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【Just TALK】「とにかく日本でプレーするのが好きなのです」。サム・グリーン[日本代表]
1994年8月16日生まれ、31歳。オーストラリア・ブリスベン出身。178センチ、85キロ。ブラザーズラグビークラブ(AUS/5歳)→ブリスベングラマースクール(AUS)→SRレッズ(2016)→豊田自動織機シャトルズ(2016-2018)→静岡ブルーレヴズ(2019〜)。日本代表キャップ4。(撮影/松本かおり)
2025.10.23
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【Just TALK】「とにかく日本でプレーするのが好きなのです」。サム・グリーン[日本代表]

向 風見也

 ラグビー日本代表は10月25日、東京・国立競技場でオーストラリア代表とぶつかる。

 いまのジャパンには今度の対戦国の出身者が6名並ぶ(南アフリカ生まれのディラン・ライリーを含む)。そのひとりがサム・グリーン。今回の一戦では23番のジャージーを着る。
 スタンドオフ、フルバックを務める身長178センチ、体重85キロの31歳は、10月15日、キャンプ地の宮崎で取材に応じた。

 特別な感情は挟まない。

「とても楽しみ。本当に大きなチャンスが待ち構えています。ここでパフォーマンスを発揮して、いい結果を得たい。きょう、ほかのインタビューでも言いましたけど、どんな試合であっても桜のロゴがついたジャージーを着ることは光栄なことです。今回、特別な感情があるというより、毎回、特別な感情を持っています」

リーグワン2024-25にはプレーオフも含めて14試合に出場した。(撮影/松本かおり)


——この流れにあって恐縮ですが、今回のツアーのメンバーで一緒にプレーしたことがある選手がいたら教えてください。

「タニエラ・トゥポウはいい友だちです。スーパーラグビーのレッズ(前所属先)で一緒でした。他にも知っている選手はいますが、最も近い関係なのはトゥポウです。彼は本当にいい選手ですし、テストマッチの経験も豊富です。対戦するのは初めて。グラウンドでキャッチアップできるのは楽しみですね」

——破壊的な強さは当時から。

「はい。クレイジーなほどに強い!」

 2016年に現豊田自動織機シャトルズ愛知へ加入。2019年にはヤマハ発動機ジュビロ(現静岡ブルーレヴズ)に移り、今年からナショナルチームの一員となった。長い道のりを歩んできた。

 来日当初は、海外での代表資格を得るための連続居住期間が3年だった。一時帰国期間を厳密にチェックされるなかでも、グリーンは2020年までにジャパンを狙えるようになりそうだった。

 ところが、ウイルス禍に阻まれた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴いしばらく地元に戻っていたら、それまでの日本滞在歴が白紙に戻ってしまったのだ。

——当時を振り返って。

「コメントをするのが難しいですが…。コロナというよくわからない奇妙なシチュエーションがあり、リセットされてしまい大変でした。ただ、私は日本でプレーがしたかった。ハードにやり、実際に条件を満たして、たくさんのテストマッチに出たい意欲が高まりました」

——あのようなことがあると、諦めて帰国してもおかしくはありませんが。

「とにかく日本でプレーするのが好きなのです。また自分の目標はテストラグビーをすることでした。

 ここにいる人、チームメイトが大好きです。ここでプレーすることが楽しい。皆、仲はいいですよ。(藤原)忍、(木田)晴斗、ディラン(・ライリー)、(李)承信。(松永)拓朗も戻ってきた。バックスユニットは本当に長い時間、一緒にいる。オフ・ザ・フィールドでもコネクションを取って関係性を築いている。一緒にプレーすることを楽しんでいる」

 エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ率いるいまの代表は、今年8~9月までのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)で準優勝した。

 決勝では、世界ランクで4つ上回る9位だったフィジー代表に27-33で惜敗。大会中3戦続けてフルバックで先発のグリーンは、ファイナルだけはハムストリングの怪我で出られなかった。

——もう身体は大丈夫ですか。

「ハムはよくなったよ。ありがとう」

——PNCの決勝戦に出られなかった事実はどう振り返りますか。

「最後の試合に出られなかったことは残念ですが、他の選手はハードにやっていました。勝つチャンスもありました。次はヨーロッパツアー(オーストラリア代表戦後に渡欧)へ改善点を集中して強化したいです」

——「課題」の克服のため、かなり強度の高い練習をしています。

「改善したいところへハードに取り組めています。(具体的には)状況判断のところです。毎回オプション(攻めの選択肢のひとつ)になることが大事。そのためには9番、10番(司令塔団)とのコミュニケーションを取らなくてはなりません」

ピッチ上でのコミュニケーション量が多く、周囲との連係は◎。(撮影/松本かおり)


——現体制でアタックを担当してきたダン・ボーデンアシスタントコーチが急遽、この活動に参加しないことになりました。「家庭の事情」と説明されています。

「残念ながらダンは離れました。ただここまでの約1年半で、彼はいいプラットフォーム、プログラムを残してくれました。いまは(麻田)一平さんやエディーさんが(攻撃を)コーチングしてくれています。どんどん前に進むだけです。アタックで勝てるチームになりたい。(指導陣には)状況判断のところで、どう前に進むかを強調してもらっています。よりよい選手になるには何をすべきかを把握し、とにかく能力を上げるだけです」

 指揮官のジョーンズは、ボーデンがいた頃から徐々に「アタックにバリエーションをつけました」。同一方向以外への展開を意識したり、キックを織り交ぜたり。

 ベースにあるのはこの考えだ。

「もう少し選手にリスクをとって欲しい」

 グリーンが言う、「状況判断のところで、どう前に進むかを強調してもらっています」という見立てと重なる。ジョーンズは訴える。

「ハイランクになるには保守的にはできない。覚悟を決めて、リスクをとらなきゃいけない。かつ、もっともインテンシティ(強度)の高いチームになれれば、上位国に勝つチャンスが生まれます」




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