logo
【Just TALK】「私たちにとっては、どの試合も大一番」。TJ・ペレナラ[リコーブラックラムズ東京]
2024-25シーズンは全18試合にすべて先発出場。今季も開幕からの全11試合にすべて出場中(すべて先発)。ニュージーランド代表キャップ89。©︎JRLO
2026.03.18
CHECK IT OUT

【Just TALK】「私たちにとっては、どの試合も大一番」。TJ・ペレナラ[リコーブラックラムズ東京]

向 風見也

 TJ・ペレナラが滑らかな日本語で「ペン、ありますか」と問いかけたのは3月13日。主将を務めるリコーブラックラムズ東京の取り組みとして、拠点近くにある世田谷区立山野小学校で試合前日練習をおこなった日のことだ。

 すべてのメニューを消化。最後に翌日の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でのジャパンラグビーリーグワン1部、第11節を告知し、引き上げようとするなか、見学していた子どものなかにオールブラックスことニュージーランド代表のウェアを着た少年を見つけたのだ。

 自身も2024年までに計89キャップを得た自国代表のシャツを見たら、サインを書きたくなった。

 結局は、適した筆記具を見つける前に近くにいた教職員に止められてしまったような。ペレナラは笑う。

「おそらく、あの子はペンを持っていたと思います。ただ先生としては、『ひとりにサインをすると全員にしなくては…』といった点を心配されたのでしょう。こちらも理解できます」

 おもにニュージーランドのハリケーンズでキャリアを積んできた34歳のスクラムハーフは、ブラックラムズのタンバイ・マットソンヘッドコーチの肝入りである学校訪問イベントについてこう述べる。

「ラグビーの未来にとってよいことです。決してここにいる全員の子どもがプレーするわけではないと思いますが、このようにできるだけ繋がりを持てば、将来的に競技をしてくれる人は増えるかもしれません。こういう取り組みは、ニュージーランドでもよくしてきました。

 プロの世界は閉じられていて、トレーニングやゲームに集中するあまり他のことを忘れがちになります。ただ、我々にも彼らのような子ども時代はあった。外で遊ぶ皆の嬉しそうな顔を見ると、僕たちはラグビーを好きだからやっているんだと再確認できます」

1992年1月23日生まれ、34歳。ニュージーランド、ウェリントン郊外のポリルア生まれ。(撮影/向 風見也)


 身長183センチ、体重90キロ。日本のクラブでプレーするのは2020年度(2021年)のワンシーズンに続き、通算2回目だ。当時はNTTドコモレッドハリケーンズへ加わり、旧トップリーグでクラブ史上初の8強入りをもたらした。

 ブラックラムズ加入1年目の昨季も、鋭い仕掛け、キック、激しい防御で爪痕を残した。レギュラーシーズン全18試合に先発し、それぞれ70分以上ピッチに立った。フル出場は13試合にのぼり、自然な流れでリーグのベストフィフティーンに輝いた。

 今季は主将に就任し、変わらずハードワークする。第10節終了時点で、12チーム中5位。初のプレーオフ進出(6傑以内)へ好位置につく。

——チーム状況について。まず反則が少ないですね。

「ディフェンスコーチが厳しいおかげで、規律高く守れています。オフサイドのような自ら避けられるペナルティを排除できている。(練習でその手のエラーがあったら)全員で、バーピージャンプです。それで気を付けるようにはなってきた。また、セットピースが安定していて、ここで反則を取られていないのも大きい。

 もっとも、カードをもらう機会は多かった。そこは改善したいです。タックルは低く。空中でのコンタクトをしない。このあたりの絵を、(レフリーに)もっとクリアに示したいです」

——これから、重圧のかかるゲームが続きそうです。

「ここまでやってきたどの試合にも、プレッシャーはありました。一度もプレーオフに行っていない私たちにとっては、どの試合も大一番なのです。

 ビッグクラブを攻撃する意図はありませんが、毎年プレーオフに進んでいていまも上位にいるチームは、1、2試合を落としても盛り返すだけの力を持っている。一方、私たちは毎週、一貫性が求められる」

