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【SIX NATIONS】準備不足!? フランス、首位で最終節迎えるも、半日練習3回→スコットランド戦敗戦で指摘噴出。
7トライを奪われて敗れる。写真は、そのうちの2トライを挙げたスコットランド代表の14番、ダーシー・グレアム。(Getty Images)

【SIX NATIONS】準備不足!? フランス、首位で最終節迎えるも、半日練習3回→スコットランド戦敗戦で指摘噴出。

福本美由紀

 シックスネーションズ第4節、フランスはスコットランドに40-50で敗れた(3月7日)。
 最終スコアだけ見れば接戦だったように感じられるかもしれない。しかし、レ・ブルーはマレーフィールドで完膚なきまでに打ちのめされたのだ。スコットランドの勝利を予想できたとしても、これほどまでにフランスが崩壊するシナリオを誰が予想できただろうか。

 フランスは、試合開始早々、スコットランドに先制トライを許すも(4分)、その後2トライを立て続けに返し(17分、21分)、14-7とリードを奪った。しかし、この試合中にフランスの選手に笑顔が見られたのは、この時が最後になる。

 その後、スコットランドがフランス陣10メートルでペナルティを得て、ショットではなくタッチに蹴り出し、素晴らしいサインプレーを披露した。ラインアウトからモールを作るように見せかけ、すぐにボールを出し、ボールを受けたHOジョージ・ターナーが中央へ向かって駆け出してディフェンスを惹きつける。走り込んできたWTBカイル・ステインとクロスして繋ぎ、ステインがゴール前にできたスペースを全速力で走り切ってグラウンディングした(14-12、26分)。

『ミディ・オランピック』紙は、「安易に『ペナルティからのラインアウト・モール』という選択肢に逃げることを拒んだのだ。その動きは、明らかにスタッフによる鋭い分析の賜物であり、カメラの届かない練習キャンプで、秘密裏に幾度も繰り返され、磨き上げられた成果であった」と讃えている。

 さらにスコットランドの猛攻が続く。
 フランスはスピードについていけず、ペナルティを繰り返す。「次にペナルティを犯したら、カードが出る」とレフリーから警告を受けた直後、スコットランドがフランスゴール前に再び攻め込み、さらにトライを上げた。この攻防で、SOマチュー・ジャリベールがオフサイドを取られ、10分間退場となった。

スコットランドと戦ったフランスのメンバー。France Rugbyの公式Instagramより


 その後はなんとか守りきり、追加点を許さず前半を14-19で終えた。ボールポゼッションはスコットランドが70パーセント、フランスは30パーセント。タックル数はスコットランド39(ミス5)に対し、フランスが120(14)。防戦一方なのだ。しかも、タックルミスに含まれない、ポジショニングのミス、連携のミスで抜かれるシーンもしばしば見られた。この状態で5点差にとどめられていたのは奇跡的と言えるだろう。

 ハーフタイムのあと、現地中継局のマイクに「シナリオをひっくり返さなくては」とファビアン・ガルチエHCは語った。しかし、シナリオは悪夢へと進んだ。
 まずは41分、SHアントワンヌ・デュポンによる自陣脱出のタッチキックがあまりにも短すぎた。自陣22メートルに入ったところから蹴って、自陣22メートルを少し越えただけ。普段の彼の飛距離の半分も飛んでいない。自陣から逃れるどころか、チームを窮地へと陥れた。

 ディフェンスでも多くのミスが見られた。44分には、HIAで退場を余儀なくされたNO8アントニー・ジュロンに代わって入ったレニ・ヌシがラック周辺での守備位置を読み違え、相手SHベン・ホワイトの目の前にスペースを献上し、トライを許した。59分には、CTBヨラム・モエファナが終始後手に回り、相手WTBダーシー・グラハムに中央突破を許してしまった。

