ラグビーの大学選手権の決勝は1月11日に東京・国立競技場であり、関東大学対抗戦Aの最終週でぶつかった明大と早大が再戦。12月7日の国立での対戦時は明大が25-19で勝利も、陣営は気を引き締める。
1月2日、やはり国立でおこなわれた準決勝では、早大が4連覇中の帝京大に規律面、陣地の獲得で上回って31-21で勝利。かたや明大は京産大を37-19で制するも、20点リードで迎えた後半に追い上げられたのが気になっていた。
センターの平翔太主将は言う。
「前半、いい形でしたいラグビーを徹底できましたが、点差が開いた時に自分たちの隙が見えた。『生きた(フィールド上に立つ)人間』を増やしてタックルの精度、横とのコネクションの質を上げ、来週の決勝へ準備したいです」
続けて取材に応じたのは伊藤龍之介。國學院栃木高出身の3年生だ。スタンドオフとして先発し、持ち前の技術ときれで得点を演出していた。
7-7で迎えた前半21分、おとりの選手の背後から飛び出して防御を引き寄せながらパス。平の勝ち越しトライを演出した。
直後の23分頃には自陣深い位置から複数名のタックラーをかわし、引きずり、敵陣10メートルエリアまで侵入。そのまま攻撃を継続させ、25分にはラインアウトモールから21-7と点差を広げた。
適宜ハイパントを織り交ぜた試合運びも、序盤の大量リードの一因とした。

——まず、高い弾道のキックを増やした意図は。
「最初は、アドバンテージが出たら強気に攻める(と意識)。ただ、それがなかなかはまらなかったので(序盤から猛攻もなかなかスコアできず)、じゃあ、もうちょっとハイパントを蹴ろうか…となりました」
——そして流れがよくなってくると、ご自身のビッグゲインでさらに勢いづけました。
「たまたま前が空いていたので、仕掛けられてよかった。(接点方向から外側へ)流すディフェンスだったので、自分の前は空くだろうと思ってプレーしていた。それがいいランに繋がりました」
——蹴るか、走るかのバランスについて。
「キックを使いながら、前を見て、いい選手に早めにボールを渡してひとりひとりのブレイクを(誘う)。
まだ、もっと(トライを)獲り切れるシーンが何個かありました。そこで獲り切るのが、次の課題です。
一応、今回の京産大戦に向けて何個かオプションは準備しましたが、それを使わずして勝てたのはそれが一番。次はそううまくいかないと思うので、準備したアタックとキックをいい塩梅でできたら」
心配されたのは後半8分。接触プレーのあった伊藤龍がフィールド上に倒れ込んだ。
右足首を固めるためか、スパイクの上からテーピングを巻き、19分までプレーした。
「タックルをもらい、足首に巻き付かれてグリっとなってしまったのですが、あとから見てみたらそんなに大したことはない。ちょっと、痛がり過ぎたかなと! (決勝は)問題なくできると思います」
昨季は20歳以下日本代表、若手育成プログラムのジャパンタレントスコッドに名を連ね、今季は23歳以下日本代表としてオーストラリア遠征を経験した。
着実にキャリアを積み上げるが、チームでは受難の時期も過ごした。
夏、未成年部員の飲酒が発覚。当事者を含む5選手が謹慎したなかで迎えた対抗戦初戦では、筑波大に24-28で敗れた。
その当時、神鳥裕之監督から告げられた内容をもとに話した。
「ひとつの行動で、いままでやってきたことの全てが崩れてしまうかもしれない。今回はいろんな人の助けでどうにか対抗戦に出られたけど、ここで終わっていてもおかしくなかった。…そういう話はありました」
自身は無関係だったアルコールのトラブルについても、当事者意識を持った。
「真面目にこつこつやっていかないと、自分たちのプラスになることはないなと」

以後もしばらく浮上し切れずにいたが、11月2日、東京・秩父宮ラグビー場での5戦目を機に覚醒した。
この日の慶大戦で24-22と苦戦したのを受け、主力組と控え組が激論。自分たちの強みを見直す時間も作り、キック主体の戦法を再構築した。伊藤龍ら一部のアタックリーダーが担ってきたゲームプランの策定に、フォワードの選手も加わるようになった。
結束力の高まりで好循環を生んだ。11月16日、秩父宮で帝京大を21-17と撃破。早明戦も制し、5年ぶり19回目の対抗戦優勝を果たした。伊藤龍は述べる。
「筑波大戦の負けがあったからこそ…とは言いたくないですが、あれがなかったら帝京大、早大に勝つことはできていなかったと思います。また納得のいかなかった慶大戦のあとに『まずい、直そう』と危機感を持てたことも結果に繋がっています」
そして正月2日。あらためて振り返る。
「相手をもっと分析し、自分たちの強みを出すのに無理をしないために、細かく、細かく話しました。全員の明大ラグビー部の理解度を上げる(のが目的)。11~12月にいい準備ができた。ただ、関西学院大戦(12月20日/秩父宮/選手権の準々決勝/○46-19)のタイミングで、準備が少し疎かになった印象です。今回は京産大戦へ、細かいプランを立てて取り組みました」
——次は、チームにとって2大会ぶりの選手権決勝です。
「2年前(1年時)はボールボーイをしていた。しっかり選手としてその舞台に立つのは初めてです。どんな緊張感があるのかはわかりませんが、いままで通り、この1週間と少しで相手と自分たちを分析し、悔いなくやり切れれば」
——早大の服部亮太選手との司令塔対決が注目されます。
「前回は皆がすごくいいプレッシャーをかけたことで自由にさせなかった。また、向こうも準備してやってくる。僕にもプレッシャーがかかる。そんななか、いい勝負ができればなと」
勝てば7季ぶり14度目の大学日本一に輝く。