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熱狂の発信地、オークランド。NRL開幕戦で体感する13人制ラグビーの真髄とRTSの帰還。
試合後に歌われる「We Are the Power(よくWe Are the Warriorsと言われるが)」というウォーリアーズのテーマソング・チャントをサポーターの皆が歌っているシーン。NZの音楽シーンで有名なPeter Urlichという人が20年以上前に作り、本拠地での試合後にファンやプレーヤーと共に歌われる。(筆者提供、以下同)

熱狂の発信地、オークランド。NRL開幕戦で体感する13人制ラグビーの真髄とRTSの帰還。

大嶽和樹/Kazuki Otake

 ニュージーランド最大の都市、オークランド。現在私はこの地に滞在している。
 ラグビー大国として知られるこの国で、オールブラックスやスーパーラグビー・パシフィックに加え、13人制ラグビーのプロリーグであるNRL(ナショナルラグビーリーグ)に所属する唯一のニュージーランドチーム、「ニュージーランド・ウォリアーズ」も高い人気を誇っている。
 今季のNRL開幕戦、オークランドを本拠地とするウォリアーズ (Warriors)×シドニー・ルースターズ (Sydney Roosters)の試合を現地観戦した(3月6日)。その熱気と、日本ではまだ馴染みの薄い13人制ラグビーのカルチャーについてリポートする。

◆NRLとは何か。オセアニアを熱狂させるもう一つのラグビー。


 日本のラグビーファンにとって、ラグビーといえば15人制(ユニオン)が一般的だろう。しかし、海を渡ってオーストラリアやニュージーランド、あるいはイギリス北部に目を向けると、13人制(ラグビーリーグ)の人気も大きい。

 特にオーストラリアを本拠地とするNRLは、1試合あたりの平均観客数が2万人を超え、スーパーラグビーの平均を倍近く上回るなど、圧倒的な商業規模と熱狂を生み出しているプロスポーツの盟主だ。
 私も2021年から13人制をメインにプレーし、日本代表としても活動してきた。

選手入場のシーン。ホームの選手は地鳴りのような歓声で迎えられ、アウェーの選手はブーイングで迎えられる。


 ラグビーリーグの魅力は、何と言ってもそのシンプルさと純粋なぶつかり合いにある。
 15人制のようなラックやモール、スクラムでの押し合いがないため、常にボールが動き、スピーディーで激しい肉弾戦が繰り返される。
 攻撃権が6回のタックルで相手に移るというルールが、息もつかせぬ攻防を生み出す。

※ラグビーリーグのルールなどについては、こちらの【13人制ラグビー/ラグビー・リーグの世界へ】ニウエ代表戦で知る、もう一つの熱狂。に以前記載したので、もしよろしければご一読を。

◆RTSの帰還と、ユニオンに影響を与え続けるリーグの技術。


 この試合で日本のファンにも馴染み深い選手といえば、ウォリアーズのロジャー・トゥイバサ=シェック(RTS)だろう。
 圧倒的なステップワークでNRLのスター選手として君臨したのち、15人制へ転向。スーパーラグビーのブルーズでプレーしてオールブラックスに選出され(2022年に3キャップ。日本代表戦にも出場)、再び古巣のウォリアーズへと戻った稀代のステップマスターだ。

 彼のように、リーグとユニオンを行き来するトップ選手は少なくない。
 例えば、ソニー=ビル・ウィリアムズやマリカ・コロインベテなども、もともとはリーグの選手である。
 オフロードパスや、バウンドを計算したキックなど、現在の15人制で主流となっているスキルの多くは、実は13人制ラグビーで生まれ、持ち込まれたものだ。
 RTSのプレーを間近で見ていると、その研ぎ澄まされたリーグ特有の身のこなしと、コンタクトの強靭さにあらためて圧倒される。

スタメン発表時にスクリーンに映し出された、ロジャー・トゥイバサ=シェック(RTS)。わかっていても止められないあの左右のステップを武器に活躍していた数年前と比べ、フィジカルを生かした突破や周りを活かすプレーが増えた印象


◆ 記録的な大勝で飾った開幕戦。ウォリアーズがルースターズを粉砕。


 2万4112人の大歓衆が詰めかけた『Go Mediaスタジアム』。
 例年シーズン開幕戦を苦手とする傾向があったウォリアーズだが、今季はシドニー・ルースターズを相手に42-18という大勝を収め、開幕戦におけるクラブ史上最多得点記録を更新する圧倒的なパフォーマンスを披露した。

 試合を牽引したのは、ともに3つのトライに絡む活躍を見せたゲームメーカーのシャネル・ハリス=タビタとタナ・ボイドだ。
 ボイドが鮮やかなダミーパスからラインブレイクして先制トライを挙げると、RTS(ロジャー・トゥイバサ=シェック)も随所で存在感を発揮する。

 一時はルースターズの主将ジェームズ・テデスコのトライで同点に追いつかれたものの、RTSのチャンスメイクからアダム・ポンペイやハリス=タビタらが立て続けに追加点を奪い、22-6で前半を折り返した。

 フォワード陣の奮闘も光った。
 ジャクソン・フォードは22回のキャリーで219メートル前進し、チーム最多となる28タックルを記録。また、スタンディングオベーションで迎えられピッチに立ったジェームズ・フィッシャー=ハリスも、自陣ゴール前で決定的なインターセプトを見せるなど、攻守においてルースターズを圧倒した。