 さらに、レフリーのアンガス・ガードナーがデュポンに告げた「愚かな反則」の数々も追い打ちをかけた。
 LOエマニュエル・メアフー(48分)やFLフランソワ・クロス(53分)がラックでペナルティを取られ、自分たちのボールをやすやすと相手に返してしまい、59分にはヌシがモールを崩してイエローカードを提示された。また、直前に言い合いを演じていたベン・ホワイトに対し、FBトマ・ラモスがレイトタックルを見舞うという、冷静さを欠いた反則もあった(57分)。

 味方のミスをカバーしようという焦りから、さらにミスを重ねる。ペナルティを犯しては相手を自陣に入れ、ディフェンスのミスは相手のトライにつながり、たまにボールを持ってもミスでチャンスを潰す。これまで味方にしていたボールのバウンドにも裏切られる。相手の勢いを止めることができず苛立ち、崩れていった。62分までに4トライを許し、14-47と点差を広げられた。ガルチエ体制下での最悪の時間帯だった。

「後半、試合が自分たちの手からこぼれ落ちていったのは、スコットランドのモメンタムを止めることができなかったから」
 試合後、ラモスはそう振り返った。
「トライを奪われた時こそ、冷静にならなければならない。『みんな落ち着こう。規律に気をつけて、敵陣に戻って再びボールを支配しよう』と声をかけた。でも、それができなかった」

対フランスのスコットランドメンバー。Scottish Rugbyの公式Instagramより


 ファビアン・ガルチエHCは、試合をこのように分析する。
「展開を見ればスコットランドの勝利は妥当であり、当然の結果だ。彼らは素晴らしい試合をした。試合の3分の2の時間帯、彼らはラグビーの基礎、この競技の本質的な部分で我々を圧倒した。つまり、セットプレー、接点での攻防、アグレッシブさ、そして空中や地上でのこぼれ球に対する集団としての反応だ。片方のチーム(スコットランド)はボールを保持して前に出ながらプレーし、もう片方(フランス)はボールを持たずに後退しながらプレーしていた」

 また、チーム全体に漂っていた『負の連鎖』について問われると、こう答えた。
「セットプレーやボールポゼッション、そしてコリジョンの局面で圧倒されたところから始まっている。スコットランドがスコアを動かしていったが、我々が前半に14-7とリードできていたことの方が、むしろ信じられないくらいだ」

 前節までの3試合で、フランスはわずか34失点、被トライ5と、昨年11月のテストマッチからディフェンスの立て直しに成功したかに見えた。しかし、この試合でその評価は見事に覆された。特に綻びが顕著だったのは、ヨラム・モエファナとニコラ・ドゥポルテールの両CTB間だ。モエファナにいたっては、記録したタックル8つのうち7つを外している。2人とも開幕節のアイルランド戦で負傷し、その後欠場していた。その間、彼らに代わって出場機会を得ていたファビアン・ブロー=ボワリーが前節のイタリア戦で指を脱臼したため、今回は欠場となった。しかし第2節でブロー=ボワリーとエミリアン・ガイユトンをCTBに起用する際「怪我による交代」と強調していたことを踏まえれば、指揮官にとってのファーストチョイスは、モエファナとドゥポルテールのコンビなのだろう。

 モエファナは3月1日のトップ14で34分間プレーしたのみで、ドゥポルテールに至ってはこの試合が復帰戦だった。このレベルの激戦を戦い抜くための準備が不足していたのではないか——そうした指摘は免れないだろう。

 中盤での守備で苦戦を強いられたことについてガルチエHCは、「スコットランドのプレーは見事だった。特にCTBのコンビ(12.シオネ・トゥイプロトゥ、13.ヒュー・ジョーンズ)だ」と相手のコンビを称えた。
「彼らはボールキャリアの周囲でスペースを見つける能力や、コリジョンに勝つための隙間を見つけるのが非常に上手かった。彼らが仕掛けてきた戦術に驚きはなかったが、我々はそれを防ぐために意図していたプランを遂行できなかったのだ」

