![蘇る青い弾丸。[西橋誠人/横河武蔵野アトラスターズ]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/02/1.jpg)
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青い弾丸が再びグラウンドを駆けた。
2024年4月4日。その日、横河武蔵野アトラスターズから西橋誠人(にしばし・まこと)の現役復帰が正式にアナウンスされた。
2021年シーズン以来の練習参加だった。32歳になっていた。
3歳の頃、田園ラグビースクールでラグビーを始め、桐蔭学園高→明治大を経て横河武蔵野に7シーズンの間在籍し、WTB/FBとして活躍した。
2015年にアトラスターズ入団。174センチ、85キロの身体からは想像できない豪快なランでグラウンドを沸かせた。
通算出場試合数は39試合。

高校ラグビー史上最高の決勝戦(東福岡と31-31で引き分け)と呼び声の高い第90回全国高校ラグビーフットボール大会、両校優勝時はCTBとして相手ディフェンスを切り裂いた。
高校時代の同級生には松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)、小倉順平(横浜キヤノンイーグルス)がいる。
2021年シーズンを終え、「出し切った、やり切ったという心境です」と引退した。
2022年、ラグビーから離れた1年目は時間が余り、様々なことに触れる時間も増えた。
仕事一本、一般的な社会人生活を過ごしていた。
2023年、高校のOBとの食事会の際に草ラグビーに誘われた。LINEの連絡で土のグラウンドに集合し、試合当日にメンバーを決める環境だった。
「久しぶりに楕円球を追いかけ、ラグビーという共通言語でいろいろな人とつながれるのは楽しい」
原点に戻ったような素敵な時間だった。
そんな生活を送る中、2年ぶりに西橋が復帰を決意したきっかけはPR古澤陸からの誘いだった。
本気でやれるか不安もあり、入団から同期として戦っていたCTB高橋大輔に復帰の相談をする。高橋自身が引退するか否か迷っているところだった。
プレー中でも練習中でも「この人はどんなプレー、どんな話をするのだろう」と人を惹きつける異彩さを放つ。それが西橋の魅力だ。
高橋は、それを間近で見てきたひとり。「誠人が復帰するならもう1年やるよ」と答えた。

西橋は、復帰を決めた。「やれるのにやらないのはもったいない」と思ったからだ。
決意したら、高橋のように昔から切磋琢磨してきたチームメイトや、これから出会う新しい仲間にワクワクした。
「みんなが迎え入れてくれて、いい意味でみんな変わってなくてよかった」と、再びアトラスターズのグラウンドに戻った2024年4月4日のことを思い出す。
しかし、2年ぶりの復帰は度重なるケガもあり、順調なものではなかった。現役復帰した4月から2回の肉離れを重ね、再復帰は6月になった。
2024年シーズンの春、横河武蔵野はトップイーストリーグ春季交流トーナメントの初戦を突破し、準決勝に駒を進めた。6月16日準決勝、秋田ノーザンブレッツ戦に西橋は2年半ぶりに先発した。ポジションはFBだった。
2トライを取られて0-14と先行される展開の中、秋田を追う前半20分、西橋自らラインブレイク。ゴールラインを越える。7-14とし、反撃を始めた。
しかしシーソーゲームは続き相手の勝利に終わる。22-26で4点及ばなかった。
「自信しかなかった。2トライ取られたあとだったけど、トライを取れてよかった」
得意なプレーはラインブレイクと語る。相手のディフェンス間を切り裂くように突破する姿は青い弾丸そのものだ。

2024年トップイーストAリーグ初戦、9月8日に行われた秋田ノーザンブレッツとの試合では前半2本、後半4本のラインブレイクに加え、後半2本の好ランから31-19と勝利に貢献した。プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
リーグ7戦目のAZ-COM丸和 MOMOTARO’S戦の後半15分、21-19と拮抗する試合展開の中で丸和チャンスの場面。横河武蔵野が攻め込まれるかと思われたグラウンド中盤、瞬時に相手パスをインターセプトしゴール正面に飛び込んだ。
コンバージョンキックも決まり28-19と点差を広げたが、丸和の猛攻撃を受け最終スコアは28-45と敗れた。
相手を振り切り、ディフェンスを突破する強力なランは、高校3年時の全国大会決勝戦、再三のラインブレイクを含む5度のビックゲインを彷彿とさせた。
「目標を達成するためのプロセスを自分の頭の中で考え、それを実行する。試合に勝ちたいのだったら、試合に出るのは最低限。出たいじゃない、出る。出られないのは(自分に必要なものが)足りてないから。再考しなければいけない」
言葉には知性が入り混じる。軽快かつクレバーな語り口から勝利への飢えがあふれ出る。
NTTコミュニケーションズ/浦安D-RocksでSHとして活躍した兄・勇人(はやと)さんを、「スーパー努力家で、ずっと追いかけていた。SHだけど耳がつぶれているし」と尊敬する。
継続する姿勢や人としての振る舞いは兄から学んだ。
新シーズンも、再びグラウンドに立つ。青いジャージで縦横無尽に駆け抜ける。勝利のために身を粉にしてラインブレイクを継続する。
