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100回目の慶明戦のラストシーンを、珍事と記憶するのはよそう。
当事者たちも、いくつになっても盃を交わしながらあの日のことを話すだろう。そこに笑顔はあるけれど、自分たちが過ごした濃密な日々が甦って走り出したくなるかもしれない。2025年11月2日のぶつかり合いを思い出し、肩が疼くかもしれない。
スポーツライターの藤島大さんがパーソナリティを務めるラグビー情報番組「藤島大の楕円球にみる夢」が、3月2日(月)、夜6時からラジオNIKKEI第1で放送される。
今回のゲストは2025年度シーズン、慶應義塾大学蹴球部(ラグビー部)の今野椋平(いまの・りょうへい)キャプテン。同部の126代目主将としてチームの先頭に立った。
2025年度シーズンの関東大学対抗戦。慶大は3勝4敗で5位となり、全国大学選手権へ進出する。
同選手権では初戦となった3回戦、京産大に36-40と敗れた。その試合は、後半40分になるまで36-33と勝っていた。積み重ねてきたものを出してシーズンを終えた。
ラストゲームの試合後、「頭が真っ白」としながら気丈に語った主将の姿を覚えている。
「ワントライを取るか取られるかの試合が進む中、自分たちの実力が足りなかった。それが最後の結果につながった。それだけだと思っています。ただ自分も含めチームの誰もが日本一を目指し、年越しをして……と、掲げた目標に向かって戦ってきました。できる準備はすべてして、この試合に臨めたと思っています」
今野主将は2003年11月17日生まれ、神奈川県出身。5歳で神奈川の田園ラグビースクールに入り、その後、桐蔭学園中学へ進んだ。高校1、2年生と花園連覇を果たし、3年時はバイスキャプテンを務めた(4強)。
コロナ禍で遠征はおこなわれなかったが、高校日本代表候補として国内エキシビションマッチに出場。慶大進学後はU20日本代表にも選ばれた。そして4年時に主将としてチームを率いた。
卒業後は三井不動産への就職が決まっている。ポジションはセンター、フルバック。身長183センチ、体重92キロ。
番組内では、22-24と大接戦だった伝統の慶明戦(関東大学対抗戦)にフォーカスすることで、キャプテンの責任感とチームの空気を伝える。
その試合で今野主将は、負けているのに最後、自らボールを蹴り出して試合を終わらせた。
ホイッスルが吹かれた後、敗戦の事実に気づく。うなだれる背番号12の周りに仲間たちが駆け寄った。
「勘違い」。「まさか」。試合直後は、そんな見出しの報道もあった。
しかし、3か月ちょっと経って本人と話すと、その判断が没頭の結果であり、極限の集中力で戦っていたからこそ起きたことだと分かる。当日、スタジアムでその一戦を見た藤島さんは、「尊い」と感じたという。
その直前、明大の猛攻を約5分、自陣トライライン前で止め続けてボールを取り返した。
そこから全員で攻めた。逆転を信じて走り、つなぎ、敵陣に入った。
主将自身、後半14分にトライを挙げるなど、全身全霊をかけて伝統の一戦を戦って迎えたキックオフから80分経った頃だった。
そんな要素が重なり、「熱くなって、試合の流れ的にも、勝っていると思いました。スコアボードを確認するのも忘れていました」。
最終的に大学日本一に到達する明大の、25フェーズに及ぶ攻撃を、全員で耐え切った。小柄な仲間たちが全身をぶつけてタックルする姿を見て平常心でいられるはずがなかった。
試合後のロッカールームの空気、仲間とのやりとり、OBの温かさがトークから伝わってくる。
個性と魅力にあふれる人たちに囲まれて幸せだ。桐蔭学園時代に育まれた発言力に関する話も興味深い。
そして、辛いはずのあの日のことを穏やかな語り口で振り返る好青年が、ジャージーを着てピッチに立てば、獰猛な虎になるラグビーの特性をあらためて知る時間。
藤島さんが「尊い」と思った感覚が分かる。
▽ラジオ番組について
ラジオNIKKEI第1で3月2日夜6時から全国へ放送。radiko(ラジコ)のサービスを利用して、PCやスマートフォンなどで全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。
放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。U-NEXTでも配信予定。3月9日の同時刻には再放送がある。