 後半に入ってもウォリアーズの勢いは止まらず、投入直後のレカ・ハラシマがファーストタッチでハイパントをキャッチしてそのままトライを奪うなど、采配も的中する。
 対するルースターズは、新加入のデイリー・チェリー=エバンズを中心に連携を構築している段階であり、規律の乱れや細かなミスが響く苦しい展開となった。

【写真左上】スタジアムの最寄駅にて。試合開始1時間半前だったが、ユニホームを着た人がたくさん。【写真右上】乱闘シーンを見ない試合は皆無のような。半ばお約束。【写真下】試合中の一コマ。激しいコンタクト満載。そこにNRLの魅力が詰まっている。


 終盤、ルースターズもビリー・スミスやアンガス・クライトンの連続トライで意地の猛追を見せたが、ウォリアーズは強固なディフェンスでこれを凌ぎ切る。最後はRTSからの折り返しを受けたハリス=タビタがこの日2つ目のトライを決め、勝負を決定づけた。

 規律と実行力で相手を上回り、悲願の初優勝へ向けて確かな手応えを掴んだウォリアーズ。熱狂するオークランドのファンにとって、これ以上ない完璧なシーズンの幕開けとなった。

◆ エンターテインメントの極致。15人制とは異なる熱狂のカルチャー。


 プレー以外の観戦体験も15人制にはない特別なものだった。
 敷地内には数多くの出店が並び、まるでお祭りのような盛り上がりを見せている。
 見渡す限り、チームのユニフォームに身を包んだファンたちで埋め尽くされており、彼らのウォリアーズに対する並々ならぬ愛着がひしひしと伝わってくる。

 試合の演出も、私が知るラグビーのそれとは一線を画していた。
 選手入場の際には派手に火の粉が舞い上がり、観客のボルテージを一気に引き上げる。さらにハーフタイムには、まるでNFLのスーパーボウルを彷彿とさせるような豪華なライブパフォーマンスが披露され、スタジアム全体が巨大なエンターテインメント空間として緻密に作り込まれていた。

ハーフタイムショー中の様子。アーティストもフィールド上を駆け回り、それに合わせて火柱が立つ。大興奮の環境
出店は体感40以上。バーベキューやハンバーガー、アイスクリームなどその場で調理する様々な出店が並び、食欲がそそられる


 特に印象的だったのは、TMO(テレビジョン・マッチオフィシャル)の際に見られる演出だ。スクリーンにリプレイが1カット流れるごとに、レフリーからの判定プロセスがスタジアム全体に響き渡る。
 その間、スピーカーからは心臓の鼓動のような重低音のBGMが流れ、極限の緊張感を煽り立てるのだ。その音響と映像のドラマチックな展開に合わせ、数万人のファンが一喜一憂し、スタジアム全体が大きく波打つ光景は圧巻の一言だった。

 そして、スタンドに渦巻くファンの熱量も独特だった。ノーサイドの精神が重んじられ、静かにキッカーを見守るような15人制のカルチャーとは明確に違う。
 相手選手に対して容赦なく中指を立て、強烈なヤジを飛ばすような荒々しさがある一方で、素晴らしいプレーが出れば敵味方関係なく惜しみない拍手を送る。
 ウォリアーズがトライを奪った瞬間に、見ず知らずの隣人たちと抱き合い、地鳴りのような咆哮を上げる姿には、人間の闘争本能をむき出しにしたような純粋な熱狂があった。

 それは、私たちがよく知る15人制のラグビーとも、他のどのスポーツとも違う。泥臭い肉弾戦と、ショービジネスとしての洗練が完璧に融合した、13人制特有の強烈なカルチャーがそこには根付いていた。

◆まとめ/13人制ラグビーが示す、もう一つの熱狂と可能性。


 日本ではまだマイナーな存在にとどまる13人制ラグビーだが、海を渡ったオセアニアの地では、国籍や文化を越えて人々を熱狂させる巨大なムーブメントとして定着している。オークランドを包み込んだNRL開幕戦の熱気は、その事実を如実に物語っていた。

YOKOHAMA TKMや北海道バーバリアンズ女子でコーチを務めたPou Paul(ポー・ポール、通称ポールさん)と。私自身も日本で一時期コーチングを受けていた。現在はウォリアーズ女子チームのコーチを務めている。「妻も自分も日本でコーチの仕事を得て、日本に戻りたいんだよ」と常に言っている。


 15人制とは異なるシンプルなルールが引き出す極限の肉弾戦と、ショービジネスとして極限まで洗練されたエンターテインメント性。そして、そこから生み出される高度なスキルは、ユニオンのトップレベルにも多大な影響を与え続けている。

 泥臭い闘争本能と緻密な演出が交差するスタジアムの光景は、ラグビーというスポーツが持つもう一つの可能性をはっきりと示している。この13人制特有のカルチャーとその圧倒的な熱量は、日本のラグビーファンにとっても、競技の新たな側面を知り、深く惹きつけられるだけの十分な引力を秘めている。

【プロフィール】
おおたけ・かずき 1996年愛知県名古屋市生まれ。愛知県立明和高校、早稲田GWRC、University of Washington Husky Rugby Club、Seattle Rugby Club(共にアメリカ)、Kenya Homeboyz、Kenya Wolves(共にケニア)、St. Albert(カナダ)等を経て、ニュージーランド・オークランド1部のラグビーリーグチームでプレー中。13人制ラグビー日本代表副将(現在キャップ6)。早稲田大学、University of Washingtonを経て、外資系戦略コンサルティングファームの東京オフィス、ケニアオフィスなどに勤務したのち、独立。


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