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FWで引き寄せた頂点。女子日本一YOKOHAMA TKM、1番の吉田菜美も前に出た。
後半24分、TKMはトライで追いつき、コンバージョンキックで14-12と勝ち越した。この時トライを挙げたLO西村澪はMVPに選出された。(撮影/松本かおり)

FWで引き寄せた頂点。女子日本一YOKOHAMA TKM、1番の吉田菜美も前に出た。

田村一博

 前年の1447人から大きく増えた。
 2月1日に秩父宮ラグビー場で開催された第12回全国女子選手権決勝のYOKOHAMA TKM×横河武蔵野アルテミ・スターズには3537人のファンが集まった。

 3年連続で決勝の舞台は日本ラグビーの聖地と言っていい場所。2023-24シーズンの決勝は、リーグワンが2023-24シーズンに実施したクロスボーダーラグビーの第1戦、東京サントリーサンゴリアス×チーフスに続いておこなわれた(そのため記録シートに書かれた観客数は1万3681人だった)。

 初めての秩父宮での単独開催となった昨シーズン決勝から大きく観客増となった今季。女子ワールドカップが開催された昨年、北九州、東京でサクラフィフティーンのテストマッチがおこなわれ(スペインに連勝)、W杯では1勝(これもスペイン相手)も、それらのパフォーマンスがファンを惹きつけたのだろう。女子ラグビーに向けられる視線の数は確実に増えている気がする。

2017年3月におこなわれた決勝(第3回大会)で、フェニックス、アルカスとの合同チームで勝って優勝しているが、初めての単独優勝となったYOKOHAMA TKM。感激の一枚。(撮影/松本かおり)
胴上げされるTKMのFL永岡萌主将。(撮影/松本かおり)


 今回の決勝も好ゲームとなり、見つめたファンを喜ばせた。21-12のスコアで勝ったのはYOKOHAMA TKM。前半23分にSO山本実のトライで先制しながらも、連続でトライを許し、後半20分過ぎまで7-12とリードを許す。
 しかし、そこから逆転で勝利をつかんだ。

 フォワードがよく戦った。
 昨年のW杯に出場した選手たちが何人も並ぶアルテミ・スターズのパックに決して引かず、コンタクトシチュエーションで常に前へ出る姿勢を出し続けた。
 許した2トライ(前半30分、後半16分)はゴール前ラインアウトから相手フォワードに攻め切られる悔しいものだったが、終盤に積み重ねてきたものを出し切った。

 5点ビハインドで迎えた後半24分のトライは、スクラムで圧力をかけて2回のコラプシングを誘い、敵陣深い地域に居座り続けて奪い取った。フォワードで攻め立て、大会MVPに選ばれるLO西村澪がゴールポスト下にボールを置いた(Gも成功)。

コネクションを保ちつつ戦ったTKM。【写真左上】積極的に動いたSH高橋沙羅。【写真右上】パワフルに働くLO松永美穂。【写真左下】写真中央は3番の藤殊華。【写真右下】FBヨレイン・イェンゴ。15人制と7人制のフランス代表。(撮影/松本かおり)
試合をコントロールしたSO山本実。(撮影/松本かおり)


 14-12と逆転して迎えた後半36分に勝負を決めた。
 再びスクラムでコラプシングを誘い、PKで敵陣深くに入る。そこからモールで前進。アルテミ・スターズのフォワードを後退させ、何度もペナルティを誘発した。
 高橋真弓レフリーがペナルティトライのジャッジ。スコアは21-12となった。

 日本代表キャップ41。豊富な経験を使ってゲームをうまくコントロールしたスタンドオフの山本実は試合後、「フォワードのみんなが頑張ってくれた。強いアルテミのフォワードからスクラムでペナルティを取った時もありました。ラインアウトで苦戦した時間帯もありましたが、最後、認定トライとなる前は、(フォワードの選手たちが、ラインアウト→モールで)いけると言ってくれました」と仲間たちを称えた。

 フッカーの根塚智華、3番の藤殊華とともに最前列で前へ出る強い意志を示し続けたのが背番号1の吉田菜美だった。
 日本代表キャップ3を持つ26歳は、ルースヘッドプロップとしてスクラム、ラインアウトのセットプレーで貢献。左目の周囲にアザを作りながら80分ピッチに立った。

 2025年5月におこなわれた女子アジアラグビーチャンピオンシップのカザフスタン戦で初キャップを得た後、香港戦、スペインとの第1テストで桜のエンブレムを胸に戦った吉田は、まだラグビーを始めて4年目。大学卒業後に楕円球の世界に足を踏み入れた。

準優勝の横河武蔵野アルテミ・スターズ。自分たちのペースに持ち込んだ時間もあったが、届かず。(撮影/松本かおり)


 決勝後に「アルテミのフォワードは日本代表が多く、自分たちもそこ(フォワード戦)が勝負と思っていました。絶対に受けず、フォワードから流れを作っていこうと話しました。モールで取り切ろうと話していて、最後に取り切れてよかった(ペナルティトライ)」と話し、表情を崩した吉田は、続けて「バックスの展開もよかったし、全員で流れをつかんだ試合です」と言った。

