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南半球のピッチに熱気が戻ってくる。スーパーラグビー・パシフィックの季節だ。
2026年度は2月13日(金)、ニュージーランド(以下、NZ)の最南端のフランチャイズ、ハイランダーズが昨季王者・クルセイダーズをダニーデンに迎えて幕を開ける。NZダービーは熱戦となるだろう。
1月中旬、オールブラックスの指揮官だったスコット・ロバートソンが突然の退任となった。その衝撃は今もなお国内に残っている。しかしキックオフが近づくにつれ、NZのラグビーファンの視線は、スーパーラグビーへと向かい始めている。
今季も大会は、NZ 5チーム、オーストラリア(以下、AUS)4チーム、フィジー1チーム、パシフィック1チームの合計11チームで争われる。
大会期間は、2月13日から6月23日までの19週間で全83試合。レギュラーシーズンは全16節、各チーム14試合(ホーム7、アウェイ7)を戦い、4チームとは2回対戦する編成だ。主にダービーマッチ(同じ国同士の対戦)重視となっている。上位6チームがプレーオフへ進出し、頂点を目指す。
開幕を目前にNZフランチャイズのチームを紹介する本稿。前回(上/クルセイダーズ、ハイランダーズ、モアナ・パシフィカ)に続いて今回は、北島勢のブルーズ、チーフス、ハリケーンズの3チームを紹介する。
◆ブルーズ/主力の大幅移籍の影響は? 主力のコンディションと若手の成長が鍵
2024年、21年ぶりに王者に輝いたブルーズは昨季、スタートでつまずいた。終盤の巻き返しで6位に滑り込み、プレーオフ準々決勝で首位通過のチーフスを破るアップセット。死闘となった準決勝では、クルセイダーズにあと一歩まで迫った(14-21)。

今季は多くの主力がチームを離れた。
WTBマーク・テレア(トヨタヴェルブリッツ)、CTB/WTBリーコ・イオアネ(サバティカルでアイルランドへ)、PRアンガス・タアヴァオ(ハイランダーズ)、SO/CTBハリー・プラマー(仏・クレルモン)らキャップホルダーが相次いでチームを去った。
さらにHOリッキー・リッチテッリ(仏・モンペリエ)、FLエイドリアン・チョウト(狭山セコムラガッツ)といった長年チームに貢献してきた中堅も新天地を求め、戦力ダウンは否めない。
それでも、FW陣はPRオファ・トゥンガファシ、LOパトリック・トゥイプロトゥ、LOサム・ダリー、FLダルトン・パパリィイ、NO8ホスキンス・ソトゥトゥといった代表経験者を軸に整っている。
BK陣もSHフィンレー・クリスティー、SOボーデン・バレット、WTBケイレブ・クラーク、SO/FBスティーヴン・ペロフェタらのキャップホルダーが並び、SO/FBザーン・サリヴァン、CTBコーリー・エヴァンス、CTB/WTBのAJ・ラム、WTB/FBコール・フォーブスなど能力の高い選手も健在だ。
主力が怪我で離脱すると戦力が落ちる可能性がある。期待されるのは若手の台頭だ。LOジョシュ・ビアーとCTBザヴィ・タエレらの若手有望選手のさらなる成長が期待される。加えて、昨年のU20ニュージーランド代表のHOエリ・オウデンリン(ワイドトレーニンググループ)とCTBジェームズ・キャメロンも注目株だ。
NZ国内でも注目を集めたCTBピーター・アキの古巣復帰(仏・トゥールーズで8年間プレー)は、イオアネ不在の穴を埋めるだけでなく、経験豊富な彼の存在が若手をはじめチーム全体を底上げする効果も期待される。
今季限りで指揮官のバーン・コッターはチームを去り、来季はレッズの指揮を執る。ソトゥトゥも今季で退団が予定されており(英プレミアシップのニューカッスル・レッドブルと3年契約を結ぶ)、2年ぶりの頂点に立って有終の美を飾り、送り出したいところだ。

●注目選手 : FL/NO8マラカイ・ランプリング
代表クラスのバックロー陣がひしめくチーフスでは出場機会に恵まれず、新天地を求めてブルーズへ移籍した。192センチ、112キロと恵まれたサイズに加え、走力とスキルを持ち合わせる。継続して起用されれば、その素材の良さから才能が開花する可能性は十分だ。ダイナミックなパフォーマンスが魅力。将来が楽しみな逸材だ。

◆チーフス/主力の流出多数。が、補強もしっかり。新コーチのもと優勝を狙う
昨季、3年連続で決勝の舞台に立った。しかしクルセイダーズの復活の前に敗れ、決勝で三たび涙を呑んだ。常に優勝候補の中心へとチームを押し上げてきた指揮官クレイトン・マックミランは、契約を1年早めてマンスター(アイルランド)に活動の場を求めた。
新たな指揮官は、元オールブラックスのジョノ・ギッブス。長年ヨーロッパでコーチの実績を積み、2024年にチーフスのコーチングスタッフに加わっていた。その采配とチームカラーの変化にも注目だ。
戦力面では、サバティカルで不在となるCTBアントン・レイナート=ブラウン(コベルコ神戸スティーラーズ)、今季は完全移籍となったWTB/FBショーン・スティーヴンソン(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)といったキャップホルダーに加え、CTBギデオン・ランプリング(東京サントリーサンゴリアス)、CTBラメカ・ポイヒピ(リコーブラックラムズ東京)らの実力者たちがチームを去った。

