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ワイルドナイツ初キャップ獲得なるか。ベンチ入りの谷山隼大、「チャレンジします」
184センチ、95キロの23歳。「体重は学生時代と変わっていませんが、体脂肪は落ちて、筋力の数値は上がっています」。(撮影/松本かおり)
2025.04.04
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ワイルドナイツ初キャップ獲得なるか。ベンチ入りの谷山隼大、「チャレンジします」

田村一博

 全身バネの好ランナーが、ワイルドナイツ初キャップ獲得目前だ。
 谷山隼大(はやた)が4月5日(土)に熊谷ラグビー場でおこなわれるトヨタヴェルブリッツ戦で22番のジャージーを着る。

 2024年春にチームに加わった。
 筑波大時代、下級生の頃はCTB、上級生になってNO8としてプレーしていた23歳は、いまバックスのアウトサイドでプレーしている(プレシーズンマッチの先発起用時は主に13番)。

 今回、22番のジャージーを着ることは月曜日に告げられた(3月31日)。「率直に嬉しかった」と表情を崩す。「やるべきことをやれるように準備をしよう」と、試合までの日々を過ごした。
「練習でコツコツ積み上げてきた結果」が首脳陣の目を自分に向かせた。

 学生時代はバックローでプレーしていた時間が長かったこともあり、ワイルドナイツのバックラインに立つ選手になるには時間がかかった。
「何かひとつ、というより、やるべきことがたくさんありました。一つひとつ苦手なことをなくしていきました」と話す。

チームとしていい準備ができた1週間。雨の日のトレーニングも、集中力高くおこなわれた。(撮影/松本かおり)


 レベルの高い選手たちが、ワイルドナイツ特有のシェイプと意識でラインをオーガナイズして動く。久しぶりにバックスでプレーする新人がその中で、機能的に動く。その大変さは想像に難くない。

 周囲の先輩たちのスキル、判断に接して、学び、実践を繰り返す以外に自分を高める方法はなかった。ロビー・ディーンズ監督のアドバイスにも耳を傾けた。
「苦手」と自覚していたパスは、トレーニングで数をこなし、練習を含めて、状況に応じて放る意識を磨いた。
 ボールを持って走る強みを維持しつつ、ここと言う時にクオリティーの高いパスを出すことを徹底してきたつもりだ。

 いい緊張を感じている。「ミスもあるでしょうが、チャレンジし、チームの勝利に貢献したい」という。
 ディラン・ライリーのコンディションが整っていないこともあり、いつでもいける準備はしていたけれど、予定されているトレーニングマッチではなく、公式戦への起用に「準備はしていたけど驚きました」と初々しい。

 ワイルドナイツではシーズンの各節、『HEART BEAT AWARD』として試合メンバー外の選手やスタッフを表彰している。
 Aチームを『HEAD』、Bチームを『HEART』とし、リーグワンのピッチに立てなくても、チームへの貢献度が高かったり、良いパフォーマンスを出す、あるいは、成長を見せた際に与えられるものだ。谷山は第10節に受賞した。

 その週におこなわれたU23日本代表との試合で、「いいところを出せた」と振り返る。
「まだ足りない点ばかりですが、バックスとしての基本的なことを徹底し、一人で状況を打開しようとするのではなく、周囲とつながりながら相手を見て判断していけるようになってきています」

 今回の対戦相手、ヴェルブリッツは10位と順位は低いけれど、「世界的な選手も含め、力のある選手も多いし、歴史あるチーム」と気を引き締める。
 リスペクトしつつ暴れる準備を進める。

 福岡県出身。小1で玄海ジュニアラグビークラブに入った。下半身の強さや粘りは、同時期に始めた相撲のお陰か。中学では陸上部にも入り、走り幅跳びなどで体のバネを鍛えた。
 福岡高校に進学し、フォワードでもバックスでも才能を伸ばし、発揮。高校日本代表にも選ばれ、筑波大では4年時に主将も務めている。

 父・信隆さん、姉・美典さん(女子ラグビー/YOKOHAMA TKM所属)と、三菜子さん(日体大2年)、雅さん(佐賀工3年)の妹ふたりも、楕円球界の住人。ヴェルブリッツ戦には、父と姉が応援に駆けつけてくれる。

 次女・三菜子さんはサクラセブンズの一員として国際舞台で活躍中。4月3日、20歳の誕生日を遠征中のシンガポールで迎えた妹にお祝いメッセージを送り、ヴェルブリッツ戦のメンバーに入ったことを伝えると、「頑張れ」とメッセージが届いたそうだ。

2024年の香港セブンズ、メルローズカップに日本選抜としてプレー。トライも奪った。(撮影/松本かおり)


 キックもうまく、よく得点にも絡む妹のことを「スキルフルで僕とはだいぶタイプが違う」と言って表情を崩す。サクラセブンズは熊谷で活動することも多いから、顔を合わせることも少なくない。
「女子セブンズの中継もよく見ています」

 自分自身も、2024年のパリ五輪への出場はならなかったが、昨春はセブンズ代表候補として活動した。
 同年4月には香港セブンズ中におこなわれるメルローズカップに男子セブンズ日本選抜の一員としてプレーし、香港スタジアムでトライも挙げている(香港と中国相手に3試合で3トライ!)。

「オリンピックに出るのは夢」と、セブンズ代表への意欲を胸に秘めているけれど、いまはワイルドナイツで「結果を残して優勝したい」とチーム愛を口にする。
 その強い思いを、熊谷の多くのファンの前で最初に刻むこの週末。いつも観戦者をワクワクさせるエンターテイナーが躍動すれば、好天が予想されるスタジアムは盛り上がる。


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