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シックスネーションズ第3節、フランスはイタリアを33-8で破った(2月22日)。これで開幕から3戦全勝、全試合でボーナスポイントも獲得し、2位のスコットランドに勝ち点差6をつけて連覇へ向けてまた一歩進めた。
しかし、メディアやファンの声はシビアである。
現地メディアはこの試合でのレ・ブルーのパフォーマンスを「もたついた」、「雑で精彩を欠いた」、「不完全」と評する。
初戦のアイルランド戦、そして2戦目のウェールズ戦で見られた、SOマチュー・ジャリベールとFBトマ・ラモスがポジションを入れ替えながら繰り広げられる華々しいアタックがイタリア戦では影を潜めた。肉弾戦を制して勝利を掴んだと言える。
ファビアン・ガルチエHCは試合後の記者会見で次のように振り返った。
「予想通り、非常にタフな試合だった。相手は非常に激しくぶつかってきて、これまでの2試合とは全く異なるシナリオで、閉鎖的な展開になった。前半、我々は数少ないチャンスで着実に得点する勝負強さを見せた。その後は、ひたすら力比べに耐えなければならなかった。ボール・イン・プレイの時間が短く、空中戦や地上戦でのぶつかり合いが中心で、今大会でまだ経験していなかったリズムに直面したが、その力比べを制することができた」

試合前夜に、ジャリベールの欠場が発表され、15番の予定だったラモスが10番に、WTBのテオ・アティソベがFBにスライドし、初出場のガエル・ドレアンがWTBで先発出場することになった。この直前でのメンバー変更が、アタックの組み立てに影響したのだろうか?
その問いに対してガルチエHCは、「我々の攻撃を狂わせた最大の要因は、何よりもイタリア代表のプレーそのものだった」と前置きした上で、「ポジショニングや、セットプレーからの一次攻撃でミスがあった。細かいディテールのズレもあった。常にチームで準備を重ねてはいるが、いざ試合が始まってしまえば、練習通りとはいかない。イレギュラーな布陣になるというのは、やはり別物なのだとあらためて痛感させられた」と認めながらも、
「しかし、これは良い経験だ。布陣が動くことに慣れていかなければならない。特定のメンバー構成だけに依存するわけにはいかない。確かに今回は『居心地の悪い状況』に置かれたが、選手たちはその中でしっかりと解決策を見出してくれた」と選手の適応能力を評価した。
イタリア側が最初の2試合(アイルランド戦、ウェールズ戦)を分析し、9番から10番、そして10番から走り込んでくるFWへ繋ぐパス回しを狙って潰しにくることを予想して、戦い方も変更していた。
「FWを当てていく、よりベーシックな戦い方に立ち返った。実際、9-10からFWへパスを送る形を一度だけ試したら、その瞬間にインターセプトを食らってしまった。彼らが我々をよく研究し、その局面に強いプレッシャーをかけようとしていた証拠だ」とラモスが明かしている。
常にチームのプレーを牽引しているラモスに、この日は珍しいミスが散見された。
まず、本人があげているインターセプト、そしてダイレクトタッチ、次いでペナルティからタッチキックがラインを出ない。そしてイタリアのプレッシャーを受ける中、自陣深くから無理な突破を試み、結果としてトライを許してしまった。
それでも鋼(はがね)のメンタルを持つ彼は、ダイレクトタッチのすぐあとに自陣から50/22キックを決めて陣地を挽回。敵ラインアウトからのこぼれ球を拾って独走するCTBエミリアン・ガイユトンに追いつき、最後のディフェンダーを跳ね除けて仕留め、トライも挙げた。終盤にはドレアンに絶妙なパスを出して代表初トライをプレゼントした。
やはり、特別な選手であり、もし彼がいなければ、誰が彼の役割を果たせるのだろうという疑問が浮かんできた。
デュポンも、ディフェンスで決定的なタックルやジャッカルでを見せて、イタリアの勢いを断った。アタックでも、トライゾーン内にピタリと止める正確なキックでビエル=ビアレのトライを導いた。
先の2試合でも感じられたことだが、デュポンが以前よりもチームを活かすためにプレーするようになっている。特に7人制を経てから「個の爆発力」で試合を動かそうとするきらいがあったが、怪我から復帰してからは、チーム全体を機能させるために自身の超人的な能力を使っている場面が見受けられ、精神的な成長が感じられる。
この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたLOエマニュエル・メアフーは、80分間フル出場で圧倒的な存在感を示した。彼がフランス代表で80分プレーするのは初めてのこと。トゥールーズでも、2024年1月のチャンピオンズカップのマンスター戦に遡る。この試合は「チャレンジだった」とガルチエHCは明かす。
「『彼にそれが可能なのか?』というね。その問いに完璧な答えを出してくれた。ハードワークをこなし、自分の担当エリアで存在感を発揮し、非常に効果的なプレーを見せてくれた。これがフランス代表での彼のベストパフォーマンスだ。彼自身、こうしたプレーができる時をずっと待ち望んでいたはず」
メアフー自身、この大会前に「代表レベルの舞台で、心底納得できる、自分のすべてを出し切ったと言える試合が、今の僕にはまだ欠けている」と『ミディ・オランピック』紙に語っていた。
1戦目、2戦目とベンチに置かれ、さらに、前週のウェールズ戦では、後半途中出場したもののHIAのため、わずか12分でピッチを去らなければならず、悔しい思いをしていた。
試合が始まるや否や、凄まじい気迫で攻守両面において役割を全うし、チームを前進させた。13回のキャリーで30メートルを稼ぎ、3人のディフェンダーをなぎ倒した。FW陣の中で彼を上回る距離を走ったのは、FLのオスカー・ジェグー(31メートル)のみ。CTBのファビアン・ブロー=ボワリー(27メートル)よりも長く走り、ビエル=ビアレ(39メートル)に迫る数字を、この巨漢LOが叩き出したのだ。
決めたタックルは10で、ブロー=ボワリーの14に次いでチームで2番目に多い。代表初トライも決め、自陣ゴール前から左足でのキックも披露した。
試合後、「自分の居場所を勝ち取るために努力した」とメアフーは語った。

