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自分を走らせる。竹山晃暉[埼玉パナソニックワイルドナイツ]
1月24日におこなわれたサンゴリアス戦での先制トライ。前半4分だった。(撮影/松本かおり)
2026.02.07
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自分を走らせる。竹山晃暉[埼玉パナソニックワイルドナイツ]

田村一博

 自信あふれるプレースタイルは、以前と変わらぬまま。いや、もう一段ギアが上がったように感じる。
 埼玉パナソニックワイルドナイツのWTB、竹山晃暉が好調だ。今季は開幕からの全6戦にすべて先発出場。14番のジャージーを着て疾走を重ね、5トライを挙げている。

 リーグワンのディビジョン1で唯一6戦全勝のワイルドナイツの中でも、そのパフォーマンスの高さはチームへの貢献度が高い。第6節の東京サントリーサンゴリアス戦では開始4分、インゴール右隅に先制トライを決めた。

 そのシーンを振り返る。
 相手トライライン前での左ラインアウトからの攻撃。ワイルドナイツはFWで攻め立てておいて、右に展開。いちばん外にいた竹山がインゴールに飛び込んだ。

「モールのシチュエーションでディフェンスがタイトになって(内側に寄って)いました。さらにフォワードがいいモメンタムを生んで(防御が)よりタイトになった。理想的な状況でした。ボールをもらう前からいける、と思っていました」

1996年9月25日生まれ、29歳。175センチ、84キロ。広陵少年ラグビークラブ(幼小)→河合二中→御所実→帝京大→埼玉パナソニックワイルドナイツ。日本代表キャップ1。(撮影/松本かおり)


 その試合は最終的に31-30と競り勝つ展開となるも、全勝チームの試合巧者ぶりが伝わる試合内容。竹山は50/22キックでエリア取りに成功したことに加え、相手が蹴りたい状況を察知してポジショニングを変えるなど、目立たないプレーでも働いていた。

 残している結果、そして、地道な働きぶりからも伝わる充実。しかし、2019年からワイルドナイツで実績を積んできた好ランナーは、「自分が好調だとは思わないようにしています」と落ち着いている。

 これまでと違う点があることは認める。
「勢いに乗っている(ときがある)のが以前。いまは、どうプレーすれば自分を乗せられるのか、いいプレーを続けられるのか、その答を見つける段階まではいっていませんが、ある程度自分の中で、一貫したパフォーマンスを出し続けるための秘訣が、29歳にして分かってきた。そんな感覚があるんです」

 昨シーズンが終わった後のオフ、 自分と向き合う時間を作った。その結果、体とマインドがセットになって動くようになった。
 それが、いまのパフォーマンスを呼んでいると自己分析する。

 自分に変化を起こさせたものはいくつかある。『Instagram』での発信力の高まりも、自分を突き動かしているもののひとつだ。
 プレーやトレーニングなどラグビーのシーンだけでなく、プライベートの時間も紹介する。パートナーも頻繁に登場。頭の中、グラウンドの外のことをファンに伝える。

 SNSの発信は盛んでも、パフォーマンスがそれに伴っていないと感じる例をたくさん見てきた。
 だからやらない。
 そう思っていた自分は過去のものとなった。それは逃げの姿勢であって、発信し、その上で高いパフォーマンスも出すことこそ価値があると考えるようにした。

 インフルエンサーとして広く知られるパートナーとの出会いが大きかった。「彼女のSNSの発信を見て学ぶことは多い。フォロワーが多い理由が、なるほどね、と分かるんです」と言う。
 自分がどういったマインドで日々を過ごしているか。ラグビーとの向き合い方や、こういうプライベートがあるからいいパフォーマンスを出せているのかなどを知ってもらおうと考えた。
 それは、将来プロとしてラグビーをプレーしたい子どもたちに、夢を与えることになるかもしれない。そう考えた。

「やりながらプレッシャーを感じていますよ。自分が発信したり、これだけのことを喋るなら、結果を出さないとなんの説得力もない。僕はインスタグラマーでも、インフルエンサーでもない。プロのラグビー選手として、試合を見に来てもらって、感じてもらってなんぼという世界だとも思うので、そこへの入り口としてSNSをうまく使っています」