 ドゥポルテールはこの試合の24分に肩を脱臼したが、45分までピッチに立ち続けた。診断の結果、手術を受けることになり、復帰まで約4か月かかる見通しで、今シーズン中の復帰は困難な状況だ。

『ミディ・オランピック』紙は、準備が十分ではなかったのではという疑問を呈している。同紙によると、ガルチエ体制の発足当初は、「練習を試合よりも過酷なものにする」という強い意志を掲げていた。しかし、大会終盤にエネルギー不足に陥る現状を重く見た指揮官は、「精神的なフレッシュさ」を維持する方向に大きく舵を切った。過酷なトップ14のシーズンで疲労した心身を回復させることが不可欠だと考えたのである。

 ここ2年間にわたってリカバリーの時間が優先されてきたが、今年は、その傾向がさらに強くなっている。今大会の合宿開始(1月26日)から最終戦(3月15日)までの計48日間のうち、フランス代表のオフは17日半。実に全期間の35パーセント以上にのぼる。対して練習日は、試合前日の最終調整を除けばわずか9日。午前・午後の2部練習をこなした「フル稼働」の日に至っては、たったの3日しかなかったのだ。

 さらに、バイウィーク明けの「決勝戦」と位置づけられたこの一戦の前も、わずか3回の半日練習のみだった。唯一強度を上げた火曜日の練習も、体調を崩していたデュポンを含む一部の主力は負荷を抑えられていた。

 ジャリベール、モエファナ、ドゥポルテールが怪我明けであったことを踏まえれば、このような調整が、極めて重要な一戦に備えるには不十分だったのではないか。現地専門紙の視線は厳しい。

スコットランド戦の敗戦を伝えるFrance Rugbyの公式Instagram


 対して、同紙がスコットランドのグレガー・タウンゼントHCに尋ねたところ、彼らはバイウィーク中にも1日の練習日を設け、さらに試合直前の水曜と木曜にも高強度のトレーニングを2回実施していた。この差が、127のマイボールのラック全てでボールをキープし、ディフェンダービートゥン35(フランスは19)という数字に表れているのではというのだ。

 ただフランス代表は、合宿をおこなっている国立ラグビーセンターの人工芝と泥だらけの天然芝を行き来しながら練習を重ねる中で、選手たちの間にふくらはぎの筋損傷(ドゥポルテール、ジャリベール、フラマン、ジュロン、オラドゥ、コロンブら)が続発した。そのため、彼らは踏みとどまらざるを得なかったという事情も伝えている。1週間を通して50パーセントの強度でしか練習できず、結局イタリア戦前日に欠場を余儀なくされたジャリベールの前例があればなおさらだろう。

「選手たちと話し合って決断を下した」と敗戦後にガルチエHCは溜息まじりに語った。
「我々の調整が議論の的になるのは無理もない。我々が受け取っていたシグナルはそうではなかったが、結果として調整不足の可能性は否定できない。負けたときは、何が起きたのかを直視し、改善していくしかないのだ」

 前節まで高確率で成功していたラインアウト(アイルランド戦94.1パーセント、ウェールズ戦100パーセント、イタリア戦88.9パーセント)もこの日は75パーセントまで精度を落とした。もはや「持病」となっているスクラムは、決してこのセクターで絶対的な強さを誇るわけではないスコットランドにまで支配された。右PRドリアン・アルデゲリはこの試合でも2度ペナルティを取られた。「今のフランスはスクラムが弱点だ」というイメージを世界に発信してしまった。レフリーの監視の目もより厳しく注がれることになるだろう。

 また、今大会で弱点から武器へと昇華させ、トライの起点としてきたハイボール処理も、この日は機能しなかった。前半、降り注ぐ太陽の光をまともに受けたことでキャッチミスを連発。さらに、こぼれ球を拾うための布陣さえも連動を欠き、貴重なボール獲得機会を逸していった。

