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【Just TALK】「本当にチームに必要とされる人間になる」。佐藤健次[埼玉パナソニックワイルドナイツ]
2025-26シーズンは開幕からの全6試合に途中出場。昨秋の日本代表欧州遠征4試合では全試合に先発出場した。©︎JRLO
2026.02.05
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【Just TALK】「本当にチームに必要とされる人間になる」。佐藤健次[埼玉パナソニックワイルドナイツ]

向 風見也

 勢いよく、かつしなやかに壁を突き抜けていた。

 埼玉パナソニックワイルドナイツの佐藤健次が独自の凄みを示したシーンのひとつが、1月17日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場であった。

 ジャパンラグビーリーグワンD1の第5節に、リザーブのフッカーとして出場していた。後半36分。敵陣ゴール前右で、味方が組んだモールのうしろから駆け出す。迫る4人のタックラーが捕まえにくるのを順に振りほどき、そのままフィニッシュした。

 本人の所感は。

「『相手がどう来たから身体をこう使って』というのはなく、何も考えてないで、感覚で動いているだけ。あんまり『これを意識した』というのはなくて、本当に感覚であそこまでいけました」

 直後のゴール成功でスコアを50-21とし、対する横浜キヤノンイーグルスを撃破。開幕5連勝を果たした。件のシーンについて続ける。

——「感覚で動いているだけ」。言い換えれば、普段からのトレーニングで鍛えた成果が生きた。

「そうだと思います」

——集まってくる相手を蹴散らすというより、振り切っている印象でした。

「もともと僕、身体があまり強いわけではないので、ボディコントロールをうまくしながらラインブレイクしていきたいなというの(考え)はある。そこで、いい結果になったのかなと」

 身長177センチ、体重105キロの23歳。2024-25シーズンの早大主将だ。途中加入した昨季から、アーリーエントリーとして公式戦13試合に出た。

 実質1年目の今季は、開幕直前期まで日本代表の活動に参加。9キャップ(代表戦出場数)を積み上げた。11月の欧州遠征では全4試合でスターターを務め、機動力をアピールした。

2003年1月4日生まれ、23歳。177センチ、105キロ。高崎ラグビークラブ(幼小)→横浜ラグビースクール→桐蔭学園→早大→埼玉パナソニックワイルドナイツ。日本代表キャップ9。(撮影/向 風見也)


 話したのは1月20日。東京サントリーサンゴリアスとの第6節を31-30で制する4日前のことだ。

 場所は、その日の試合会場となった熊谷ラグビー場の近くのクラブハウスである。同僚のフッカーで、ワイルドナイツの主将を担う坂手淳史の記念Tシャツを着て語った。

 チーム提供のウェアを着てメディアへ出る不文律を踏まえ、「僕、こういう時(取材などで)はアサさんのTシャツ(プロップのヴァル アサエリ愛に関する1枚)かこれを。練習で使わないやつを着ようと決めているので」。話題はまず、ワイルドナイツでの日々についてだった。

——ワイルドナイツでは今季から、佐藤さんと同じフッカーで日本代表76キャップの堀江翔太氏がフォワードコーチを務めています。

「アタックでも、ディフェンスでも、セットプレーでも、堀江さんにアドバイスをもらうことが多い。本当にイチから教えてもらっているなと。全部と言っていいほど、いろいろとコミュニケーションを取らせてもらっています」

——堀江さんの担当領域はスクラム。フォーカスポイントは。

「(先頭中央の)フッカーとして、うしろ5人のプッシュをもらうことを一番、意識しています。(ポイントは)姿勢ですね。何ですかね…。そこ(背筋を一定にすること)は大前提で、高さをロック(2列目)と合わせながらやっています」

——物理的には、2メートル前後のロックよりも佐藤さんのほうが低い位置になる。

「僕が1人で低くなったら、個人としては(腰が落ちて)強く組めるかもしれないですけど、8人で見た時にはうしろの押しをもらえているほうが強い」

パワーではなく、巧みな身のこなしで前進する。(撮影/松本かおり)


——互いにとって最適解となる「高さ」を共有しているのですね。

「ゲームのほうが、うまくいっているかもしれないです。練習のほうがいろいろとミスが起こったり、押されたりすることがあります。僕たち自身というか、僕自身の問題でいろいろと。ただ、ゲームデーは、何か、コンディションがいいのか、気持ち的なことかもしれないですが、身体がめっちゃ動きます。(個人的には)毎日まったく同じルーティーンなんですけど、S&C(チームの肉体強化部門)の『(当日から逆算し、日々)どこまで強度を上げるのか』というものもはまっていて、ゲームでは、嫌だなと思ったことがないです」

——ところで最近、試合のメンバー表をSNSで共有する際に「Hoka ki mu’a」と付記していますね。トンガ語で「前に進む」「ファイトし続ける」。

「リサラ(・フィナウ=大東大出身の右プロップ)が同期なので、トンガ語で挨拶をしたり、ワンフレーズを覚えたり。(きちんとした)勉強はしていないですけど、リサラと喋る時はほぼトンガ語の話です。

 南アフリカの言葉での挨拶も、他の皆に教えてもらっています。コミュニケーションの一環というか。皆も、日本語を覚えてくれているじゃないですか。だから、僕もちょっと勉強しようかなという感じですね。

 リサラとはポジション柄もあって、めっちゃ仲がいいです。同期ではその他にも、いま、ユアン(・ウィルソン、フランカー)、モーリス(・マークス、ウイング)、(スクラムハーフの李)錦寿と、5人が(公式戦の)メンバーになっています。他には(ロックの田島)貫太郎、(右プロップの石川)槙人もいます。同期の皆で一緒に試合に出られたら、楽しいかなと。若く、力強いエナジーを与えたい。どんどんワイルドナイツを引っ張っていけるような年代になれたら」

 2月2日発表の日本代表候補に名を連ねた。そのリストが水面下で作られていた頃には「あんまり、そういうニュースとかは見ないので。選ばれていなくても、選ばれていても、やることには変わりない」。ただ、「ワールドカップ(2027年のオーストラリア大会)に向けて頑張りたい。将来的には世界のレベルでやりたい」とも続けた。

日常から学ぶことの多いワイルドナイツでの日々。多くのコミュニケーションをとる。(撮影/松本かおり)


 出身の桐蔭学園高の先輩で、同じ代表フッカーの原田衛がスーパーラグビーのモアナ・パシフィカに新加入。それ以前から佐藤は、強豪国でのプロ生活にも興味がある。

 大志を抱きつつ、いまは「まずワイルドナイツに集中しながら、ワールドカップへの意識も持って頑張りたいです」というスタンスでいる。

「(リーグワンでの)優勝はもちろん、毎日、毎試合、自分のパフォーマンス、スキルを上げていくことにフォーカスしてやっています」

 Tシャツの胸元の人についても聞かれた。

「坂手さんという主将であり、信頼されている人がいるなか、もちろん(ワイルドナイツでの定位置争いに)チャレンジはします。ただ、だからといって自己中にアピールするより、本当にチームに必要とされる人間になる(のが先)。リザーブで出る時には違ったシチュエーション、役割がある。リザーブはゲームを締めることが求められ、流れが悪かったらゲームチェンジャーにならないといけない。スタートよりも、難しいと感じます。だから前半からよく試合を見て(適応する)。少しずつプレータイムは伸びてきています。このまま自分の持ち味を出しながら、アジャストしていけたらと思います」

 2月7日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でリコーブラックラムズ東京とぶつかる。16番を背負う。









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