
今週土曜日(7月5日)、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されるアルゼンチン×イングランド。ワールドラグビーランキング5位、6位の直接対決を前に、イングランド代表が滞在先のホテルで囲み取材に応じた。
イングランドとしては、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに勝利して勢いに乗る相手のホームで戦うことになり、タフな試合展開が予想される。
2017年にも同様の遠征をしており、イングランドは34-38、25-35で2戦ともに勝利を収めている。
【過去5年間の対戦戦績】
2023年:アルゼンチン 23-26 イングランド
2023ワールドカップ3位決定戦
2023年:イングランド 27-10 アルゼンチン
2023ワールドカッププールステージ
2022年:イングランド 29-30 アルゼンチン
トゥイッケナム
2019年:イングランド 39-10 アルゼンチン
2019ワールドカッププールステージ
スティーブ・ボーズウィック ヘッドコーチは、ブレイクダウンの攻防戦がカギを握ると話した。
「ライオンズ戦では、100以上のラックが生まれ、その多くにアルゼンチンが強烈なプレッシャーをかけていました。フリアン・モントージャのようにジャッカル(スティール)が得意な選手たちと対峙することを踏まえ、ブレイクダウンで強みを持つ選手を選びました。また、アルゼンチンは多くのコンテストキックを使っていました。競り合い、そこにブレイクダウンで激しくプレッシャーをかけ、相手のミスを誘ってトライまで繋げていました。今回もキックを多用してくるだろうと予想はしていますが、ホームで同じようなキッキングゲームを仕掛けてくるかは興味深いところです」

現にリザーブのうち、バックスの選手はスクラムハーフのジャック・ヴァン・ポートヴリート、センターのケイダン・マーリーの2人。ブレイクダウンでファイトするために、6人のフォワードを配置している。
「センターのカバーとしては、ケイダンが一定期間センターでトレーニングしてきました。シックスネーションズのときから、複数のポジションができるような柔軟性を持った選手の育成を進めていました」
また、メンバーの23人には3人の未キャップ選手が含まれる。そのうちの一人が、11番に名を連ねたウィル・ミュア。セブンズではすでに代表デビューを果たしているが、15人制の代表としては初キャップとなる。
現地での愛称は『The horse(馬)』。ストライドの大きなランニングで、暴れ馬のごとく相手を蹴散らす。今シーズンはバースの優勝にも大きく貢献した。今週の初めにメンバー入りしたことを知らされ、家族も急遽こちらに向かっているという。
「最初にそのニックネームをつけられたのは、ノーサンブリア大学に通っていた頃です。セブンズ代表の合宿に呼ばれて、フィットネスのメニューをしていました。サイドラインを往復していたのをダン・ノートンやジェームズ・ロッドウェル、リチャード・デカーペンティアが見ていて『ストライドが長い。馬みたいだな』って。ダン・ノートンが『これをニックネームとして絶対に定着させよう』って言って、その場で大笑いになりました。
それ以来、ずっと自分について回っています。今では気に入っていて、先週はアルゼンチンの競馬場に行きました。もう一つの自分のアイデンティティみたいで、悪くないです」
スピードに自信を持ったのは、そんなニックネームを持つようになる数年前だった。
それまではS&Cトレーニングを継続的に受けたことがなかったが、入学したノーサンブリア大学のジムで適切なコーチングを受け、劇的にパフォーマンスが上がったという。
2019年には、イングランドのセブンズ年間最優秀選手にも選出されている。
そして、この試合が100キャップ目になるのが、スタンドオフのジョージ・フォードだ。2014年、ウェールズ戦での途中出場以来、イングランド代表の一員としてプレーしてきた。今夏のシリーズでは、102キャップを持つフッカー、ジェイミー・ジョージと共同キャプテンを務めている。

「初めて代表に入ったときは、本当に夢のようでした。子どもの頃からイングランド代表でプレーするのが夢で、最初の60秒間、ピッチに立っただけでも不思議な気持ちでした。家族が観客席にいて、8万人の中で、現実離れしているような瞬間でした。イングランド代表として何度もプレーする機会に恵まれた今でも、こうしてプレーできることがどれだけ光栄であるか、特別であるかという誇りは失っていません。
ただ経験を重ねたいまは、100キャップという節目でも、一つの試合として受け止めています。準備としてはいつもと同じように、次の試合に向けて取り組むだけです」
トゥイッケナム(現アリアンツスタジアム)でテストマッチが行われると、8万人もの観客が押し寄せる。ラグビー発祥国の代表として重ねた100キャップは、重圧と常に隣り合わせだったはずだ。
「私が心がけてきたのは、困難な状況やうまくいかないことに直面したとき、それに気を取られすぎず、できるだけ早く次のアクションに移ることです。起こったことが良いことであれ悪いことであれ、次のことに取り組まなければならないからです。つまり、どれだけ早くそれをできるかが重要なのです。
あとは、経験を重ねたことで、そういった瞬間への対処法を少しは学んだと思います。試合では本当にたくさんのことが起こります。仮にネガティブなことが1つか2つでも、ポジティブなことが30か40あるとしたら、ほんの小さな出来事ですよね。置かれた状況を大局で見ることが大切です」

スポーツと日常生活が密接に絡み合っているアルゼンチン。会場のエスタディオ・ホルヘ・ルイス・ヒルシ(Estadio Jorge Luis Hirschi)は、普段はサッカースタジアムとして運用されている。収容人数は約3万人。凄まじい熱狂が凝縮されたような空間になるだろう。
ボーズウィックHCは最後にこう言及した。
「今回の環境がどういう影響を与えるかも観察したいと思っています。アウェーで熱気のあるスタジアム、そこでどう対応するかを試せるのは大きいです。ある意味、2年後のワールドカップにも近い雰囲気になると思います。ワールドカップでは、一つひとつの戦い、ポイントの重みが本当に大きい。今回の試合で、そういった雰囲気の中で、誰が本当にテストマッチの舞台で戦える選手なのかを見極めたいと考えています。タフな試合になることは間違いありませんが、テストマッチというものは常にタイトで厳しく、必ずしも思い通りの流れにはなりません。そこを勝ち切ることが重要なのです」