたたび世界への扉を開けたら、北の大地でも笑顔が弾ける。

【写真上】3位決定戦、ながとブルーエンジェルス×YOKOHAMA TKM。写真左は、ながとの東あかり。右はTKMの堀毛咲良。(撮影/松本かおり、以下同)
【写真下】好ゲームが相次いだが、芝がはげたグラウンド状態が残念だった。2日間とも好天、酷暑


【太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2025 グランドファイナル札幌大会】※大会概要はこちら
◆総合順位決定トーナメント出場8チーム
(並びは総合獲得ポイント数順)
PEARLS
ナナイロプリズム福岡
ながとブルーエンジェルス
YOKOHAMA TKM
東京山九フェニックス
北海道バーバリアンズ ディアナ
日本体育大学ラグビー部女子
自衛隊体育学校PTS

【写真左上から下へ】ながとブルーエンジェルス、YOKOHAMA TKM、東京山九フェニックス。(撮影/松本かおり、以下同)
【写真右上から下へ】北海道バーバリアンズ ディアナ、日本体育大学ラグビー部女子、自衛隊体育学校PTS

◆入替戦出場チーム
横河武蔵野Artemi-Stars(総合9位)×早稲田大(チャレンジャーS/3位)
ARUKAS QUEEN KUMAGAYA WOMEN’S RUGBY FOOTBALL CLUB(総合10位)×BRAVE LOUVE(チャレンジャーS/2位)
追手門学院大学女子ラグビー部VENUS(総合11位)×日本経済大(チャレンジャーS/1位)

【入替戦出場の4つのコアチーム】写真左上から時計回りに、横河武蔵野Artemi-Stars、ARUKAS QUEEN KUMAGAYA WOMEN’S RUGBY FOOTBALL CLUB、追手門学院大学女子ラグビー部VENUS、チャレンジチーム。(撮影/松本かおり)

◆エキシビション
チャレンジチーム(総合12位)×アザレアセブン(チャレンジャーS/4位)

※チャレンジャーS=チャレンジャーシリーズ。5月に開催
※チャレンジチームは降格の対象とはならないため、チャレンジチームが第3戦までのシリーズポイント合計数9~12位チームとなった場合の入替戦の対戦は以上の通り。チャレンジチームを除いた上位3チームとチャレンジャートーナメントの上位3チームの各対戦で上位となったチームが、2026シーズンのコアチームとしての出場権を獲得する。


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