 新たな取り組みを通して、これまで知らなかった世界に触れられることも、自分を高めることにつながっている。

試合、練習とも、コミュニケーションの量も増えている。(撮影/松本かおり)


 いままでと違った環境が自分の背中を押してくれているという点では、チームの体制が昨年までと変わったこともいい刺激になっている。
 金沢篤ヘッドコーチをトップとしたコーチングチームの中に、堀江翔太FWコーチやベリック・バーンズBKコーチら新任スタッフも加わり、練習の内容にも変化があった。
 新鮮。そして、フォーカスポイントがより明確になった感覚がある。

 その結果、チーム全体のレベルが上がり、竹山自身もGPSの数値が高まった。そういった背景から充実したプレシーズンを過ごせた。それが、シーズン開幕後の好調さにつながっていると話す。

「いまの環境が僕には合っている、ということだと思います」と言う竹山は、新鮮な指導体制とともに、若手の成長を含む、ポジション争いの激しさも自分を走らせている理由の一つとする。
 負けたくない。
 その競争に勝つための自身の武器については、「技術的なスキルアップというより、メンタルの変化が大きい」とした。

 例えばディフェンス時の姿勢。日本代表のジャック・コーネルセンが昨秋のテストマッチ、対ジョージアで見せたアンクルタップ(後方からかかとに手をかけて倒す動き)について話す。

「ジャックが、抜けた相手を必死に追いかけ、ギリギリのところでトライを防いだ。勝敗を決めるようなプレーです。でもあれって、スペシャルなプレーではなく、まず、戻るというアクションをするか、しないか。(意志があれば)僕にもできるよね、というものです。以前の自分なら戻っていないと思うんです」
 いまの自分は、すぐに走り出せる。

 プレシーズンマッチで印象に残っている試合がある。
 開幕の約1か月前、11月22日に熊谷ラグビー場の西グラウンドでおこなわれた豊田自動織機シャトルズ愛知との試合にワイルドナイツは26-33で敗れた。

「自分のメンタルの乱れ、マインドセットができなかった結果、全然いいパフォーマンスが出せなかった。相手がディビジョン2だとか、芝の状態が気になったとか、そういった外的要因など、ちょっとしたことでプレーの質が変わるんだとあらためて気づきました」

 いま、気持ちを整えて毎試合に臨めているから好結果を出せている。試合間の準備をうまくやれているからこその好パフォーマンス。爆発力と一貫性を両輪とするのがアスリートの理想なら、その域に少しずつ近づけている。

意識の変化が動きも変えた。特にディフェンス面の幅が広がった。(撮影/松本かおり)


 サンゴリアス戦後の記者会見では金沢ヘッドコーチが竹山について話した。先制トライを「いいパフォーマンスを見せてくれた」と評価した後、「今季のいちばんの変化は、ディフェンスに対しての姿勢。そこに成長を感じる」と続けた。

 HO坂手淳史主将も、「ディフェンスやハイボール(への対応)など、足りていなかったところへの取り組みが見られ、いろんなところで成熟し、周りが見えている印象です」と付け加えた。チーム内の状況を伝えてくれたり、その上で自らアクションを起こしてくれるそうだ。

 そんな評価に対し本人は、「周りの言葉は素直に受け止めていますが、満足してしまわないようにしないと。褒められ慣れていないので、言ってもらえる言葉に甘んじることなく、成長を止めないようにします」と気を引き締める。
「チームのためにプレーしています」の言葉が自然と出る。

 そんな話をしたあとに日本代表への思いについて尋ねると、「プレーヤーとしては目指すべき場所だと思います」と熱く語ったのに続けて、「なんで(代表に)選ばれていないのか分からない、とみんなから言われるぐらいのパフォーマンスを出し続けるなら、入っていなくても入っているようなものですよね」と愉快そうに笑った。

 変わったところと変わらないもの。いま、そのバランスが、いいのだと伝わってきた。




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