特にCTB陣の流出は影響が大きいが、昨年オールブラックスに復帰したクイン・トゥパエアと、成長著しいダニエル・ロナというクオリティーの高い軸は健在。さらにワラターズからララカイ・フォケティを獲得し、ミッドフィールドの厚みは保たれている。
また、昨年ラグビー・リーグ(13人制)に挑戦していたHOタイロン・トンプソンが復帰。モアナ・パシフィカからWTB/FBカイレン・タウモエフォラウを迎えるなど補強もしっかりしている。
スティーヴンソンの抜けたFBのポジションには、ダミアン・マッケンジーを軸に、エモニ・ナラワ、エテネ・ナナイ=セトゥロ、カイレン・タウモエフォラウといったWTBも担える選手が候補に挙がる。昨年代表デビューを果たしたWTBリロイ・カーターも加わり、バックスリーの人材は豊富だ。
司令塔の10番は、マッケンジーとジョッシュ・ジェイコブの2人が中心となり、試合状況や対戦相手に応じて使い分けられる。加えて、NPCワイカトでインパクトあるプレーを見せたテパエア・クック=サベッジ(ユーティリティーBK)も出場を狙う。
FW、BK共に各ポジションで代表クラス(オールブラックス/オールブラックス XV)が多数おり、経験豊富な選手がポジションを争うほど層が厚い。今季も上位に食い込むことは固そうだ。

●注目選手 : WTB/FBカイレン・タウモエフォラウ
2023年、20歳でトンガ代表としてワールドカップに出場。経験はある。NZ生まれ。オールブラックスを目指し、NZのフランチャイズ、チーフスに加入した。
昨季はモアナ・パシフィカで9トライを挙げ、決定力の高さを証明した。191センチの長身を活かした空中戦の強さは、将来的にオールブラックスの課題克服にもつながる可能性がある。
2026年にNZ代表の資格を得る見込みだ。まずは、チーフスの豪華なバックスリーのレギュラー争いに勝つ必要がある。ここを勝ち抜けば、ブラックジャージが見えてくる。

◆ハリケーンズ/充実の戦力で優勝狙う。鍵は10番の選択とディアンズの存在
昨季は序盤戦でもたつき出遅れた。しかし怪我人が復帰した中盤以降に調子を上げ、5連勝でレギュラーシーズンを4位で終えた。準々決勝では苦手のブランビーズ相手に敵地で敗退。持てる力を最後まで出し切れず、不完全燃焼のシーズンだった。
今季のスコッドは、FW、BKともにリーグ屈指の戦力を誇る。タレントが揃い、どのポジションでも高いクオリティを維持できる布陣だ。
CTBジョーディー・バレットが(アイルランドのレンスターでの)サバティカルから復帰し、リーダーシップと安定感をもたらす。さらにWTB/FBジョッシュ・モービーの(仏・モンペリエからの)復帰もあり、BKの層に厚みを増した。
FW陣は、昨年に続きバックローが最大の強みだ。昨年代表デビューのFLデュプレッシス・キリフィ、代表レベルでも通用するまで成長したピーター・ラカイに加え、デヴァン・フランダース、ブレイデン・イオセ、ブラッド・シールズといった能力の高い選手が並ぶ。試合展開に応じた使い分けが可能だ。
BK陣は、CTBジョーディー・バレットを中心にビリー・プロクター、バイリン・サリヴァン、ライリー・ヒギンズが控え、WTB/FB陣も高い決定力を備える。

チームの鍵となるのは司令塔(10番)の起用法だ。ワールドクラスのSHキャム・ロイガードとコンビを組むのは、膝の怪我から復調したブレット・キャメロンが本命。対抗には、実力者ルーベン・ラブがいる。バランスを考えれば、10番キャメロン、15番ラブという布陣に落ち着きそうだ。
近年ケガがちな2人のコンディションが鍵となる。昨季スコッド外ながらもメンバー入り、シーズンを通して活躍をしたSO/FBカラム・ハーキンがいるのも心強い。
戦力は申し分ない。主力がシーズンを通してコンディションを維持できるか。昨季の悔しさを晴らすべく、ハリケーンズは今年こそ頂点を狙える位置にいる。

●注目選手: LO ワーナー・ディアンズ
日本代表のキャプテンが、サバティカルを利用してハリケーンズに加入したことは、NZでも大きな話題となった。ウエリントン生まれのディアンズは、幼い頃はハリケーンズの大ファン。「常にこの場所を目指していた」と、現地TVのスポーツニュースでも取り上げられた。
2メートル超えのサイズは、ハリケーンズの中でもひときわ目立つ。同ポジションに実力者は並ぶも、空中戦、機動力、スキルを兼ね揃えたディアンズは、ラインアウトの安定というチームの課題を一気に解消し得る存在になりそうだ。優勝を狙うハリケーンズにとって、完成度を一段引き上げる存在になれるか注目したい。
