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飛び出した理由。初めての「6」。秋山大地[横浜キヤノンイーグルス]
1996年11月14日生まれ、29歳。192センチ、114キロ。ポジションはLO。つるぎ→帝京大→トヨタヴェルブリッツ→横浜キヤノンイーグルス。日本代表キャップ2。(撮影/松本かおり)
2026.03.10
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飛び出した理由。初めての「6」。秋山大地[横浜キヤノンイーグルス]

田村一博

 低空飛行が続いている。
 横浜キヤノンイーグルスが高く舞い上がれずもがいたままだ。
 今季開幕からの10試合を戦って1勝9敗、勝ち点7。ディビジョン1の12チーム中最下位に沈んでいる。

 開幕から6連敗。7試合目のトヨタヴェルブリッツ戦で初勝利を挙げて浮上するかと思われたが、その後3連敗。3月1日に大分でおこなわれたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦は10-28。2トライだけに抑えられた。
 10戦で挙げた214得点はリーグ最少。31トライも、下から2番目と苦しい戦いが続く。

 ただ、首位を走るスピアーズ戦では光も見えた。前半27分までに3トライを重ねられて0-21とされるも、後半は10点を先に取り、10-21と差を詰める時間帯もあった。
 相手の先制パンチを食らっても、崩されたままにはならなかった。

 フォワードの奮闘が見られたのは明るい材料のひとつだった。
 今季から指揮を執るレオン・マクドナルド ヘッドコーチは、この試合に向けてスピアーズのパワーに備えて手を打った。スクラムハーフに天野寿紀を起用したのも、そのひとつ。指揮官は、「強いコミュニケーターです。周囲が守備で正しい位置につけるようにしてくれます。そして、彼のタフな競争心に期待しています」。

初めてのフランカーでの先発に、「チームのトレーニング以外の時間を有効に活用し、できる限り(やるべきことを)クリアにして試合に臨みたい」と話していた。(撮影/松本かおり)


 そして、ロックの秋山大地をフランカーで起用することについて「初めての6番での先発です。体格に恵まれたアスリートで、非常にフィジカルが強い」とし、相手フォワードを前に出さず、ボールキャリアーとしての期待を込めた。
 ラインアウト時の、プレー選択の幅を広げる役目も与えられた。

 試合は、21点を先行される不本意な展開に持ち込まれ、そのリードを活かして逃げ切られる80分となった。
 しかし、いつもの布陣と大きく違うとはいえ、首位を走るチーム相手に、後半は互角以上に戦ったことには手応えもあったようだ。

 試合後の会見でCTBジェシー・クリエル主将は、後半の健闘について「フォワードパックがしっかり立ち上がり、スクラムやラインアウトから非常に強力な基盤を作ってくれたからだと思います。アタックの起点となる非常に良いセットプレーを提供してくれた。強力な基盤があれば、私たちがどれだけのことができるかを示していると思う」とした。

 さらに今後に目を向け、「後半に見せたようなプレーを80分間通して見せたい。試合開始のホイッスルからアタックを仕掛け、どんどんパンチを繰り出すようなパフォーマンスをする。それこそがチームとして目指すプレースタイルです」と話した。

 6番のジャージーを着て80分プレーした秋山は、「特別フランカーっぽいことはしていませんが、いつも自分がしているタックルなどを、6番として運動量多くできたらいいなと思っていた。その点では悪くなかったかな、と思います」と自身のパフォーマンスを振り返った。
 この試合でのタックル数は14(Rugby Passによる)。チーム内で3番目に多かった。

 トヨタヴェルブリッツから移籍して初めてのシーズンは、開幕戦に途中出場したのをはじめ、この日までの全10試合のうち7試合でピッチに立った。
 前戦までのプレーは、すべてロック。5番での先発も1試合ある。

 ヴェルブリッツでのラストシーズンとなった昨季は14試合に出場して9戦先発。すべてロックでの起用だった。
 帝京大時代も、2019年度にヴェルブリッツに加わってからも、フォワード第2列で存在感を示してきた。

大分での試合後の表情。試合中は周囲へ多くの声をかけた。(撮影/松本かおり)