 そして筆者が最も気になったのは、相変わらず『デュポン依存症』だったことである。
 この試合後、「デュポンも人間なのだ」という投稿をSNSで多く見かけた。もちろん、彼も人間だ。良い日もあれば、そうでない日もある。この試合では、後者だった。
 50分、SOフィン・ラッセルが深く蹴り込んできたボールを自陣22メートルで受けたジャリベールが駆け上がり中央まで陣地を戻した。デュポンはラックから出したボールを、近場にアルデゲリが上がってきているにも関わらず、相手のSHベン・ホワイトのタックルを受けながら、タッチライン際にいるWTBテオ・アティソベに飛ばした。そのボールは待ち構えていた相手WTBステインの手に収まり、そのままフランスのトライラインを超えた。

 この時点で、バティスト・セランを投入していれば、その後のインゴールでのスローフォワードという、デュポンらしくない痛恨のミスは防げたはずだ。ボーナスポイント獲得のために4トライ目が必要だったことも、デュポン・マジックに一縷の望みを託したくなる気持ちも理解はできる。

 実際その後、自陣22m内でボールを受けたジャリベールを起点にフランスらしい攻撃が始まった。モエファナ、アティソベ、再びジャリベール、アティソベと流れるようにボールが渡り、最後は内側へ走り込んできたデュポンへ。ステインの猛烈なタックルに抗いながら執念でインゴールへ転がり込み、ついに1トライを返すことに成功した。

 このトライのあと、ようやくデュポンを下げてセランを投入した。しかし、あまりにもデュポンに背負わせ過ぎてはいないだろうか?
 彼を「守る」という意味でも、もう少し早い段階で交代させるべきだったのではないか。今大会、デュポンはアイルランド戦で73分、次のウェールズ戦こそ58分だが、イタリア戦では75分、そしてスコットランド戦で69分プレーしている。忘れてはならないのは、彼は膝の靱帯損傷による長期欠場から開けて間もないということだ。

 2023年W杯準々決勝でも、頬骨骨折の手術を受けた直後でデュポンは万全とは程遠く、プレーの精度や判断も本来のレベルにはなかった。それでも最後まで彼を戦わせ、「なぜマキシム・リュキュと交代させなかったのか」という批判の声が上がった。

 ラグビーは15人、いや、いまは23人で戦う競技だ。一人のスーパープレーヤーだけで勝利を掴めるスポーツではない。ましてやW杯の頂点を目指すのであれば、なおさらだ。一人の超人的な能力に依存するのではなく、彼が不調であっても、あるいは不在であっても勝ち切れるチームづくりと戦術が不可欠ではないか。いまのフランスには、それだけの人材が揃っているはずだ。

第5節を終えた時点での順位表。Guinness Men’s Six Nationsの公式Instagramより


 デュポンが退いた後、代わったセランが素早い球出しでテンポを上げ、フランスは怒涛の3トライを追加した。途中でスコットランドにPGを許したものの、最終スコアは40-50。4トライで与えられるボーナスポイントをもぎ取ったことで、勝ち点でスコットランドと並び、得失点差(フランス+79、スコットランド+21)で首位を死守した。これでフランスは最終節のイングランド戦で4トライ以上挙げて勝利すれば、アイルランド×スコットランドの結果に左右されることなく自力で2連覇を達成できる位置につけた(最終節は3月14日実施)。

 しかし、この試合でフランスはメンタルの脆さも露呈した。スコットランドは、フランスを追い詰める周到な戦術を用意し、それを完璧に遂行した。
 試合後、スコットランドのFBブレア・キングホーンがトゥールーズでのチームメイトであるラモスに、「ボーナスポイントを取りやがって、勘弁してくれよ!」とぼやいていたという。その言葉から、彼らが単にフランスの連覇を阻むためではなく、6か国対抗となって以来の「自分たちの初優勝」を本気で狙い、戦っていたことがうかがえる。

 最終節、果たしてどんなシナリオが待ち受けているのか。シックスネーションズは、やはりおもしろい。


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