 この日、相手の3番はサクラフィフティーンのスクラムの要、加藤幸子だった(日本代表キャップ33)。吉田は「本当に強かったです」と体感を口にした。
「幸子が相手。もう一段階ギアを上げないと、と思いました。最初のスクラムでペナルティをとられた。やばいぞ、と」
 しかし、ズルズルとはいかなかった。
「うしろからの押しも良くて(アルテミから)何回もペナルティをとれた。TKMのフォワードは強いな、と思えました」

 小2の時から柔道に打ち込んでいた。強豪の八千代高校に進学(千葉/先日引退を発表したパリ五輪金メダリスト、角田夏実の母校)し、インターハイで全国3位(78キロ級)の実績もある(高2時)。山梨学院大でも柔道部で活動を続けた。
 大学卒業後の生活を考えているタイミングでTKMの長谷部直子ヘッドコーチと出会い、人生が変わる。同HCはチームが15人制でも上昇するため人材を探していた。

 その日HCは、バスケットボール部を訪ねた足で、たまたま柔道場も訪れた。プロップに向いている人はいないかな。社会人になっても柔道を続けるかどうか迷っていた吉田に「からだ、強そうだね」と話しかけた。
「チームでやる競技か。楽しいかも、と思ったんです。で、やるからには日本代表になりたいと思いました。それならちゃんと転向しよう、と」

体の強さを活かしてスクラムなど、セットプレーを中心にチームに貢献したTKMの1番、吉田菜美。(撮影/松本かおり)


 柔道仕込みの体幹の強さがあったから「形を作れて、最初から、なんとなくスクラムを組めたんです」。
 結果、1年目から先発で起用される。「それが成長につながったと思います」。

 組んで体得した感覚にコーチ陣からのアドバイスを付け加え、個人としてもチームとしても強くなるスピードは高まった。
 スクラムを教えてくれる青木佑輔コーチ(東京サントリーサンゴリアスアシスタントコーチ)は、パワーポイントなどを駆使して、フォワード一人ひとりの役割を明確にしてくれる。バインドや、相手と組み合う頭の使い方など、細かいスキルの伝達もためになる。

「これをやれば大丈夫、こうすれば勝てる」と、ラインアウト、モールの要点を伝えてくれるのは、総監督補佐でもある北川俊澄コーチだ。一人ひとりの頭の位置なども教えてくれる。「それを全員が、自分たちのフォーカスポイントと、共通して認識できるようになりました」。

 日本代表の経験もある2人のコーチが強調したのは「タイト」。塊になって押す意識を、ロックの松永美穂やフランカーの永岡萌主将を中心に徹底した。
 吉田は、「個々の力というより、みんなが一つのことをやり切ろうとしています。チームの絆がとても強くなったと感じています」と話す。

3537人のファンが集まったこの日。TKMの永岡萌主将は、「ファンの方々や日本ラグビー協会が試合のことを拡散してくれたことも(多くの人たちが観戦してくれた理由に)あると思います。この試合を見て、さらに普及が進んだり、女子でもできるんだよ、と思ってくれたら嬉しい」。長谷部直子HCは、「私たちの頃(自分が現役だった時代)は無料でも人が入らなかった。有料でもこれだけの人たちに応援してもらえる、注目してもらえていることが嬉しいですね。私たちも地域の方に応援されるようになってきています」と話した。アルテミ・スターズの山本和花主将も「試合前にいろんな方々から声をかけてもらった」と喜び、藤戸恭平HCは「(所属していたNEC)グリーンロケッツと(観客数は)同じぐらいですね」と笑わせた後、「しっかりトレーニングをしてストレングスの面などが強くなり、ラグビーの醍醐味であるコンタクトプレーの質が上がるなど、女子ラグビーのプレーレベルが高まったことも人気が出た原因だと思います。見て面白い、感動できる試合はできています。知ってもらえたら(もっと広がる)。リーグワン・ウーマンみたいなものが立ち上がると世界と戦える(ようになる)し、(もっと)盛り上がる」(撮影/松本かおり)


 25キャップの川村雅未が欠場していたとはいえ、2番の谷口琴美(29キャップ)、3番の加藤(33キャップ)、4番の櫻井綾乃(26キャップ)と昨年W杯に出場したメンバーたちが揃うフォワードを押し込めたのは、バラバラでなく、束になって挑めたからだった。
 みんなで戦ったから勝てた。

 吉田自身は、昨年初キャップをつかみ、スペイン戦でもピッチに立ちながらもイングランドへ仲間たちと向かえなかったことが悔しい。
 TKMが頂点に立った喜びは言葉にできないほどの大きさも、常に日本代表で活動できる存在となる目標には、まだ届いていない。

 関東大会や全国女子選手権の準決勝、決勝でW杯組とやり合い、結果を残して手応えを感じている。
「もっと頑張れます」の言葉は、国内王者となった自信と、あふれる意欲の表れだ。









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