——そんなクラブの船頭役を務めるのは、大変そうです。

「(日本語で)大変だけど、楽しい」

——お話をさせていただいていると、こちらの質問の意味は通訳される前からわかっているのだろうなと感じます。

「はい。ただ、咄嗟に日本語で返すことができないんです! 時間をかけたら話せるのでしょうが、それでは(取材は)難しくなるからね!」

 海の向こうの話題にも応じた。

 今年1月、2024年からニュージーランド代表ヘッドコーチを務めていた「レイザー」ことスコット・ロバートソン氏が退任。ワールドカップオーストラリア大会を2027年に控え、志半ばでその職を離れた。新任は、現コベルコ神戸スティーラーズヘッドコーチのデイブ・レニー氏だ。

 全ニュージーランド国民が関心を抱く代表指揮官の人事を、ペレナラが語る。

「レイザーに起きたことは、誰も経験したくないことです。僕はよくしてもらった思いがあります。リスペクトしています」

——ペレナラさんにとってのレイザーさんは、いまのところ自身にとって最後のテストマッチ出場を果たした際のボスです。

「はい。一方で、デイブ・レニーさんも力を証明してきています。神戸での戦い、すごくいいですよね。クオリティコーチです。これからいい仕事をしてくれるのではないでしょうか」

 ちなみにニュージーランドでは、その時に自国でプレーする選手しか代表になれないルールがある。ペレナラは現在、ブラックラムズで3年契約の2季目を過ごす。少なくとも来季終了までは、代表復帰の権利を持てない。

試合後、チームメートと健闘を称え合い、感謝の気持ちをマオリスタイルで伝える。©︎JRLO


——それ以降について、何か予定はありますか。

「わかりません! ただ、日本に残りたいと思っています。ブラックラムズでの時間は楽しく、これから成し遂げられることにも期待しています。家族にとっても、ここで過ごすことがひとつのよい未来です。(好きな場所は)砧公園!」

——あらためて海外組がナショナルチームに入れない現実について伺います。現状の取り決めには才能の国外流出を防ぐ狙いがあります。一方、世界中に選手を散らすスプリングボックスこと南アフリカ代表はワールドカップ2連覇中。この事実を鑑みると、再考の余地はありそうです。

「どちらの言い分もわかります。ただ最終的には、ニュージーランド協会が、国のためにベストだと思った決断を下すはず。僕はニュージーランド人、マオリとしてそれをサポートします。

 すでに複数の(多数の)キャップを持った選手に関しては(国外に拠点があっても)代表チームに戻ってよいようにすれば、という意見もあるにはあります。ただ、僕が何かを言っても、『それはあなたが海外でプレーしているからそう言っているのだろう』と捉えられるでしょう」

——レニーさんがいま指導するスティーラーズには、ニュージーランド代表109キャップのロックで現在好調のブロディ・レタリック共同主将がいます。

「ブロディとそのこと(代表)については話していません。ただ、プレッシャーがかかっている、のかな? 神戸での働きは素晴らしいし、いまでも国際舞台でできる。世界有数のワールドクラスのプレーヤーなので、(レギュレーションについての意見を)言う権利はあるとも思います。ただ、彼がどんなキャリアを選ぶかは分かりません」

 様々な立場の人々を考慮しながら、紳士的かつ建設的に話したプレーメーカー。翌日には静岡ブルーレヴズとの第11節で、今季6度目のフル出場を成し遂げた(※6度のうち第1節は後半35分にシンビンで退出している)。

 それどころか、ノーサイド直前に決勝トライをマーク。静岡ブルーレヴズを37-33で下し、5位をキープした。

ALL ARTICLES
記事一覧はこちら