![【HSBC SVNS◎史上最高4位の秘密/上】聞いてください、進化の理由。[サクラセブンズ]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/02/0D4A8805_2.jpg)
帰国のたびに新しい数字バルーンが手にある。1月28日に『5』だったものが、今回は『4』になった。
今後も3、2、1となったら最高だ。
『HSBC SVNS 2025』のバンクーバー大会(カナダ/2月21日〜23日)で、同シリーズ最高位の4位となったセブンズ女子日本代表、サクラセブンズが2月25日に帰ってきた。
約9時間のフライトを経ても、好成績を残したとあって、選手、スタッフには笑顔が多かった。
2024年11月30日、12月1日のドバイ大会で始まった今季の『HSBC SVNS』シリーズ。サクラセブンズは、ドバイでの7位から始まり、ケープタウン大会(南アフリカ)で6位、パース大会で5位、そしてバンクーバー大会が4位と、大会ごとに順位を1つずつ上げる好調さを見せている。
チームの指揮を執る兼松由香ヘッドコーチは「一人ひとりのブレイクスルーする気持ちが、ベスト4の壁を破る結果を呼んだ」と話した。
今大会に臨むチームが掲げたスローガンが『ブレイクスルー』だった。
1月におこなわれたパース大会で5位になった。さらに上に行くにはセミファイナルに進出するのが最低条件。そのためには、これまで見たことのない領域に足を踏み入れないといけない。壁を突き破るため、このスローガンにした。
「前回と同じではいけない、リスクやうまくいかないこともあるかもしれないけど、それぞれが変化を恐れず、自分で決めたブレイクスルーをしようと決めました」
HCは、簡単ではないことに全員で立ち向かってきたと話した。

現在のサクラセブンズが目指しているのは「人数で勝つ」スタイルだ。一人ひとりのスピード、パワーでは(トップチームには)勝てない。だから運動量を仕事(量)に転換し、常に人がたくさんいる展開を作る。
「ポジション別に役割が決まっているのではなく、それぞれの選手たちの強みを活かせる配置を考え、苦手なことを助け合えるチームを作っていけるようにやってきました」
同じことをやっていては階段を昇れないから、パース大会のレビューから改善した点もある。
パース大会の1日目、2日目を比べ、戦いの強度が上がった時に通用しなくなるのは接点でのボールの扱いだった。持ち込んだボールの味方へのプレゼンテーション。そして、相手ボールを取れそうで取り切れなかった。
男子セブンズ代表のフィル・グリーニングHCの指導を受け、その改善に着手した。小さくてもボールを出す、取り切る体の使い方を知る。教わるだけでなく、考えることで、そのスキルはより高まった。
「答は一つではなく、一人ひとりが、(自分は)こういうやり方なら、というのを見つけたと思います」
同HCは選手たちのパフォーマンスを見て、これまで相手のボールを奪えなかった選手がチャレンジし、実際にボールを手にする姿、成果を残したことに感動したと話した。
「(相手ボールを奪えたのは)ワールドシリーズでは初めてでした」と言うのは高橋夏未だ。今回でシリーズ3大会目の出場となった同選手は、3位決定戦(対オーストラリア)の前半、タックルを受けて倒れた相手に瞬時に寄り、ボールに手をかけ、奪った。
今大会では後半に出場することが多かった高橋は、「限られた時間の中でチームに貢献するため、誰よりも走ろうと思って」プレーした。日本らしさはハードワークとタフさと考えている。
相手からボールを奪い取るプレーは、「練習から繰り返し、成功することが増えていました。自信を持って臨んだ大会で実際に結果を出せて嬉しかった。もっと練習して無意識に体が動くようにしないと」とさらなる進化を誓う。
相手ボールのスティールなど、大橋聖香も守りでチームに貢献することが多かった。同選手も3位決定戦で反則を誘う。戻りながら素早く体を入れ、相手のスイープにも動じなかった。
大橋はもともと体の強さを持つ選手だ。スクワットの数値もチームトップクラス。上半身も強い。
そのような素養の上にグリーニングHCから知見も得た。さらに「教えてもらったことを自分なりに解釈して、私なりのスティールを見つけた」と言うから頼もしい。
「誰がどのタイミングで出場しても、一人ひとりが自分の役割を明確に持って、最後までプレーし続けた」と大橋が言うように、個々に明確な役割が与えられていることが、チーム力向上の下地にあるようだ。
大橋自身はボールの再獲得とディフェンスからチームを引っ張ることを意識してピッチに立った。