ガルチエHCは、チームのディフェンスを称賛している。
「2度ほど突破されたが、それはタックルの位置が高く、より適切に対処できたはずのものだった。チーム全体の守備パフォーマンスとしては非常に素晴らしい。グラウンドの中央や自陣ゴール前でペナルティを犯すこともなかった。これまでの2試合ではゴール前を割られる場面が2度あったが、今回は一度も許さなかった。奪われたトライは自らのミスによるターンオーバーからのもの」と分析した。
「私たちは『ロマンチスト』だから、どうしてもボールを持った時の華やかなプレーについて語りたがるが、ボールを持っていない時のプレーもラグビーというゲームの一部であり、それが勝利をもたらすこともある。今大会はまさにその通りになっていて、ボールがない場面での選手たちの献身と決意を称えたい」と強調した。
一方、イタリアのゴンザロ・ケサダHCは「我々のミスがあまりにも多すぎた。フランスというチームはアンストラクチャーの局面をエサにして生き返る。点差が開いたのはまさにそこだ」と敗因を分析する。
ただ、フランスはアンストラクチャーから一気にトライを取り切る決定力はあるが、組み立てたプレーで取れたトライは、この試合の5つのトライのうち2つだけというのも気になるところだ。
そして、さらに懸念されるのがスクラムだ。
イタリアは、ここまでのスコットランド戦、アイルランド戦で、それぞれ4つのペナルティをスクラムで奪い、圧倒的な強さを見せていた。それに対抗するために、重量級のメアフー(203センチ、145キロ)を先発の右LOに、ジョルジュ=アンリ・コロンブ(193センチ、142キロ)を右PRの控えに配置した。しかし、結果は4つのペナルティと2つのフリーキックを与え、2度のターンオーバーを許した。
ガルチエHCも「明らかに、取り組むべき課題」と認め、「これはウィニ(アトニオ)を称える機会でもある。彼は長年、我々のスクラムのパフォーマンスに大きく貢献してくれた。彼がいかに並外れた選手だったか、今改めて痛感している」と思いをアトニオにはせ、「いま私たちは彼に代わる選手を見つけなければならない段階にあるが、ドリアン・アルデゲリとジョルジュ=アンリ・コロンブが見せたパフォーマンスは称賛したい」と付け加えた。アトニオの後継者探しは続く。
左PRも層が厚いとは言えない。ジャン=バティスト・グロが負傷退場した後、スクラムは劣勢になった。シリル・バイユは、今回も代表合宿には招集されているものの、足首の怪我から復帰したあとも痛みを抱えていると報じられており、トゥールーズでも今季10試合にしか出場していない状態だ。
ただ、「スクラムのせいで試合のリズムが崩れたわけではない」とデュポンは言う。現役時代PRだったラシン92のパトリス・コラゾHCも「スクラムのせいでフランス代表が試合を落とすことになるとは思わない。それ以外のすべてが盤石だから。これまでのシックスネーションズで見せてきたような『スクラム成功率93パーセント~94パーセント』という数字を、今年は維持できないかもしれない。しかし、その周囲に目を向ければ、ラインアウトなど他のプレー領域は非常に力強く機能しているのがわかる。時間が経ち、選手たちが経験を積んでいけば、スクラムの状態もどんどん良くなっていくはず」と楽観的に見ている。

開幕から3試合、得失点差は+89で、2位のスコットランド(+11)を大きく引き離している。トライ数も18で、彼ら自身が昨年樹立した大会通算記録30トライという金字塔を塗り替える可能性も見えてきている。残されたスコットランド戦とイングランド戦の2試合で、その記録更新と大会2連覇、そしてグランドスラム(全勝優勝)に挑むことになる。
今大会は日程面でも全チームに負荷を強いている。昨年までは、2試合して1週休みが入り、1試合してまた1週休み、そして最後の2試合となっていたが、今年から日程が短縮され、開幕から3週連続で試合がおこなわれることになった。イタリア戦で見せたもたつきは、疲労の表れでもあるだろう。
ラモスは現状をこう分析する。
「ボールインプレーの時間がアイルランド戦では42分、ウェールズ戦では45分と、長い時間ボールが動き続け、相当な距離を走らされた。それだけに、ウェールズ戦後はリカバリーに少し時間がかかった」
次戦の相手のスコットランドについてラモスは、「非常に攻撃的なチーム。極めて機動力の高いFWと、足の速いBK陣を揃えている」と警戒する。しかもアウェーである。「あそこで勝つのは決して容易なことじゃない。2年前、エディンバラで勝てたのは奇跡のようなものだったし(20-16)、昨年のスタッド・ド・フランスでの試合も、最終的には35-16で勝ったけど、前半が終わった時点(16-13)では、膝の皿がガクガク震えるほど追い詰められていた」という彼の言葉からその時の緊迫感が伝わってくる。
ガルチエHCも次戦に向けてこう結んだ。
「スコットランドには要注意ですよ……。わざわざ説明するまでもないでしょう?」