 フランカーでの出場は初めてだった。
 ヴェルブリッツ初年度、当時のジェイク・ホワイト監督に「フランカーで」と言われ、メンバー入りした記憶はある。トップリーグカップのプール戦に出場予定だった。しかし、チームは(不祥事で)試合を辞退した。
 その後、試合の途中、選手入替の状況によってスクラム時、ロックのお尻を押したことはある。10分程度だった。

 スピアーズ戦に向けての練習で、初めてフランカーの位置に入ったのは試合の4日前だった。
 その日の練習後、「(ボールが動き出せば)やることは(ロックと)大きくは変わらないと思っていますが、家に帰ってしっかり勉強します」と笑わせた。
「とにかくやるしかない。背番号は6番ですが、自分の求められているものは、タックルとボールキャリーでしっかり前に出る、体をぶつけること。それをロックの時と変わらぬようにやろうと思います」

 試合出場を重ねていたヴェルブリッツからイーグルスに移ったのは、「ゼロからというか、新しい環境で競争することを自分の成長に繋げられたら」と考えた結果だ。
「(ヴェルブリッツでも)すごくいい環境でやらせてもらっていたのですが、その環境に慣れてしまった自分がいた。どこかで妥協しちゃうというか、試合にも出られていて……自分のプレーが伸びていないな、って感じていました」

 アスリートの敵は自分。そして安心、安住なのかもしれない。
「ラグビー選手として毎試合、いいプレーが1つ、2つと増えていく。それが、自分の成長を感じられるということだと思います」
 その感覚をなかなか得られなかった。

「試合が終わって(プレーを)振り返ったとき、充実感がなかったり、もっとできたはず、できるはずなのにと、達成感を得ることができないことが多かった。トヨタの環境にいても、もっと本気になってやれたらよかったのですが、甘くて、自分を変えることができなかった。それで環境を変え、無理やりにでも自分を奮い立たせないといけない、と決断しました」

 秋山大地の存在価値を、毎試合感じたかった。
 例えばボールキャリー。外国人選手が多いロックの中で、日本人でもやれると証明するフィジカル面の強さを出す。タックルなら、パワフルな相手をバチッと止め、押し返すタックルを毎試合数本決める。
「それらがチームの勝利に結びつく。それがいちばんなのですが、(ヴェルブリッツも)苦しいシーズンを過ごしていたので、試合に出ても勝利に貢献できていなかった」
 自問自答を繰り返した結果、「ゼロから」の覚悟を決めた。

スピアーズ戦ではボールキャリーやタックルで前に出たほか、ラインアウトでもボール確保で働いた。「コーラーのコーマック(ダリー)が上手に使ってくれました。生かされている立場として感謝したいですね」。(撮影/松本かおり)


 戦いの場をイーグルスに移しても、今季のチームは負けが込んでいる。競争に勝ち、プレー時間を得て、勝利に貢献する充実は、思うように感じられていない。
 環境を変えれば自分も変われる。そんなことはないと分かっていた。「自分を変えられるのは(環境ではなく)結局、自分だけ」とあらためて実感した。

「(イーグルスでは)なかなかスタートメンバーに入れず厳しさを感じていましたが、(その状況の中で)自分にフォーカスして、どんなプレーが求められているのか、何をやるべきか、より考えるようになりました。(途中出場からの)短い時間の中で力を出すにはどうしたらいいか考えています」
 そうやって成長し、出場機会を得たい。

 チャンスを手にするために必死だったから、フランカーでの先発を告げられた時は「おお、6番か」となった。「久々の先発なので嬉しさもありましたが、ちゃんとやらなきゃいけないと、責任を感じました。初めてだから、っていう言い訳はしちゃいけないぞ、と」。
 わずか数日間だったけれど、準備をした成果は出せた。

 スピアーズには勝つことはできなかったが、個人的には期待にも応えられて、「まず試合に出る。勝利に貢献できるなら、フランカーでもロックでも自分のできることをやる」と、次戦への思いは膨らんでいる。

 今季、チームが笑顔で終えられた唯一の試合には出場できなかった。
 レギュラーシーズンは残り8試合。安住の場を飛び出した心の動きは忘れない。求めている感覚と貢献を積み重ねていく。

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