![100キャッパーは、クソガキ、元気で、戦友。中村駿太[横浜キヤノンイーグルス]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/KM3_4159_2.jpg)
Keyword
クソガキだったのに、もう100になったのかあ。
どんなときも元気な人。
チームのことを第一に考える大事な戦友。
指揮官やチームメートが、それぞれの感覚で人となりを話した。
横浜キヤノンイーグルスのフッカー、中村駿太が、3月2日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた東京サントリーサンゴリアス戦で、トップリーグ+リーグワンの通算出場数を100とした。
試合後、「100は数字でしかない」と言ったものの、にこやかな表情だった。
明大を卒業して(4年時は主将)国内最高峰リーグでプレーすることになったときから、目標としていた数字だったという。
2016年の春にサントリーに入社。サンゴリアスで7シーズンプレーした後、2023-24シーズンからイーグルスへ。9シーズン目の途中で節目の数字に到達した。
古巣が記念すべき試合の相手となったのも何かの縁だ。試合スケジュールを見ていて、この日にメモリアルデーが巡ってきそうだったから楽しみにしていたと笑う。
両チームでのプレー写真を入れてデザインされた記念Tシャツが用意されていた。そのことに目を細める。
試合後の記念写真の撮影時には、イーグルスとサンゴリアスの選手たちが本人と家族を囲み、誰もが笑顔だった。撮影が終われば、ジャージーの色に関係なく、いろんな選手が歩み寄ってきて、話し、握手を求めた。
堅苦しいセレモニーではない、感情の交歓があった。

チームマンだ。自分のことよりチームのことを話した。3連敗で迎えた試合に勝ったことに安堵する。
プレーオフへ進むためにも、競り合っている相手に負けるわけにはいかなかった。そんな試合に33-22で勝利して「絶対に勝たないといけなかった」と振り返った。
バイウイークで翌週は試合がない。次戦までの2週間の気持ちは、この日の勝敗によって大きく違っただろう。そういう観点からも、ターニングポイントとなる試合だった。
中村は、指導陣から出たこの日のテーマである「ラブ・フォー・ザ・イーグルス」への思いが、仲間たちのプレーから溢れていたと思った。
「ディフェンスから特に感じました。80分、途切れなかった」
ハーフタイム直前のスクラムでターンオーバー。SHファフ・デクラークの好判断で前へ出て、キックで敵陣へ入った。そのプレーをきっかけにPGで加点し、13-7としたあたりから自分たちのペースになった体感がある。
ライザーズと呼ばれるメンバー外の選手たちは、準備期間中にいつも強い圧力をかけてくれる。その成果が、競り合いとなったこの試合でも出た。
記念となる試合には、いつも通り臨んだ。イーグルスの練習は朝早くからはじまることが多いため、この日も午前5時30分には起床した。
今季は開幕からの全10試合に出場。そのうち6試合は先発だ。
2022-23シーズン後にイーグルスに移籍したのは、7シーズン在籍したサンゴリアスの居心地が良すぎて、自分の進化のスピードを鈍らせていると感じたからだ。前チームでのラストシーズンは、プレーオフも含めた全18試合に出場していた。
イーグルスでの1年目も、プレーオフを含む全18戦に出場した。2月28日に31歳になったものの、そんな足跡を見る限り、いまだ進化中と見るのが正しそうだ。
U20代表での出会い以来関係の続く沢木敬介監督は、「幼いクソガキだった駿太が100キャップ。時が過ぎるのが早いですね」と感慨深く話し、「(直近の各選手の)メモリアルイベントでは負け続けていましたが、きょう、やっと勝った」と遠回しに記念日を祝福した。
そして独特のエールを贈った。
「うちに移籍してきましたが、彼が望んでいるポジションにはまだ到達できていないと思います。もっとハングリーになり、インターナショナルな選手を目指してほしい。テストマッチプレーヤーにならないといけない」
「これからも(自分に)怒られ続けると思いますよ」と、鍛え続けること、期待し続けることを伝えた。
日本代表に選出されたことはある。2022年にEMERGING BLOSSOMSのメンバーに選ばれ、TONGA SAMURAI XV と戦ったこともあるし、2023年のワールドカップ期間中はバーバリアンズの一員として欧州で活動を続け、日本代表のバックアップメンバー的存在だったのにキャップはない。最後の壁を破れないでいる。
沢木監督の言葉を受けて、本人も「ほんとそうですね」と答える。
「自分の中に、まだ伸びしろがあると思って、可能性がある限りチャレンジしていきたいと思っています」
目指すところへ届くために、日々、できる限りの努力を続けているとした。

明大時代の後輩でもあり、サンゴリアス、イーグルスでもともに戦う梶村祐介主将は、愛すべき先輩のことを「陽気な人」と言って続ける。「負けが込んでいても、どんなときでも、週明けのクラブハウスではいちばん元気です。チームにエナジーを与えてくれる。周りをいい方向に持っていってくれる人です」
キャプテンのそんな人物評には、「シーズンは長い。30歳を超え、いい歳になったので、結果だけで一喜一憂せず、雰囲気作りは意識しています」と言う。
サンゴリアス時代は、飯野晃司らがいい空気を作ってくれていたから任せていた。しかしイーグルスに来て、自分の役目の一部がそこにあると感じた。
「ベテランが率先して体を張り、態度で示していくのは大事なこと。強いチームは、そういうことを自然とできている。自分の中でやっていきたいな、と思って」
そんな一面を感じているからだろうか、ジェシー・クリエルは同い年のフッカーのことを「チームを第一に考える人。大事なメンバーで、大事な戦友。彼のためにも今日は思い切りプレーしようと思った」と話す。
世界的センターはこの日、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれる活躍だった。
サンゴリアスの1年目、2年目に優勝して以来、頂点からは遠ざかっている。次にあの感激を味わうのはいつだろう。
国内最高峰リーグで100キャップを得た人が、代表キャップ1を刻む日も来てほしい。
「敬介さんを胴上げしたい」と話す。代表キャップもほしい。そして、この日の夜はサンゴリアスの『桐蔭会』があるから参加するのだと笑顔だった。
やりたいこと、楽しみがたくさんある人生は、中村駿太の生き方そのものだ。