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0-46の衝撃的大敗から1か月。
リーグワン2025-26シーズンの開幕戦で埼玉パナソニックワイルドナイツに敗れた東芝ブレイブルーパス東京が、少しずつギアを上げている。
1月17日には秩父宮ラグビー場で浦安D-Rocksと戦う同チームは前節、三菱重工相模原ダイナボアーズに22-47と勝利し、今季成績を3勝1敗とした。
リーグワン3連覇を目指すチームは第4節終了時で12チーム中4位となっている。
完封負けのスタートとなったチームは、26-22と初勝利となった静岡ブルーレヴズ戦で4トライを挙げると、41-19と快勝した横浜キヤノンイーグルス戦で7トライ、ダイナボアーズ戦でも7トライと、攻撃力の高まりを感じさせる試合内容を見せている。
HO原田衛がモアナ・パシフィカ、LOワーナー・ディアンズがハリケーンズと活躍の場をスーパーラグビー・パシフィックに移しただけでなく、バックローのリーチ マイケル主将、シャノン・フリゼルが怪我で戦列を離れている。
そんな状況の中でチャンスを掴んだ選手たちが躍動し、チームを前に進めている状況が歩んでいく先を照らしている。

フレッシュな顔が並ぶ布陣の中でここまで4トライと、チャンスをスコアに変える働きをしているのが新加入のWTBティージェイ・クラークだ。ダイナボアーズ戦では3トライを挙げて勝利に貢献した。
前半は17分にフリーでパスをもらい、インゴールにボールを置いたのに続き、30分にNO8山本浩輝がトライを上げる過程では左サイドを駆け上がり、インサイドに巧みにつないだ。
多くの選手のサポートプレーから攻め切る、ブレイブルーパスらしい攻撃の中で機能した。
後半の2トライは、広いスペースの中で相手の動きをよく見て抜き去ったものと(33分)、狭いスペースで強さも見せたプレーの結果だった(44分)。インゴール左隅に飛び込んで試合を締め括った。
1試合3トライのパフォーマンスを「チームが良いプレーをした結果」と話し、仲間への感謝を伝えた。
ハリケーンズ(スーパーラグビー)では1試合だけの出場も、NPC(ニュージーランド国内の州対抗選手権)ウェリントンで活躍してきたクラークは、9月まで同代表でプレーした後に来日、ブレイブルーパスでは開幕から全4戦に出場している。
自身の強みを「外のスペースを取り切る。オフロードパスも」と話す好ランナーはまだ23歳。完成品ではなく、日本ラグビーの中で成長するつもりでブレイブルーパスに加わった。
チームの指揮を執るトッド・ブラックアダー ヘッドコーチはイーグルス戦でトライを挙げる一方で2枚のイエローカードを受けたことに触れて「もらい過ぎ」。やんわりと苦言を呈す。
本人は「そこは直していかないといけないところ。チームのみんながハードワークしたあとに、自分のプレーで悪い状況にしていてはダメ」と反省する。
若くして日本でプレーする決断をしたのは、ハリケーンズではなかなか出場機会を得られず、成長のスピードが上がらないと考えたからだ。
「ブレイブルーパスでいい成長ができるのではないかと思い、決めました」

その判断は間違いではなかったと感じている。
「ラグビー選手なら誰もが知っているリッチー(モウンガ)やセタ(タマニバル)、ボビー(ロブ・トンプソン)など、周囲の選手から教わることも多いし、フォワードのリーチさん、佐々木(剛)さんら、リーダーの存在が自分の成長につながっています」
ブラックアダーHCら指導陣にも敬意を表し、「彼らが作り上げたチームの文化を気に入っています。練習に行きたくなるし、試合に出たい。そんな気持ちが強くなっています」と話す。
ニュージーランドの南島から東へ800キロ。チャタム諸島が故郷だ。
人口600人ほどの同地は医療環境が整っておらず、母はウェリントンでティージェイを出産した。生後3週間で島へ戻る。父は水産業に従事し、ロブスター漁を生業にしていた。
3歳の時、父もプレーしていたチャタムアイランドラグビークラブに入った。
父の病気の治療もあってオーストラリアに移り住んだのが9歳の時。パースを経てシドニーへ。NRL(ラグビー・リーグ/13人制)のクロヌラ・シャークスのディベロップメントチーム(U13-14)に所属し、ハードかつボールをよく動かすスタイルのラグビーをプレーした。
その後、家族がウェリントンへ移住したのをきっかけにニュージーランドに戻り、15人制ラグビーに復帰。高校で力を伸ばし、ペトネクラブで結果を残してNPCレベルへ。2025年のハリケーンズとの契約は、NPCを制したウェリントンでの12試合7トライの活躍が認められてのものだった。
スーパーラグビーの契約を手に入れた際の地元紙のインタビューで、NPC(ウェリントン代表)での活動がないオフは、父の漁を手伝ったり、家族の農園で働いていると話している。
素朴なナイスガイは、日本でのキャリアをできるだけ長く続けたい希望を持っている。
ゲームキャプテンを務め、バックスリーでともにプレーするFB松永拓朗はティージェイについて、「スピードがあり、若く、アグレッシブな選手。プレシーズンでは一緒にプレーする機会が少なかったのでシーズンに入ってから彼のプレーを探りつつ、どのタイミングでパスを放ると彼が輝くのか、どういうディフェンスを望んでいるのか、見つけている感じです。これからもっとチームにマッチすれば、さらにレベルの高いプレーをしてくれるはず。チームのことを理解してプレーできているので、さらによくなると思っています」と期待する。
ワールドクラスの中でも最上位と言っていいモウンガと共にプレーし、「カオスな状況でも焦らず、落ち着いて自分のスキルセットを使い、プレーを遂行するのが凄い」と、その凄みを言葉にする。
さらに、「フィールド外では人を寄せ付けぬオーラなどまったく出さない人。いまは試合じゃない。みんな一緒だよ、という空気を作ってくれる」と人間性から学ぶものも多い。
小さな島の出身者が、異国の地で夢を叶える道を走り出した。
いいことばかりが続くわけではないのはわかっている。でも、荒れた海なら何度も見てきたから大丈夫。良き航海にしたい。