パース大会の5位決定戦、アメリカ戦で決勝トライを挙げたのに続き、今大会の準々決勝でも同じ相手から試合を決めるトライを奪った谷山三菜子は、自分に託されたものを試合を決める得点と感じている。
出場前、「短い時間の中でトライをする、かっこいい自分の姿をイメージしてピッチに入る」という。

大会ごとにプレータイムを伸ばしている谷山だが、前述のような華々しいプレーや歓喜の輪の中にいることがある一方で、「凹む」こともある。
今大会のラストゲームとなった3位決定戦。12-19で迎えた最終盤を迎えた。リスタートの相手ボールキックオフで、谷山はノックフォワード。攻撃機会を失い、相手に追加点を許した。そのシーンを「落ち込みました」と回想する。
「一つひとつ改善していくしかない。経験あるのみ」と悔しさを噛み締めた谷山は、まだ大学1年生。「3年後(のロサンゼルス五輪)へ向けて準備期間はたくさんある。伸びしろがあると思って理解して頑張ります」と気丈に振る舞った。
すべての局面を糧に成長を続ける。
2025シリーズでは毎大会ごとにキャプテンを変えている兼松HCは、その理由を「全員が違うカラーを持っています。選手たちに過去にキャプテンや学級委員長をやったことがあるか問うと、ほとんど全員が手を挙げました。誰もが潜在的にリーダーシップを発揮する力を持っている。ひとりのキャプテンに任せるとその選手を中心にチームができていきますが、いろんな選手にやってもらうことにより、誰もがリーダーになれると気づくし、キャプテンを経験したからこそ他を助ける力もつく」と話した。
その積み重ねが、越えたことのない壁を突き抜けるエナジーになると考えた。
今回梶木にそのポジションを与えたのは、「彼女がいちばんベスト4への気持ちが強かったから」とした。
梶木主将は学級委員長をしたことはなく、「バイスキャプテンがあるくらい」の経験だったが、「4位になれたタイミングでキャプテンをやれたのは光栄だし、みんなの気持ちを感じられた。やってよかった」と話した。
「プール戦から前半にトライを取られるシーンが多かったのですが、誰も諦めなかった。一人ひとりが絶対に勝つ意識が強かった。前半のメンバーがしっかり相手を疲れさせ、後半に勝つ。その強みを出せました。みんな、捕まっても足をかき続けていました」と大会を振り返った。
史上最高順位については、「(4位以上が決まった)2日目までは初めてのベスト4で嬉しさがありましたが、3日目にフィジーに負けて悔しさの方が大きかった。受けていたら得られるものはない。最後までチャレンジする。その気持ちを忘れないようにして、次こそは(準決勝でも勝つ)」とした。
「大会を重ねるごとに、低いタックル(が通用すること)や、小さくても戦える自信を重ねてきました。その結果を出せていると思います」と言う梶木主将は、「キャプテンとしてすべてに気が回るタイプではありませんが、アップから声をかけ、練習も、自分から気持ちを出せていけた」と自分のキャプテンシーについても語った。
【HSBC SVNS 2025/バンクーバー大会 日本代表試合結果】
◆1日目
日本代表 19-14 フィジー代表(プール戦)
日本代表 19-14 英国代表(プール戦)
◆2日目
日本代表 12-31 フランス代表(プール戦)
日本代表 22-17 アメリカ代表(順位決定戦/準々決勝)
◆3日目
日本代表 7-28 フィジー代表(順位決定戦/準決勝)
日本代表 12-26 オーストラリア代表(順位決定戦/3位決定戦)
【HSBC SVNS 2025/バンクーバー大会 サクラセブンズ】
1 辻﨑由希乃 ながとブルーエンジェルス 21
2 三枝千晃 北海道バーバリアンズディアナ 27
3 堤ほの花 日体大ラグビー部女子(OG) 31
4 梶木真凜◎ 自衛隊体育学校 27
11 内海春菜子 YOKOHAMA TKM 15
12 永田花菜 ナナイロプリズム福岡 27
13 吉野舞祐 ナナイロプリズム福岡 20
14 岡元涼葉 東京山九フェニックス 6
17 高橋夏未 日体大ラグビー部女子(3年) 7
18 大橋聖香 ナナイロプリズム福岡 10
19 谷山三菜子 日体大ラグビー部女子(1年) 6
20 庵奥里愛 三重PEARLS 1
21 松田向日葵 追手門学院大女子VENUS(2年) -
※左から背番号、氏名、所属チーム、大会前までのキャップ数。◎は主将。
※2025シリーズを通して同一選手が同一背番号を着用。
※2025シリーズは各大会で13名まで登録可能。試合毎に12名(スタート7名+リザーブ 5名)を登録。